最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2010年9月10日

ゆるふわSF特集

『FRaU』2010年9月号の本とマンガ特集に「女子もハマれるネオSFマンガ」という門倉紫麻さんの選んだマンガのページがありました。この最初のものが「山へ行く」(萩尾望都)だったことや、ちらちらと知っているものもあったので、全部読んでみようかと、思って読んでみました。

山へ行く 萩尾望都

「山へ行く」萩尾望都 小学館

ハードなSFのイメージの強い萩尾先生ですが、こちらは短編集ですし、日常の中のなんとなく違うなという感じの作品群なので、とっつきやすいです。家族の話が多かったりもします。名作「柳の木」収録。鳥肌が立ちます。『flowers』で連載中。

小煌女 海野つなみ

「小煌女」1~2巻 海野つなみ 講談社

当初はクラシックな感じのSF学園ものだったのが、突然の大逆転が起こってあれよあれよという間に話が拡大していきます。絵は好きではないのですが、意外におもしろいです。『KISS』で連載中。

世界の合言葉は水 安堂維子里

「世界の合言葉は水」安堂維子里 徳間書店

『コミックリュウ』に発表された短篇を集めたもので、私は初見でした。水がテーマなので海や雨が多く出てきます。ゆったり、ほんわりとした優しさに包まれた不思議なSFです。どれも良いのですが、特に「ぎゅう」が気に入りました。こういう感覚って、言葉で説明できないのですが「なんとなく本当はこうだったらおもしろい」と思えるツボなのです。これはオススメです。

テルマエ・ロマエ ヤマザキマリ

「テルマエ・ロマエ」1巻~ ヤマザキマリ エンターブレイン
昨年大ブームを起こした作品です。「マンガ大賞2010大賞」「手塚治虫文化賞短篇賞」を受賞。以前イタリア家族漫画を読んだことがありましたが、最初はあれを書いた人と同一人物とは思いませんでした。古代ローマに現代日本のお風呂を導入していく話なのですが、これを「上から目線」という人の考え方はよくわかりません。ルシウスが「平たい顔族の風呂はここがすごい!」と思うところでこちらも再発見があり、そして様々な機器類を勘違いしながらもその効果をきちんと読み取り、自分なりに作り直していくところがおもしろい。比較文化論とかいうおおげさなものではありませんが、ルシウスの柔らかい頭に学ぶところは多いです。『コミックビーム』連載中で、まもなく2巻が発売されます。

虫と歌 市川春子

「虫と歌」市川春子 講談社

すごい人が出てきたなと、最初は言葉が出ませんでした。初期の作品こそ高野文子を思いっきり意識した作風でしたが、徐々に離れて行って、今は完全に独自のスタイルを作っています。ネットの中でがっちり論評が出ているので、そちらを読んだ方だ良いです(ひとりで勝手にマンガ夜話webDICE マンガ漂流者(ドリフター))。『ユリイカ』2010年2月号に小特集が載っています。

『アフタヌーン』に1年に1作ずつ描いていったもので、もうデビューして5年です。この単行本の後はスピードアップしたのか、今年に入って2本すでに発表されています。シンプルで細い線、白と黒とグレーのシンプルな組み合わせ。本当にマンガってこれだけシンプルなものなのだなということが実感できる絵です。お話はとても不思議なSFなのに、徹底した家族愛。特に兄弟が繰り返し出てきます。最新作「25時のバカンス」では姉と弟になっていますが、兄と弟、兄と妹だったり、いずれも微妙な人間関係で、だからこそエロティック。それにしても「虫と歌」っていうのは、なかなか手に取りにくいタイトルだなと思ったりします。私、虫がダメなので。

ともだち100人できるかな

「友達100人できるかな」1~3巻 とよ田みのる 講談社
ごくたまに連載を読んでました。肩に力の入っていないものを読みたいときに、ちょうどいい感じのSF作品。子供時代に戻っているせいか、こちらものびのびとした気持ちになれるのが不思議です。『アフタヌーン』で連載中。

第七女子会彷徨

「第七女子会彷徨」1~2巻 つばな 徳間書店

初見。そもそもイマドキの普通の女子高生がこんなに天然でかわいいのかどうか、それすらわからない私に、これが日常生活の中での異世界なのかどうかもわかりません。しかし、どんな不思議なことが起きても、女子高生はきっとたくましく対応していくのだろうなと思えます。二人とも恋に無縁なため余計な雑音が入ってこなくて、純粋に不思議な世界を楽しめるところもポイントでした。尾崎翠の「第七官界彷徨」からタイトルはとられているようです。『コミックリュウ』で連載中。

初見の作品もありましたが、興味深い作品ばかりでした。やはり『コミックリュウ』や『コミックビーム』『アフタヌーン』といった普段少女マンガとは縁のないところでがんばっている人たちです。その中で王道少女マンガとして『flowers』『KISS』も健闘しているというところでしょうか。門倉さん、おもしろい作品を教えてくださって、ありがとうございました。

2010年9月 9日

島暮らしの記録/トーベ・ヤンソン

島暮らしの記録せっかくトーベ・ヤンソンの「フェアプレイ」を読んだのだから、クルーヴハルにまつわるエッセイを読んでみようと思った。

30年間もの島暮らしをするからには、それだけの土壌があるのだと知った。さすが彫刻家の父と画家の母の間に産まれた子だけあって、子供の頃から夏は「島」というのが定番だったようだ。

