最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2007年12月18日

また会う日まで/ジョン・アーヴィング

Until I Find You, 2005

また会う日まで 上また会う日まで 下
小川高義訳 新潮社 2007.10.31
上:566p ISBN978-410-519111-5下:550p ISBN978-4-10-519112-2

このお話、ただでさえ長いアーヴィングの話の中でも新記録で長い。けれど、つまらないとか冗長だとかは私は少しも感じなかった。

主人公はジャック・バーンズで、彼の長大な教養小説であることには間違いないのだが、私にとっては、とにかく問題はアリス。物語の序盤は主役級だが、トロントに帰ると、急に影が薄くなっていく、不思議な母親。見た目の雰囲気はすごくよくわかる。髪が長く、細身で、ヒッピー風。氷の貼った池に落ちたジャックを半狂乱になって叱るあたりはごくごく普通の母親だ。刺青師なんて仕事をしていて、明らかに独立心の強い女性なのに、うるさそうなおばさんの家に住んで、面倒を見てもらい、子どもを身持ちの堅い学校に入れたり、偉いなぁなんて思ったりした。最初から不思議だったのは、何故4歳になってから父親を捜しに行ったのか、また、5歳で諦めたのか(オーストラリアへ行ったからとなっていたが、小学校に入るまでにと言ってたのに)。足手まといであろう子どもを連れて旅に出て、帰った後は少し子どもに無関心になっているようで、ついに10歳で寄宿学校に入れるのはちょっとどうにも理解出来ない感じになっていく。

この先はしばらくアリスは見えてこず、ジャックの成長の過程が延々と描かれる。そして下巻に入って、またアリスの存在がまったく別の角度から浮上する。

アリスが死んだ後、ジャックが北海を再度旅して、真実をつかんだ後、どうしてジャックはおかしくなってしまうのだろう。父親がジャックを捨てたわけではなかったことがわかったのに。でも、それ以上に、自分の生きてきた過程の多くのエピソードが嘘とわかってしまうというのは、無茶な話なんだろうな。自分の人生を再構築しなくてはならない、という自体はアイデンティティの崩壊以外の何ものでもない。

そして父親探しを途中でやめてしまうのは何故だろう?と思いつつ読み進んで行くと、ちゃんと会えてほっとした。ウィリアムがはっきりと、明確にアリスを許せと言ってくれて、何故か私もほっとしてしまった。

書けばキリがないので、また機会があったら追加しよう。