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2005年5月27日

われら女性~第五話「アンナ・マニャーニ」

われら女性■原題:Siamo Donne
■制作年・国:1954年 イタリア
■監督:ルキノ・ヴィスコンティ
■製作:アルフレッド・グワリーニ
■脚本:チェザーレ・ザヴァッティーニ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ
■撮影:ガボール・ポガニー
■音楽:アレッサンドロ・チコニーニ
■編集:マリオ・セランドレイ
■出演:アンナ・マニャーニ

■内容
アンナ・マニャーニがまだレヴューに出ていた頃。犬を連れ、劇場へ向かうタクシーに乗った彼女に対し、タクシーの運転手はタクシー代金4リラ50のほか、犬の料金を1リラ要求する。タクシー会社の規則によると、犬は膝の上に乗る犬は無料だが、膝の上に乗らない犬は1リラ料金を請求できるとあると主張する。マニャーニはいつも犬を連れているが、そんなことを言われたのは初めてだし、第一犬は膝の上に乗る子犬だから無料のはずだと主張する。ところが運転手は、小さい犬だが子犬ではないから、請求できるはずだと屁理屈を言う。腹が立ったマニャーニは自分の主張の正しさを証明するため、タクシーで警官を捜しに行く。ところが警官は犬が鑑札をつけていないからと罰金を請求する。しぶしぶ罰金を払ったマニャーニだが、それでもなお自らの正しさを証明するため、今度は憲兵のところへ向かう。劇場では舞台監督が彼女の到着をイライラしながら待っている。マニャーニは出番に間に合うか。


■感想

イタリアは複数監督によるオムニバス映画がさかんだが、これは当時輝いていた「女優」をテーマにした映画。各エピソードにおいて主演者は実名で登場する。第一話は製作者自身が監督しており、新人女優のオーディションを描いていて、「ベリッシマ」を彷彿とさせる。第二話のアリダ・ヴァリはこの後の出演作が「夏の嵐」である。第三話のイングリット・バーグマンは珍しくコミカルな様子を見せる。

この映画の中でもっとも興味深いエピソードは第四話の「イザ・ミランダ」だ。「女優の部屋は博物館のようだ」とはよく言ったものだ。多くの有名画家に画かせた自分の顔の絵がずらっと並び、写真やポスターのみならず、出演した映画のシナリオなど大量の資料がきっちり整理されている。まさに「自分マニア」なのである。そして大女優であり続けるために、肉体の鍛錬を続け、女優業に集中できないよけいなものを排除するため、子供をつくらなかった。そんな彼女がふと出会った子供との交流を通して、自分が得られなかったものを感じる。五本のエピソードの中では一番せつないお話だ。

さて、第五話でようやくヴィスコンティが登場する。ヴィスコンティはパワフルなマニャーニがお気に入りで、これはマニャーニ自身が実際に遭ったエピソードに基づいている。マニャーニはたった1リラのために、追加のタクシー料金と罰金を払わされても、それでもしつこく自分は正しいと言い続ける。最後、「膝の上とは」という解釈を辞書をもってしてくれる軍人のおかげで胸をなでおろすのだが、結局タクシー運転手はしつこく1リラを要求する。自分の正しさが証明されたマニャーニは笑いながら払う。なかなか痛快な姿で、かっこいい。

全体
■製作:アルフレッド・グワリーニ
■音楽:アレッサンドロ・チコニーニ


第一話「四人の女優の一つの希望」
監督:アルフレッド・グワリーニ
脚本:チェザーレ・ザヴァッティーニ
撮影:ドメニコ・スカラ
出演:エンマ・ダニエーリ/アンナ・アメンドラ

第二話「アリダ・ヴァリ」
監督:ジャンニ・フランチョリーニ
脚本:チェザーレ・ザヴァッティーニ/ルイジ・キアリーニ
撮影:エンツォ・セラフィン
出演:アリダ・ヴァリ

第三話「イングリッド・バーグマン」
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:チェザーレ・ザヴァッティーニ/ルイジ・キアリーニ
撮影:オテッロ・マルテッリ
出演:イングリッド・バーグマン

第四話「イザ・ミランダ」
監督:ルイジ・ザンパ
脚本:チェザーレ・ザヴァッティーニ/ジォルジォ・プロスペリ
撮影:ドメニコ・スカラ
出演:イザ・ミランダ