09/19

2011

東北沢5号 第2巻/松田奈緒子

東北沢5号 第2巻/松田奈緒子下北沢の良さがストレートに伝わって来る作品。不思議な感じのお店のマスター、銭湯、アパート経営のうるさいおばあちゃん。下町の良さと若い人の新しい風とがマッチングした不思議な街だなと思った。あの、独特のごちゃごちゃ感が私ももちろん嫌いではない。

千帆子の無防備さにハラハラさせられるのは、物語の最初からだ。だが千帆子は意外にタフなところもあり、周囲の助けを呼び込めるだけの明るさとあいまって、なんとか乗り切っている。突然やってきた田舎の彼氏も、追い出された部屋も、うまくこなしているが、問題は盾一との関係だ。人が人を求めるのはもちろん欠けているものがあるからなのだけれど、盾一が千帆子を必要としている理由は幼すぎて怖いし、それに応えようという気持ちの千帆子も危なっかしい。夢中になりつつも自分のペースを崩さないうちは大丈夫そうだけれど。

明るくて素直で図太いところもあって、本当に千帆子には救われるが、それでも親に捨てられた子供たち全員を千帆子一人で救えるわけもない。ミチや盾一は「はみだしっ子」たちがそのまま大人になってしまったようで、胸をうつ。

真夜の動きも怪しいし、マサトやマチルダも何かありそうだし、まだまだだ。「レタス・バーガー」以来、久しぶりの長編連載になるのかもしれない予感がある。

■書誌事項:集英社 2011.9.20 (りぼんマスコットコミックス) ISBN978-4-08-867143-7
■初出誌
東北沢5号...「Cookie」2011年4月号~2011年8月号
マサトのうまうまクッキング...描き下ろし

東北沢5号 第1巻
東北沢5号 第3巻