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2001年2月17日

ダブル ダブル

■著者:マイケル・リチャードソン編,柴田元幸,菅原克也訳
■書誌事項:白水社 1990.2.25(1992.5.15第7刷) ISBN4-560-04264-0
■感想
「分身」をテーマにしたアンソロジー。「双子」「影」「自分の人造人間」「鏡」といったモティーフをもった作品を14作集めたもの。収録作品は
  • かれとかれ/ジョージ・D.ペインター
  • 影/ハンス・クリスチャン・アンデルセン
  • 分身/ルース・レンデル
  • ゴーゴリの妻/トンマーゾ・ランドルフィ
  • 陳情書/ジョン・パース
  • あんたはあたしじゃない/ポール・ボウルズ
  • 被告側の言い分/グレアム・グリーン
  • ダミー/スーザン・ソンタグ
  • 華麗優美な船/ブライアン・W.オールディス
  • 二重生活/アルベルト・モラヴィア
  • 双子/エリック・マコーマック
  • あっちの方では―アリーナ・レイエスの日記/フリオ・コルタサル
  • 二人で一人/アルジャーノン・ブラックウッド
  • パウリーナの想い出に/アドルフォ・ビオイ=カサーレス
この中に収録されている「パウリーナの想い出に」が読みたくて購入した。小さい頃から一緒で、魂が結ばれている、二人は一人だと信じていた恋人の突然の心変わりに、傷心のままヨーロッパへ去り、2年後に帰って来た彼の元へ、再び恋人が現れるが‥。結末、というよりは本人の解釈の問題なんだろうけど、わりと意外な結末だった。 他に面白かったのはルース・レンデルの「分身」くらいなもので。一応シャム双生児とか出てくるけど、いまひとつだった。「ドッペル・ゲンガー」の創始者とも言えるジャン=パウルを原文で読んだのは、大学の頃だっけか。独文やってて、このモチーフ知らないでは通らない。ゲーテだって、自分の分身に会った話とか残してるし。文学的にはおいしいのよね。
私の場合、もっと感覚的にこれの存在は子供の頃からあって、鏡がまともに見られるようになったのは、ずいぶん大人になってからだった。だから独文を選んだのかもしれないな。 しかし、少なくともこの本では萩尾望都「半神」以上の作品には巡り会えなかったな。16ページの短篇としては最高傑作だと、やはり今でも思うが、それ以上に、これほどストレートで怖い「双子」の話もないなぁと思う。 (bk1にて購入。7,000円以上だと送料無料なので、ついつい買いすぎた)