最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2013年10月

2013年10月31日

グアバの香り―ガルシア=マルケスとの対話

グアバの香り―ガルシア=マルケスとの対話P.A.メンドーサというガルシア=マルケスの古くからの友人でジャーナリストとの対談。1982年に刊行されたもので、まだノーベル賞を受賞する直前。何故今頃翻訳されたのか、というよりは、何故今まで翻訳されなかったのか、という方が正しい。『すばる』1983年8月号に桑名一博訳で本書の部分訳が載っているのだが、それで終わりになっていたのを訳者がずっと気にしていて、今回翻訳してくれたようだ。ありがたいことです。

ガルシア=マルケスくらい日本で翻訳や関連本が出ている作家はラテンアメリカ文学では珍しい。ガボ以外だと、ボルヘスくらいなものか。翻訳書もそうだけど、ルポルタージュもあるし、自伝も出ている。この自伝がくせもので、本格的な作家活動に入る直前で終わっている。研究者は本書の原書にあたればいいかもしれないが、一般読者は作家活動を本格的に始めた頃のガルシア=マルケスの苦労をよくわかっていない。ジャーナリストとの二足のわらじをはきながら、家族を抱えてパリで困窮したりとか、いろいろ大変だったのはよく聴く話だが、本書の"解説"は詳細に年代を追ってくれるので、わかりやすい。

「百年の孤独」「族長の秋」など作品世界への理解はこの対談を読むと深まるだろう。対談中でスリリングなのは政治に関しての部分。ガルシア=マルケスのキューバ、というよりはカストロへの親近感はいろいろ理由はあるのだが、でもどう考えてもおかしい。だからここで彼の言う「カストロはカリブ海の人間だ」というのが、なんだかとても本音に近いような気がする。要するに、カストロの政治姿勢はともかく、人として魅力的だから好きなんだろう。マラドーナも同じようなことを言う。ガルシア=マルケスとマラドーナでは比較にならないかもしれないが、マラドーナの情の深さを思うに、ガボにも似たところが若干あるような気がした。


バルガス=リョサについてもちょっとだけ触れているが、例のこの事件が起きたのは1976年だから、もう仲違いしていたんだなと思う。この派手な喧嘩についてはこれまで様々な理由が伝えられているのだが、政治絡みとか、女性を取り合って、とかいう理由ではないように私は思う。女性絡みと言えばそうなんだけれど、奥さんが自分のことで相談に行った先がライバルの作家というのも気に入らないし、そいつが何か偉そうなアドバイスをしたのも気に入らない、というきわめて身勝手なマッチョ的な理由ではないかと。勝手な想像だが。

カルロス・フエンテスやファン・ルルフォらとの興隆や映画へ関わったいきさつあたりが、私には興味深く感じられた。この時代のことを詳しく語った本があるといいのだが。


著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス,P.A.メンドーサ〔聞き手〕,木村榮一〔訳〕
書誌事項:岩波書店 2013.9.27 222p 2,625円 ISBN978-4-00-022637-0
原題:El olor de la guayaba, 1982

目次
 一章  生い立ち
 二章  家族
 三章  仕事
 四章  自己形成
 五章  読書と影響
 六章  作品
 七章  待機
 八章  『百年の孤独』
 九章  『族長の秋』
 十章  現在
十一章 政治
十二章 女性
十三章 迷信,こだわり,嗜好
十四章 名声と著名人
解説......木村榮一

2013年10月30日

Oriental Jazz Mode/orange pekoe

Oriental Jazz Mode待ちに待ったorange pekoeの新作アルバム。どのくらい待ったかは、後でたっぷり恨み言を書くとして、まずは目の前のアルバムのことを。トータルで言うと、たいへんクオリティの高いアルバムで、これまでのオレペコのアルバムの中でも一、二を争うと言える。一つのバンドを10年以上追いかけて、進化してると実感できるというのは、なかなか経験出来ることではない。ベースとなる歌とギターがそう感じさせるのだから、これは目新しい楽器が入ったからというような表層的な問題ではない。アレンジ一つ一つ、音の一つ一つ。とても繊細に考え抜かれたものだと感じる。

