最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2007年3月21日

紙の空から

紙の空から柴田元幸翻訳作品だから読んだのではなく、スチュワート・ダイベックが読みたくて買った。この人の書くアメリカは1950年代のシカゴ、10代の少年の視点から描いた作品が多いのだが、ベースとしてなんとなく暖かい感触があるので、とても気に入っている。あまりアメリカの風景を好まない私にとって、何人か数少ない共感を覚えやすいアメリカを描く人だ。この短篇の場合でも、主人公の冒険譚はやはりとても暖かい。昭和30年代の日本の風景に共通するものがあるのだろうか(といっても昭和30年代なんて知らないけど、なんとなく)。
そのほかに気に入ったのは、「すすり泣く子供」。テーマはよくある母娘の軋轢なのに、幽霊話&舞台はジャマイカという贅沢な設定のせいだおるか、不思議とインパクトが強かった。

挿絵が美しく、良い本だと思う。多少なりとも英米小説が好きな人には贈り物としても使えるかもしれない。一つくらいは気に入る作品があるだろう。

■著者:柴田元幸訳
■書誌事項:晶文社 2006年11月30日 334p ISBN4-7949-6704-7
■内容:
「プレシアの飛行機」 ガイ・ダヴェンポート
「道順」 ジュディ・バトニッツ
「すすり泣く子供」 ジェーン・ガーダム
「空飛ぶ絨毯」 スティーヴン・ミルハウザー
「がっかりする人は多い」 V.S.プリチェット
「恐ろしい楽園」 チャールズ・シミック
「ヨナ」 ロジャー・パルバース
「パラツキー・マン」 スチュアート・ダイベック
「ツリーハウス+僕の友だちビル」 バリー・ユアグロー
「夜走る人々」 マグナス・ミルズ
「アメリカン・ドリームズ」 ピーター・ケアリー
「グランド・ホテル夜の旅+グランドホテル・ペニーアーケード」 ロバート・クーヴァー
「夢博物館」 ハワード・ネメロフ
「日の暮れた村」 カズオ・イシグロ