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2016年8月26日

第三帝国/ロベルト・ボラーニョ

第三帝国/ロベルト・ボラーニョこれはボラーニョの初期の作品で、死後に刊行されたもの。若書きという印象は全然ないけれど、説破詰まったような勢いが感じられる。

これは破滅へ向かう物語だ。ゲームの進捗も相まってとてもスリリング。ウドは単に同胞というだけで友達とも言えない、実際はあまり気に入らない男のために、恋人だけを先に帰国させ一人でコスタ・ブラーバ(カタルーニャの海岸)に残る。そんな義理はないのに。

今のところ趣味に過ぎないが後にこれで食べて行ければと思っている原稿を書き上げるためか、少年の頃憧れたホテルの支配人夫人への想いを遂げるためか、〈火傷〉とのゲームを続けるためか。休暇が終わっても仕事に戻らなければ、クビになるかもしれない、恋人を失うかもしれない、親友に恋人を奪われるかもしれない、親友はその後ろめたさから金を貸してくれているのかもしれない。〈火傷〉は実際は何者なのか、ゲームを続けているのは何故か、自分をどうしようとしているのか...?

このままここにいると、切望的な状況しか思い浮かばないのに、彼はこの地を去らない。それが不思議だけれど、こういうドラマを私はよく見ているような気がしてならない。この物語でウドは結局どうなるかはさすがにここには書けない。

この「第三帝国」はボードゲームの名前だが、やはりナチの気配が濃い。「アメリカ大陸のナチ文学」「はるかな星」、そして「2666」の中にもナチ時代の話が登場する。チリ人なのに何故か。独裁政権での投獄経験者だからというのもあるだろうが、それだけではないのだろう。

登場人物たちがバルセロナへ頻繁に行くので、どのくらいの距離なのかと思ったら車で40分~1時間程度。三浦海岸に宿をとって東京へ遊びに行く感じかな?バルセロナの海は都会過ぎて泳ぐものではないらしい。長期リゾートって日本ではなじみないからな...。


■原綴:El Tercer Reich, 2010 Robert Bola˜no
■書誌事項:柳原孝敦訳 白水社 2016.8.10 404p ISBN978-4-560-09267-5(ボラーニョ・コレクション)


この本に関係して3回のイベントが開かれている。最初の二つは出られなかったが、最後のだけは出られそう。

2016年7月22日(金)紀伊國屋新宿南店:〈ボラーニョ・コレクション〉『第三帝国』(白水社)訳者・柳原孝敦さん×解説者・都甲幸治さんライブトーク

2016年8月22日(月)下北沢B&B:柳原孝敦×米光一成 「訳者とゲーム作家、『第三帝国』を語る!」ボラーニョ・コレクション『第三帝国』(白水社)刊行記念

2016年9月3日(土)MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店:野谷文昭×斎藤文子×柳原孝敦「訳者三名がボラーニョの初期三作を読む」