"オリエンタル"だなと感じるのは特に「A Seed Of Love」「Desert Dance」「燈台」あたり。及川恵子さんのバイオリンを聴くことができるからか。これらは"オリエンタル・ジャズとはこういうものか"とうならせる曲たちで、アルバムのコンセプトを代表するのはこれらの曲なのだろう。タブラーやダラブッカの入っている「風の記憶(HOME)」「シリウスの犬」「FLOWER」あたりもオリエンタルな香りがふんわりと漂っている。

好みで言うと、落ち着いたバラードの「風の記憶(HOME)」「月の小舟」「A New Song」が好き。「Foggy Star」は何度もライブで聴いているが、もっと派手な曲の印象で、こういうアレンジで来たか!というのはちょっと意外。でもベースラインがとても良い。ボサノバもいいけど、ジャズもいいけど、オリエンタルもいいなと。とんでもなく贅沢な気分に浸れるアルバムだと感じた。

オリエンタル・ジャズ・モードさて、このアルバムまでリスナーは4年待った。下記をご覧いただくとおわかりだと思うが、これまでは1~2年に1枚は出していたのだ。確かに。
2002.5:Organic Plastic Music
2003.7:Modern Lights
2004.7:Poetic Ore
2005.11:Grace
2007.11:Wild Flowers
2009.7:CRYSTALISMO

「Tribute To Elis Regina」を2012年12月に出しているが、オリジナルは4年ぶり。どう考えても間隔があき過ぎだ。バンドの活動としてはライブを多くこなしていたので、あまり感じないという面もあったが、やはりライブよりアルバムだろうと私は思っていた。実際、2011年秋のライブではすでに「そろそろニューアルバムを出したい」と言っていたし、2013年の春のビルボード東京では「Foggy Star」「燈台」「シリウスの犬」「Gipsy Soul」を演ってくれて(そう言えば「Gipsy Soul」はどこへ?)、「今年中にはアルバムを出したい」と言っていたのだ。アルバムの骨格はこの時すでに出来ていた筈。そこからどうして1年半もかかったのだろうか。

新星堂のインタビューでは4年かかった理由を「納得のいく形になるまでに時間がかかってしまた」「今思うこと、伝えたいことをオリジナル作品として仕上げてていくことは簡単ではなかった」と言っている。その通りなんだろうと思う。


だからここからは単なる私の推測だ。このインターバルはむしろビジネス的な要因があったのではないだろうか。

orange pekoeはデビューしたレコード会社、ビクターを2010年に辞めている。これが自発的なものなのか、契約解除なのかまではもちろん知らない。2012年に出した「エリス・トリビュート」はインディーズからの発売だった。今時メジャーとインディーズにどれだけの違いがあるのか、どうせCDは売れていないのだし、と思う人もいるかもしれない。地方にCDが行かないくらいじゃないの?iTunes Storeであるし、と。確かに、ライブだけ見ていると箱の大きさなど、あまり変わらないように感じることもある。CDの流通面もあるが、メジャーとインディーズでは宣伝費がまったく違う。テレビ番組とのコラボなどインディーズではほぼ絶望だ。だから、メジャーでやってきて、あえてインディーズに行くのは理由があると思って良い。もちろんそういうアーティストもいる。ネット配信を嫌うメジャーから離脱する人が目立った時期もあった。けれど、オレペコがあえてインディーズを選ぶ理由はないと思った。もしかしてこの音楽業界の不況の中で、メジャーとの契約が進んでないのかも、と不安になっていた。


また、ひょっとしたら、トモジは嬉々としてソロ活動を始めた一馬くんに対する不安もあったのではないだろうか。トモジも"ソロを出す"とこれもずいぶん前からライブで言っている。もちろんとても期待してるのだけど、一馬くんに比べるとorange pekoeの顔はやはりトモジなんだろうなと思うから、このバンド続けていけるのだろうか、大丈夫なのかと私が不安に思った時期もあった。実際、このアルバムの発売が決定した後、トモジがブログで「一時期はorange pekoeというユニットを続けるかどうか本気で悩んだりした」と書いていたことは、とても納得したのだ。もちろんその直接的な原因はわからないのだが。

