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2002年1月26日

さすらい

「さすらい」■Im Lauf der Zeit, 1976 西独
■スタッフ
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
製作:ミヒャエル・ヴィーデルマン
撮影:ロビー・ミューラー Robby Müller/マルチン・シェイファー
音楽:インプルーブド・サウンド
出演:リュディガー・フォグラー Rüdiger Vogler/ハンス・ツィッシュラー Hanns Zischler/リサ・クロイツァー Lisa Kreuzer/ルドルフ・シュントラー Rudolf Schundler
■感想
ロードムービー三部作の最後。3作品の中では、これが一番好きなのかもしれないなぁとあらためて思った。「都会のアリス」の方が人には勧められるけど、意外と肩肘貼って見ている自分がわかるし、「まわり道」は観念的すぎる。約3時間の長丁場、のんびり開放的な気分で見られるし、これが一番ロードムービーらしい作品。エンディングも楽天的。ヴェンダースの中では最も楽観的な結末となっている。
西ドイツと東ドイツの国境あたりをロケハンだけしっかりやって、脚本はなし。脚本も決めずに撮影に入って、即興的な部分の良さを保ちつつ、作品としての質を下げず、怠惰な感じを出さないなんていうのは、奇跡的な出来事だったのだろう。
登場人物二人のそれぞれの故郷へ立ち寄る場面があるが、ブルーノの「ライン」って何だろうと思っていたら、本当にライン川の中州に家がある。なんだ
車窓風景やサイドカーで走る場面、とぎれとぎれに挟まれるディランの歌。とてもカッコいいのだが、この辺りは、どうしたって60年代末から70年代のニュー・アメリカン・シネマのロードムービーの影響が感じられるが、一目瞭然で違いが出ているのが、モノクロ、という点だろう。「まわり道」を何故カラーにしたのか、という問いに「原作があるから」というよくわからないWWの答えがある。「自分の世界なら絶対モノクロ、他人のものならカラー」というこだわりがあったようだ。
最後の方になると台詞が映画に関する演説になっていて、それがヴェンダースらしいと言えばらしいが、わりといい気分で引っ張ってきたのだから、やめた方が良かったんじゃないかな。