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2016年9月 3日

「第三帝国」から「アメリカ大陸のナチ文学まで」―「第三帝国」刊行記念イベント

第三帝国/ロベルト・ボラーニョ野谷文昭 × 斎藤文子 × 柳原孝敦「『第三帝国』から『アメリカ大陸のナチ文学まで』 ――訳者三名がボラーニョの初期三作を読む」ボラーニョ・コレクション『第三帝国』刊行記念


日時:2016年9月3日(土)18:30開演
会場:MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店
出演:野谷文昭(名古屋外国語大学教授、東京大学名誉教授)
   斎藤文子(東京大学大学院教授)
   柳原孝敦(東京大学大学院准教授)
料金1,000円(ワンドリンク付き)
定員:40名

渋谷東急百貨店本店7Fの丸善ジュンク堂書店喫茶室にて。

ボラーニョ「第三帝国」刊行記念イベント、3本目にしてようやく行けました。「アメリカ大陸のナチ文学」「はるかな星」「第三帝国」の3ボラーニョの初期3作が完成したとのことで、野谷先生と斎藤先生と柳原先生のお三方の登壇。会場には「鼻持ちならないガウチョ」の久野量一先生のお姿も。

私が個人的に一番気になっていたのは「火傷」がツインボートをどういう形で積んでるなってるのかというところ。中に入って寝泊まりしてるって、それだけの空間はどうやって作っているのか、すごく不思議でした。「本当はどうなってるのか?やっぱりよくわからない。」というお話になって、なんだか安心しました。

ボラーニョはそうやって謎を提示しておきながら解かないことが多い。描いている対象を突き放した、クールな感じがいいのは、共感します。

ボラーニョは物語の中で不安感を徐々に肥大化させていき、最後、最高潮に達した不気味さの中に読者を置き去りにしていくことが多い。でも「第三帝国」のラストがちょっと拍子抜けと斎藤先生がおっしゃっていて、そうそう!と私もそう思いました。インゲボルクと「ヨリは戻っていないけど関係は持った」と書いてありますが、ヨリが戻ったと同じ意味だと私は思いますよ。少なくともインゲボルグ的にはそうでしょう。ちょっと懲らしめてやったくらい。柳原先生の「あれは「アメリカン・グラフィティ」の後日譚のような感じ」というのも

ボラーニョのドイツ文学に対する博学っぷりにいつも驚かされていましたが、やはり翻訳者の方もそう思うのですね。チリのファシズムにナチが関連していた話を解説して下さって、「何故チリ人なのに、こんなにナチにこだわるのか?」の疑問が少し解けました。

話は満載だったので書ききれませんが、ネルーダの「altura」を「高み」と訳した柳原先生に野谷先生が「ボクは「頂き」としたけどね...」という突っ込んだ場面に、なんだかほのぼのとしました。

(この手のイベントでサイン会に参加出来る胆力のない私...。)