プロの助けは借りたが、自分たちで作った小屋だったということを知った。もう結構売れっ子だったと思うのだが、ヨーロッパ人というのは意外となんでも自分で作る。どんな貧乏でもサウナを自宅に作るのがフィンランド人だそうだ。サウナは日本人でいうところの風呂なので、それはなんとなく理解できる。

伝記には1965年~1995年頃までトーベはここにいたとある。1964年秋から作り始め、雪が降る頃に一度停止、翌年春からまた再開して、夏には住んでいた。ムーミンが書かれたのは1945年~1970年なので、「ここでムーミンが産み出されました」というのは嘘ではないが、かなり違う気はする。

さて、長い待機が始まった。わたしは孤立とは似ても似つかぬ、新手の隠遁にはまりこむ。
だれともかかわらず、部外者を決めこみ、なんにしろ良心の呵責はいっさい感じない。

トーベとトゥーリッキとトーベの母親のハムの3人の女性芸術家がそれぞれ自分の芸術に向かい合う。諍いがないわけではないが、それぞれの領分をそれなりに守って暮らしていたのだろうと想像する。だって、あんな狭い小屋の中で...と思ったら、ちゃんと外に仕事場を作っている人もいたようだ。

石と水平線ばかりで暇をもて余さないか、自然の緑が恋しくならないかと、
島を訪れる客たちに訊かれて、ハムは驚きを禁じえない。

海の近くに暮らしていると思うのだが、海は季節によって、時間によって、天候によって、すごく顔を変える。飽きることはない。

静寂がないと、孤立していないと、芸術は生み出せないのだろうなと思う。でも気の置けない友人はそばにいて欲しい。

ところで、例のドキュメンタリーでも言ってたが、「クルーブハル島」という言い方は変だ。「クルーブハル」もしくは「クルーブ島」だろう、とか細かいことを思ったりした。

■著者:トーベ・ヤンソン著,冨原眞弓訳
■書誌事項:筑摩書房 1999.7.25 ISBN4-480-83705-1
■原題:Anteckningar från en ö , Tove Jansson

2010年9月 8日

トヨザキ社長の提案についてうなずきまくりです

白水社のサイトに載っている豊﨑由美「全国3000人の海外文学ファンを代表して トヨザキ社長が提案!"ガイブン仲間"を増やすには?」を読んだ。あまりに的を得ていたので、ブログに書いてしまう。

こんなこと書くとまたいらない敵を作ってしまいそうですけど、そこいらの一流半程度の国内小説より、世界文学のほうが比べものにならないくらい面白いのに。日本の小説に三百円か五百円程度上乗せするだけで、比べものにならないくらいのレベルの面白さが手に入るのに。そう思ってましたし、今もその考えは変わらないんであります。

私も別に日本の作家が全部くだらないとか言う気はない。読んでないし、わからない。角田光代とか、長島有とか、話題になったのをたまーに読んで、いいね!とか思う。けど、この「本をコストパフォーマンスで価値を決める」という考え方がすごく納得。というか、実は私は今でもそうだ。高校生の頃、わずかなお小遣いで本を買っていた。図書館で借りてもいいんだけど、やっぱり手元においておきたい派だったから、すごくよく考えてから本を選んでいた。で、ガイブンは外れが少ないし、中身が濃いから読むのが大変で、えらいおもしろくて、コストパフォーマンスがよかった。そのまま大人になっても、それを引きずっていた。

「海外の小説は苦手」という友人知人の皆さんにその理由をお訊きしてまいりました。で、圧倒的に多いのが「名前が覚えられない」。

筒井康隆の「短篇小説講義」だったか「本の森の狩人」だったかで、外国文学で登場人物が大勢いたら書き出しながら読め!と書いてあったので、こういうことしていいんだ!と思って、それ以来、わからなくなったらやるようにしている。憶えられない方が悪い気がしていたのが吹っ切れた。筒井康隆でさえやるんだから、私がやってもいいよね、と。

で、次に多かった答が「知らないところが舞台になってるから、雰囲気がよくわからないし共感もできない」。かなり気持ちが滅入ってまいりました。わかってることを「うん、わたし、わかる」って再確認する読書の、どこが愉しいんだろう。(中略)世界は広くて、意見も感覚も常識の持ちようも生活様式もまったく違う人たちが、でも、自分と同じようにかけがえのない日常を送ってるわけで、海外文学を読むとそれが心底実感できるんですよ。

私は知らないことを知りたいから本を読むんです。マイアミに住むキューバ系アメリカ人はこんなこと考えるんだ~!とか思うと楽しい。知らない場所だからこそ、いろいろ想像して楽しい。

日本の文学だと、話の流れとか、かなりの割合でもう予想できちゃうんです。場所も人もわかりやすいから。場所も人も全然知らないからこそ、予想も出来ない展開が現れて、おもしろいのになぁ。違う世界の予想もつかない物語にのめり込むからこそ、読書は楽しいのだけど。

目次のあとに、登場人物一覧をつける!

これね、「野生の探偵たち」のとき、別途プリントアウトしてくださいってPDFがウェブにおいてあって、なぜ本体に印刷されていないのか、あるいは差し込みされていないのか、すごく不思議でした。翻訳者がいやがるのかなぁ。「売れない売れないという前にやることやれ!」って、トヨザキ社長って時々言葉はキツイけど、すごくまっとうなことを言う方ですよね。編集者の方々はやった方が良いと思います。3000人って思うからこそ、「私が買わなくては!」「私が読まなくては!」と思っているのも事実ですが、こちらも先細りはイヤなんです。がんばってください。私も読みますから!