最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2012年3月

2012年3月24日

orange pekoe Billboard live TOKYO 3.18

orange pekoe 2012 Billboard Live in Tokyo今年最初のライブは大阪、東京、名古屋の3カ所。新曲中心になると聞いていた。バックアップには以前からの一流のジャズメンを中心に、アラブバイオリンの及川景子、アラブ音楽の打楽器"ダラブッカ"の平井陽一を新たに迎え、新しいアルバムに収録されるであろう新曲からスタート。アラブ音楽は意外という感じでもなかった。おそらく "Crystalismo" のイントロ "Didgeridoo" かそういう感じでもあったからだろうと思う。演奏している側から言うと、アラブ音楽とひとくくりにされてもきっと困るだろう。エジプトの音楽とトルコの音楽とペルーの音楽、それぞれ違うものだ。ダラブッカはベリーダンスの伴奏で聞いたりして比較的なじみがあるが、アラブバイオリンはまたかなりユニークだなと感じた。

途中、吉澤はじめの「青空」という曲が純朴な曲だったので、雰囲気ががらっと変わったけれど、再びアラビアンに。アンコールの「a seed of love」は途中でいろいろ流れが変わり、印象深い曲に仕上がっていた。

orange pekoeとしての新しいアルバムがおそらく6月頃出るのだろう。というのも、6月2日、横浜でライブをやるとMCで言ってたから。また年内に待望のナガシマトモコ・ソロアルバムも予定されているらしい。楽しみな1年だ。

1. a thousand miles (新曲)
2. 燈台 (新曲)
3. 輪舞
4. Foggy Star  (未発表曲)
5. Gipsy Soul (未発表曲)
6. Selene
7. 青空 (music&lyric by 吉澤はじめ)
8. シリウスの犬 (新曲)
9. やわらかな夜
10. Happy Valley
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11. a seed of love (新曲)
12. LOVE LIFE


ナガシマトモコ(Vocal)
藤本一馬(guitar)
吉澤はじめ(Piano)
岡淳(Tenor Sax)
類家心平(Trumpet)
及川景子(Arab Violin)
工藤精(Bass)
斉藤良(Drums)
福和誠司(Percussion)
平井ペタシ陽一(Darbuka)

2012年3月 4日

pina a film for Pina Bauch by Wim Wenders

pina dance,dance,otherwise we are lost昨年10月に東京国際映画祭で観たときは、何しろピナ・バウシュのダンスを観るのが初めてで、面食らってちゃんと映画を観る余裕はなかった。だからそのとき、もう一度見ようと決めていた。今回はダンサーの動きがほとんど映像として頭に入っていたようで、その分余裕をもって3Dを楽しめた。

3Dだから、例えば速い手の動きがコマ送りのようになって、それがイヤだという言葉をどこかで見かけたけれど、自分にはそれはまったく気にならない。重層感のある動きが、特に群舞の際には凄まじい迫力となって襲いかかってきた。また、ドレスや髪がダンスとともにふわっと浮かぶときの質感や舞い上がる葉っぱの動き、そして水の飛び散るしぶきが、まるで触っているかのような感覚として伝わってきた。

女性ダンサーのほとんどが髪が長いのは,やっぱりその辺意識してのことなんだろう。水についてはポスターの水しぶきを見てもわからない。あの自分にかかってくるような感じは3Dならでは。舞台を観ているというよりは、舞台に上がってしまっているような感覚。ヴェンダースはこれが欲しくてずっと撮れなかったんだなということが、今回観てようやくわかった。

本当にたくさんのシークエンスを撮影していて、舞台の中も外もすべてよく考えられた構図で飽きさせない。特に舞台を離れた映像は、舞踊団の公演だけを観ていたら観られない光景だ。背景の選び方からすべて、これがヴェンダース、という映像美で、この人は変わらないなとあらためて思う。

おそらくもう一度くらい観ないと自分にはこの映画の真価はわからないのだろう。でも、次はDVDで止めたり戻したりしてじっくりと鑑賞したいと思う。

pina 踊り続けるいのち

2012年3月 2日

無慈悲な昼食/エベリオ・ロセーロ

無慈悲な昼食物語というよりは、四幕ものの舞台のようだ。教会という密室の中でのみ行われるからだが、そのドタバタぶりが舞台上の出来事のように見えるからだ。最初から老人たちが好き放題やっている、そのうち教会のメンバーが順次やりたい放題になってきて、最終的にずっと己の獣性を隠して耐えてきたタンクレドも爆発してしまう。まるでスラップスティック・コメディのようだ。それでもやはり教会が舞台なので、ゴシックホラーのようなムードもずっと流れていて、途中、本当にホラーになってしまう。

教会の慈善事業としての「慈悲の昼食」には老人や貧しい人々がやってくる。老人たちの食事の面倒を見ているのはおそらく「二分脊椎症」の障害をもっていると思われる青年タンクレド。彼はおそらくは親に捨てられ、小さい頃からこの教会で育った。彼をひきとったのは教会の代表を務めるアルミダ神父。ザビーナという少女もこの教会の聖具室係の養女になっているが、養父の目的はわかりきっている。そして三人のリリイと呼ばれる賄い婦たち。

教会のスポンサーたる富豪の家に行かなくてはならないため、ミサを執り行うことが出来ないアルミダ神父の替わりにやってきたのがサン・ホセ・マタモーロス神父。この神父がまたのんべえのしょうもない神父なのだが、歌による説教は抜群の人気。説教の後、教会のメンバーはこのよそ者に余計な話を次々と始める。

お酒、性、お金と登場人物みんな俗物すぎておかしい。あからさまな教会批判なのだろう。その後、内戦の結果亭主を失った女たちの話や虐殺を暗示する事件、教会の婦人会の怪しげな動きなどコロンビアの内政の政治批判も入っていると思われる。

それでもやはり「顔のない軍隊」と同様、暗いのにどこかユーモラスなのが著者の持ち味なのかもしれない。


■書誌事項
著者:エベリオ・ロセーロ著,八重樫由紀子,八重樫克彦訳
書誌事項:作品者 2012.2.29 347p ISBN978-4-86182372-5
原題:Los Almuerzos : Evelio Rosero 2009

顔のない軍隊/エベリオ・ロセーロ