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2002年7月

2002年7月29日

「愛のめぐりあい」撮影日誌―アントニオーニとの時間

■著者:ヴィム ヴェンダース著,池田信雄,武村知子訳
■書誌事項:キネマ旬報社 1996.9.1 ISBN4-8736-185-9
■感想
ヴェンダースだって一流と言える映画監督なのだから、いくらイタリアの巨匠といえども、そうそう「はいはい」と何でも言うこと聞くわけにはいかん、でもなー。という雰囲気の伝わる撮影秘話。だいたいが映画監督なんて強烈なエゴがある人たちが、よくまぁ一緒にやれたもんだと思う。意外とヴェンダースってお人好しなんだな、とも言えるが、要するに自己顕示欲と謙虚さは一人の人間にきちんと宿ることもあるのだ。
自分の撮影したフィルムを自分が編集する権限がない、という経験を「ハメット」でしたヴェンダースは、それ以後自分で製作まで携わり、自分の映画の権利を強く主張する。がミケランジェロが手を入れたカットをいったんは受け入れがたいものとしながらも、受け入れる。クリエイターvsクリエイターの闘いの中に、相手を思いやる
ミケランジェロのおかげで、マルチェロ・マストロヤンニの教師や猟師が見られなかったこと、枠物語の多数がバッサリ切られていたことが判明。私の立場からすると、残念無念。

2002年7月28日

愛のめぐりあい

■110min 仏/伊/独 1996.8
■スタッフ
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ Michelangelo Antonioni/ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
製作:フィリップ・カルカソンヌ Philippe Carcasonne/ステファーヌ・チャルガディエフ Stephane Tchal Gadjeff
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ Michelangelo Antonioni/ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders/トニーノ・グエッラ Tonino Guerra
撮影:アルフィオ・コンチーニ Alfio Contini/ロビー・ミューラー Robby Muller
音楽:ルチオ・ダルラ Lucio Dalla/ローラン・プティガン Laurent Petitgang
出演:ジョン・マルコヴィッチ John Malkovich
■内容


  • フェラーラ「ありえない恋の話」:イネス・サストーレ Ines Sastre/キム・ロッシ=スチュアート Kim Rossi-Stuart
  • ポルトフィーノ「女と犯罪」:ソフィー・マルソー Sophie Marceau
  • パリ「私を探さないで」:ファニー・アルダン Fanny Ardant/キアラ・カゼッリ Chiara Caselli/ピーター・ウェラー Peter Weller/ジャン・レノ Jean Reno
  • エクス・アン・プロヴィンス「死んだ瞬間」:イレーヌ・ジャコブ Irene Jacob/ヴァンサン・ペレーズ Vincent Perez
  • 3話〜4話:マルチェロ・マストロヤンニ Marcello Mastroianni/ジャンヌ・モロー Jeanne Moreau

■感想
ミケランジェロ・アントニオーニ自身の小説から映画化した、4部構成のオムニバス作品。そのうちの枠となる前後の物語とつなぎの物語をヴェンダースが撮影している。どういう事情でこのイタリアの巨匠とドイツの現代映像作家が一緒になったのか、詳しいことは不明だが、12年間もあたためていた企画がようやく撮影にこぎつけたところで、ミケランジェロが脳卒中により倒れ、言語を失ってしまったからだ。ミケランジェロの方から助けを求め、撮影開始にあたり製作者側がつけた条件がヴェンダースが枠物語を撮影し、共作とすることだった。
ある映画監督が一本の映画の製作を終え、イタリアへ飛行機でやって来る。次の作品の舞台を探すためだ。まず最初にやって来たのが北イタリアの小さな村、フェラーラ。そこで伝えられる「ありえない恋の話」は純粋すぎる愛について語る。次に監督は南のポルトフィーノへ赴き、そこで自らの父親を殺したという女性と一夜を過ごす「女と犯罪」。一転、パリへ飛んで現代的なアパルトマンを舞台にした「私を探さないで」。夫の3年来の浮気に苦しみ家出する人妻が広告が出ていた貸しアパートの一室を訪ねると、そこには妻に去られた男が家に帰って来たところだった、というお話。最後の「死んだ瞬間」はキリスト教の色合い強い作品。
一番力があるというかパワーを感じたのがポルトフィーノで撮影された「女と犯罪」。急勾配の崖が多く見られる入り江の街の、小径の描き方が印象的。「死んだ瞬間」での男女二人が話しながら歩くシーンも記憶に残る。
ただ、この2話と3話はソフィー・マルソーやキアラ・カゼッリのヘア・ヌードが話題として先行したらしい。記憶にないのでよくわからないが、DVDにも「無修正版」というシールが貼られていた。
ヴェンダースが共同監督をした、という以外で私が見る理由は特にない映画だ。ただ、4本オムニバスはイタリア映画では珍しくない手法なのだろうか?「昨日・今日・明日」という私のお気に入りのデ・シーカ作品も3本オムニバスだった。