結局、私の不安は杞憂に終わり、メジャーのキングレコードからこのアルバムを出せることを知った時は本当に安堵した。このアルバム、ショップによって特典を替えるなど、とても工夫した売り方をしている(おかげでamazonの予約をキャンセルして、TOWER RECORDに予約を切り替えた。私が選んだのはビッグバンド)。NHK教育ではあるが、テレビ番組での使用も決まった。(「マリー・ゴールド」は"ノイタミナ"で私は大喜びだったんだけどな...)、ラジオ出演も続けている。頑張ってるなと思う。

「来年あたりにはorange pekoe Big Bandのアルバムリリースもできたらいいなあと思います。」とか一馬くんが言ってますが、その前にトモジのソロをお願いします。

とにかく売れて欲しい。ネットでもリアルでも一生懸命布教活動してます。1枚でも多くのCDが売れますように。そしてずっとこのユニットが続いていきますように。


1.A Seed Of Love(NHK やさいの時間エンディングテーマ曲)
2.月の小舟
3.風の記憶(HOME)
4.Foggy Star
5.Desert Dance
6.シリウスの犬
7.燈台
8.FLOWER(THE BODY SHOPコラボレーションソング)
9.A New Song
10.Outro~ A Seed Of Love

2013.10.23
King Record KICJ-657

2013年10月 6日

Viagem para Brasil 2013.10.5

interfm.jpgorange pekoe ナガシマトモコのブラジル音楽特集。

1. Sergio Mende Brazil '66 : Mas Que Nada(セルジオ・メンデス&ブラジル66:マシュ・ケ・ナダ)
2. Da Lata : Pra Manha(ダラータ:プラ・マーニャ)
3. Elis Regina : Corrida de Jangada(エリス・レジーナ:コヒダ・ジ・ジャンガーダ)
4. Elis Regina : Cai Dentro ( Montreux Jazz Festival)(エリス・レジーナ:カイデントロ)
5. orange pekoe : O Trem azul(オレンジ・ペコー:ウ・トレン・アズー)
6. Timbalada :Canto pro Mar(チンバラーダ:カント・プロ・マール)
7. Aqui Oh! : Toninho Horta(アキ・オー!:トニーニョ・オルタ)
8. Antonio Loureiro : Luz da Terra(アントニオ・ロウレイロ:地上の光)
9. Maria Rita : Pra Matar Meu Coração(マリア・ヒタ:プラ・マタ・メウ・コラソ)
10.orange pekoe : flower(オレンジ・ペコー:フラワー)

orange pekoeのトリビュートが出てから、エリス・レジーナは結構聴いてるんですが、やっぱり、マリア・ヒタもいいな。

しかし、こんなにきちんとラジオ番組聴いたのって、20年ぶりとかか?radikoとradiko toolのおかげだなー。

2013年10月 5日

paris match Billboard Live Tokyo 2013

2013-10-04billboard.jpg今回はリクエストツアーということで、名古屋、東京、大阪の三カ所でライブを行っています。ファンが1人3曲をウェブから投票し、結果を集計して演奏曲に反映するそうです(IP制限とかかかってなさそうだから、同じ人が何度でも投票出来そうですが、試していないのでわかりません)。3曲に絞り込むとなると、どうしても印象に深い曲になり、必然的に古い曲の方が有利となってしまいます。歴史がものを言いますね。「edition 10」からは一曲も入ってないそうですが、それは仕方がないかと。それから、カバーはリクエストの段階で除外されています。

1st Stageを見ましたが、私の入れた3曲は3曲とも入ってませんでした。1.風のうまれる場所で/2.ツキノシズク/3.タイムシェイド。マイナーなのでしょうがないですが...。
「Oceanside Linerが2位だったのは、ホント意外でした。

ミズノさんはいつもそうですが、頭3曲目くらいから声がのってきます。この時も、1曲目ちょっと危なっかしい場面も見受けられましたが、徐々に艶やかになってこられて、安心しました。

「Deep Inside」や「Kiss」なんかは、やぱり至福です。「Volume One」や「PM2」の頃は本当に好きで繰り返し繰り返し聴きましたので。

「edition 10」やカバー曲は12月のクリスマス・コンサートで聴かせて下さい。


vocal:ミズノマリ(paris match)
guitar,keyboard:杉山洋介(paris match)
guitar:樋口直彦
bass:坂本竜太
drums:濱田尚哉
keyboard:堀秀彰
sax:山本一

