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戯曲

イエスタデイ

1996年
初出:『悲劇喜劇』2021年9月号
イエスタデイ

【上演データ】
1996年
多摩美術大学 卒業公演
【再演】
木冬社 サイスタジオ

【再演】
2003年8月20日~24日
シアターΧ+木冬社公演
会場:シアターΧ
演出:清水邦夫/松本典子
美術:上田淳子
照明:山口暁
音響:斉藤美佐男
出演:吉田敬一/大野舞紀子/泉谷侑子/新井理恵/水谷豊/金光泰明/佐藤里奈/関谷道子/岩田能子/中村美代子/吉田悦子/松本典子/清水邦夫
【あらすじ】
70歳代で東京に住む姉と弟が主人公。弟の次郎が故郷の少年時代をふりかえる。彼は戦争末期、海鳴りの音が聞こえる日本海岸のある街の写真館に住んでいた。そこへ親戚の同じ意中学四年の源一とその姉や妹たちが疎開で長崎から移り住んで来るが‥
イエスタデイ
【再演】
2023年8月8日~9日
Visual Aurally Reading LIVE 清水邦夫
NANYA-SHIP VAR LIVE実行委員会
会場:南青山MANDALA
演出:中原和樹
映像:目黒律啓
音楽:南谷朝子
制作:落司智子
出演:峰ゆとり(稲葉次郎)/竹中友紀子(稲葉塩子)/南谷朝子(浦田源一)/小野田由紀子(浦田海)/新井理恵(浦田夢)/稲松遥(浦田夢)/清水貴紀(矢坂)/都築香弥子(浦田夢)/白木三保(浦田海)/髄(浦田夢)/渡邉享介〔映像出演〕/内山森彦〔声の出演〕
【コメント】
1996年に当時清水先生が教授を勤められていた多摩美術大学の卒業公演向けに書かれた作品です。その後、木冬社のサイスタジオで公演され(時期未確認)、それから2003年の木冬社公演となります。こちらの公演は木冬社で多くの作品に出演されていた南谷朝子さんが中心となって上演された、まさに正当派の再演だと思います。
舞台は日本海の田舎町にある写真館。一つの家族(姉弟)ともう一つの家族(姉3弟)の出会いと葛藤。清水先生の作品にはよくある舞台ですが、学生さん向けに書いたこともあるせいか、先生には珍しくストレートな反戦の作品となっています。
チェーホフの「三人姉妹」の台詞が登場する点に「楽屋」の雰囲気がしました。タイトルにもなっている「イエスタデイ」とはThe Beatlesの“Yesterday”のことで、歌詞も劇中に出てきますが、一番強く印象に残るのはドイツの詩人ヘルマン・ヘッセの言葉です。
だいたい戦争というものは、われわれがあまりに怠惰で、あまりにも安易で、あまりにもいい加減だからこそ起こるのだ
われわれは心のどこかで、ひそやかに戦争を認め、許容しているからこそ、神の名において、戦争が堂々とまかり通ってしまうのだ。
ある人物は語った。戦争の時だけ、人が人を殺すことが許される。なぜかといえば、自分の欲望や利益のために人を殺すのではなく、すべての人間の幸せのためだと思い込んでいる。その考えの上にたって、きみは、われわれ人間が平気で死ねるのだと思っていたら、それは大きなまちがいである。
もし死んでいく人間の顔を見たら、きみは必ず気づくはずだ。人間は苦しんで死ぬのだ。苦しみながら、いやいや死んでいくのだ‥
この言葉、おそらく「戦争と平和:1914年以来の戦争及び政治に関する考察」あたりの中にあるのかと思いますが、未確認です。
長崎の原爆に対しての強い反発を感じる戯曲となっていますが、浦田兄弟が向かうのが広島ではなく長崎なのは、浦田海が詩を書く人でロマンチストだから、というあたりは清水先生らしさを感じます。
この作品は「清水邦夫全集」などに収録されておらず、『悲劇喜劇』2021年9月号、清水邦夫追悼特集号に収録され、ようやく一般でも目にすることが出来るようになりましたが、雑誌なのでいつまでも入手できるとは限りません。こちらの公演で台本を500円で販売されていましたので入手しました。現在の状況で本として販売することは難しいとは思いますが、電子書籍でなら出せるのではないかと思います。多くの方に台本として活用していただきたい戯曲です。
2023.8.8
 


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