最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2003年10月

2003年10月17日

スローフット―なぜ人は、サッカーを愛するのか

スローフット■著者:西部謙司
■書誌事項:双葉社 2003.6.25 ISBN4-57-529566-3(サッカー批評叢書)
■感想:
著者はフランスに3年いたというサッカージャーナリストなので、イングランド、イタリア、スペインという欧州サッカー中心地からはずれているため、日本のサッカージャーナリストの中では少々異色。サッカーに対する物の見方が少し変わっていて、視点が面白い。サイモン・クーパーがイギリス人のくせにずっとオランダで育ったという経歴の持ち主なので面白いのかなと思ったのと同様。


第1章 ロス・セボジータス
マラドーナが8歳から14歳まで所属していた少年時代のチーム
第2章 The BIG MAN,still standing
バルサのリケルメは何故上手くいかないのか(2003.2)
第3章 青か赤か
マンチェスターでわざわざユナイテッド(赤)を選ばず、シティ(青)を選ぶファンの話(2003.2)
第4章 異邦人
フランスリーグ(2002.12)
第5章 空飛ぶトルコ人
トルコリーグ観戦記(2003.5)
第6章 三巨人物語
1950年代に欧州で活躍した3人の巨人、ディ・ステファノ、プスカス、クバラの話(2002.10)
第7章 ヨハン
ヨハン・クライフのトータルフットボール(2003.3)
第8章 試されるJリーグ
ジーコ・ジャパンの戦術の基本はJリーグ(2003.4)
第9章 悪の論理
闘将・柱谷の日本人離れしたマリーシア
第10章 Why football?
サッカーにかかわる様々な人々へのインタビュー
第11章 何も放棄するな
美しいサッカーか、勝つサッカーか

毎度繰り返し言うが、サッカー本はタイミングが難しい。歴史的な話(1980年代以前とか)なら何とかなるが、チームや選手の評価は頻繁に変わるので、とにかく新しくないと意味がない。たいていは雑誌の方が望ましい。各週で2冊プラスα読んでいる。雑誌というと、サッカー関連以外は読まないというくらいだ。
本書は3〜4ヶ月の刊行になるが、このくらいのタイミングならギリギリという感じか。普段読んでいないサッカー雑誌に掲載された文章が多いので、安いし、中身もよくわからないまま買ったら、中身があたりだった。我ながら勘が良いなぁ。

2003年10月16日

生半可な學者

生半可な學者■著者:柴田元幸
■書誌事項:白水Uブックス 1996.3.25 ISBN4-560-07333-3
■感想
これはまた中途半端に古いエッセイ。軽いものが読みたい昨今なのではあるが、タレントのエッセイなんかだと1時間以内で読み切ってしまい、内容も面白くなく、読後まったく記憶に残らないので、非常にコストパフォーマンスが悪い(BOOK OFFで100円であっても)。学者のエッセイの方が多少はためになるし、内容も面白いものもある。
柴田氏は英米文学の学者/翻訳家のスターであるからして、そうつまらない筈もなく、エッセイも多数出ている。その原点ともいうべき本なのだが、これで講談社エッセイ賞受賞か…という気も若干するし、それくらい面白いエッセイがないという証拠かもしれない。私は英米文学はあまり読まないが、ポール・オースター好きなので、よくお世話になっている。
欲を言えば、面白い本を探しているときにこういう作家や翻訳家の新書を読むので、書評がもうちょっとあると嬉しかったが、英語表現のエッセイなのでそれは仕方がない。自訳になるが「舞踏会へ向かう三人の農夫」はちょっと読みたいかも。アウグスト・ザンダーの話とかはよくナチ物でみかけたなぁ。
それと、アメリカは大学に創作科というところがあって、そこから作家が生み出されてくることに対して、ちゃんと疑問符を打ち出しているところに共感。「システム化された体制によって生産される作家たちは、面白い小説を書くのか?」と。それでも中にはごく稀にちゃんと書く人もいるけど、稀です。

2003年10月15日

ジョン・レノン・レジェンド

ジョン・レノン・レジェンド■書誌事項:河出書房 2003.10.9 ISBN4-30-926644-4
■感想
ジョン・レノンの伝記、インタビュー、評論類は1980年以後山ほど出ていて、日本で出版されているもので、おそらく30〜40冊くらいはあるのではないか?ビートルズものを含めると相当量に上る。80年代の間は結構追いかけていたのだが、そのうち同じネタの繰り返しになってしまい、目新しい物が次第に減って行った。ビートルズ本の方はずっといろいろと出てはいたものの、「アンソロジー」で一息ついた感もあった。
それなのに、今回これを買ってしまったのは、いろんなサイトや本屋でさかんに「予約予約」と言ってるのと、妙に値段が高かったので気になったのだ。買ってみてわかった。とりあえず、中身を見て。チケット、直筆歌詞カード、グリーティングカードほか「紙」の資料がほぼ見開きにつき最低1ヶはついてくる。ページ数にしたら100ページ以下。よほどのマニアなら「安い」と思うが、そうでもない人はがっかりするんじゃないかと思う。一応文章も入っているのだが、伝記的に目新しいものはまったくなく、既出の話のみ。だから、この紙類をありがたがる人じゃないと意味がない。
元々展覧会の企画本だったようだが、本として非常に斬新な試みであることは間違いなく、異常に手間暇かかりそう。編集者はさぞ作っていて楽しかっただろうし、印刷・製本屋は「なんじゃこりゃ」と言いつつ楽しかっただろう。だから、読者も楽しめる人じゃないと、意味不明な本になる。「なんでも鑑定団」で時々やる「紙くず選手権」になってしまう可能性もあっただけに、そうならなかったのは「直筆」ものが多かったからかなぁと思った。