セットリスト

1st Stage
1. 太陽の接吻
2. Deep Inside
3. KISS
4. Angel
5. 十六夜
6. Metro
7. 東京ベイ
8. Eternity
9. アルメリア・ホテル
10. Rockstar
11. Oceanside Liner
12(en). Saturday


2nd Stage
1st Stage
1. 太陽の接吻
2. Deep Inside
3. KISS
4. Angel
5. 眠れない悲しい夜なら
6. F.L.B
7. Desert moon
8. Eternity
9. アルメリアホテル
10. Rockstar
11. Oceanside Liner
12(en). Saturday

2013年10月 2日

トリステッサ/ジャック・ケルアック

トリステッサ/ジャック・ケルアックケルアックの作品はちまちま読んでいたらいけない。一気に読まなければ。幸いこの本はあまり長くないので、集中すればすぐ読み終わる。あまり考えずに、リズムを楽しまなくてはならない、そう思っている。

ケルアックがメキシコ・シティで出会ったジャンキーな娼婦を聖女のように扱い、ロマンチックにプラトニックにあがめているが「愛している」の一言も言えない。自分の都合で帰国して、なかなか戻って来られないでいて、1年後にもうボロボロになったトリステッサに再会する、というお話。

実際にはプラトニックでも何でもなく、その辺は比較的最初の方に「自分の性欲の深さを云々」という記述がある。何の約束もしてやらない。何の言葉もあげない。ケルアックはどの土地でもいつでも身勝手な男で、同じ女として見ればそこに腹が立つもののが、人として見たら、その自由勝手さが好きだったりするのだ。

意外と印象的なのがこのトリステッサの部屋の乱雑さだ。土間なのか、ベッドの周囲、あるいは上に犬猫ならまだしも、鶏がうろうろしていたりする。ブニュエルの映画「忘れられた人々」に登場したメキシコの貧しい家の様子の影響を受けているのではないかと、解説で指摘されている。

自分はビートジェネレーションの他の作家を読まないのであまり「ビート」として好んでいるわけではないが、無視しているのでもない。ただ、彼の放浪の話を聞きたいだけだ。「どうしてそんなバカなことを?」「でもなんておもしろい」と。

まだ全部調査したわけではないが、ケルアックの作品をできれば再度執筆順に読み直したいと考えている。実際に体験した時期の順でもおもしろいだろうとは思う。

■書誌事項
著者:ジャック・ケルアック著,青山南訳
書誌事項:河出書房新社 2013.8.30 176p ISBN978-4-309-20628-8
原題:Tristessa, 1960 : Jack Kerouac

■目次
第1部 震えつつ、けがれずに
第2部 一年後......
解説(青山南)

河出書房新社「トリステッサ」

作品邦題原題執筆年出版年対象時期
海は我が兄弟The Sea is My Brother19422011 
Orpheus Emerged1944~452002 
そしてカバたちはタンクで茹で死に(バロウズとの共著)And the Hippos Were Boiled in Their Tank19452008 
町と都会The Town and the City1947~4819501935~46
路上On the Road1948~5119571946~51
ピックPic1951~691971
ジェラルドの幻想Visions of Gerard1951~5219631922~26
コーディの幻想Visions of Cody195219591946~52
ドクター・サックスDoctor Sax 195219591930~36
夢の本Book of Dreams1952~6019601952~60
地下街の人びとThe Subterraneans195319581953
マギー・キャシディMaggie Cassidy 195319591938~39
ダーマ書Some of the Dharma1954  
トリステッサTristessa195519601955~56
メキシコ・シティ・ブルース(poetry)Mexico City Blues19551959 
黄金永劫の書(poetry)The Script of the Golden Eternity19561960 
オールド・エンジェル・ミッドナイトOld Angel Midnight1956~591973 
荒涼天使たちDesolation Angels1956~6119651956~57
達磨行者たち/禅ヒッピー/ジェフィ・ライダー物語The Dharma Bums1957?19581955~56
孤独な旅人Lonesome Traveller,short story collection1960  
ランボーRimbaud1960  
ビッグ・サーの夏Big Sur196119621960
パリの悟りSatori in Paris196519661965
ドゥルーズの虚栄Vanity of Duluoz1966~6819681939~46

(確定情報ではありません。調査中)。