2002年7月18日

My Fair Melodies

My Fair Melodies■the Indigo 2002.2.27 パイオニアLDC
■感想
ジャケットにつられて買ってしまいました。orange pekoeのカンバラクニエがCDジャケットのイラストを提供しているもう一つのバンド。男女二人のユニット。元々は3人だったんだけど。2000年のデビューで、ぼちぼち結構メジャーじゃないかと。Official Siteも立派だし。
スタンダードナンバーのアルバム。"I feel the earth move"は女性ボーカリストなら一度はカバーしているんじゃないかというキャロル・キングの曲。これは「空が落ちてくる」ですね。"Feel like makin' love"はロバータ・フラックの曲。Paris Matchもカバーしてたし。フェアグランド・アトラクションの"PERFECT"やスザンヌ・ヴェガの"Luka"など、女性ボーカリストらしい選曲。スティービー・ワンダーの"MY CHERIE AMOUR"なんかもあったりするけど。
線が細すぎて、あまり好みとは言えないから、これ以上買うかどうかは未定だけど、気分よく、安心して聞けるアルバムと言った感じ。


  1. I FEEL THE EARTH MOVE
  2. FEEL LIKE MAKIN' LOVE
  3. LA-LA MEANS I LOVE YOU
  4. RAINY DAYS AND MONDAYS
  5. PERFECT
  6. DON'T GO BREAKING MY HEART
  7. LUKA
  8. MY CHERIE AMOUR
  9. LOVIN' YOU

2002年7月11日

Night Food/ego-wrappin'

Night Food■EGO-WRAPPIN' 2002.7.5 ユニバーサル ミュージック
■感想
Ego-Wrappin'期待の新作。本当に期待を裏切らないパワフルな作品。インディーズの頃と比べるとメジャーになって、テレビドラマの主題歌もやって売れてるようだが、どんどん好きになっていく。

普通のバンドはデビューから時間が経過すると、洗練されて初期のパワーはなくなっていくものなのだが、このバンドの場合は関係なさそう。荒削りさが減っては来ていると言えちゃんと残ってるし、ソリッドだけどおどろおどろしいという変な感じ。とにかく集中させてしまう音。


  1. BIG NOISE FROM WINNETKA~黒アリのマーチングバンド
  2. くちばしにチェリー
  3. あしながのサルヴァドール
  4. 5月のクローバー
  5. チェルシーはうわの空
  6. PAPPAYA
  7. 老いぼれ犬のセレナーデ
  8. WHOLE WORLD HAPPY
  9. SORA NO LION

2002年7月10日

サーカスの息子/ジョン・アーヴィング

A Son of The Circus, 1994

サーカスの息子 新潮文庫 上サーカスの息子 新潮文庫 下
岸本佐知子訳 新潮社 2008.11.27 新潮文庫(ジョン・アーヴィング・コレクション)
上:899円 ISBN978-4-10-227314-2下:939円 ISBN978-4-10-227313-5

カナダで整形外科医として成功しているダルワラは、ボンベイ生まれのインド人。数年に一度故郷に戻り、サーカスの小人の血を集めている。彼のもうひとつの顔は、人気アクション映画『ダー警部』シリーズの覆面脚本家。演じるのは息子同然のジョン・Dだが、憎々しげな役柄と同一視されボンベイ中の憎悪を集めている。しかも、売春街では娼婦を殺して腹に象の絵を残すという、映画を真似た殺人事件まで起きる始末。ふたりは犯人探しに乗り出すのだが。/連続娼婦殺人犯は、とうとうダルワラとダーの間近にまで迫ってきた!犯人はいったい何者で、狙いは何なのか。事の真相は、二十年前のゴア海岸に遡る。ダルワラは、張形とともに旅していたヒッピー娘を助けるが、彼女こそ犯人のゼナナ―女装の売春夫を唯一目撃していたのだ。ダルワラやダー、そして担当刑事の記憶の糸を繋ぎあわせていくうちに、意外な人物が浮かび上がってくる。犯人逮捕は出来るのか...。そんな折り、ダーと生き別れとなった双子の片割れがアメリカからやってくる。神父見習いの生真面目な宣教師マーティンが、とんでもない騒動を次々に起こして...。


推理小説仕立てなようで、それでいてコミカルで、楽しめる作品だ。異邦人の気持ちをアーヴィング自身がカナダで味わったであろうことは想像できるが、そこから生まれる哀しみを克服できるラストが美しい。

サーカスの息子 上サーカスの息子 下新潮社 1999.10.30(ジョン・アーヴィング・コレクション)
上:2,520円 ISBN4-10-519106-3
下:2,625円 ISBN4-10-519107-1

2002年7月 3日

Lamb and Mutton

Lamb and Mutton■mama!milk 2001.10.25 インディペンデントレーベル
■感想
Ego-Wrappin'の「色彩のブルース」などでコラボレーションしているmama!milkの2nd。ウッドベースとアコーディオンの男女二人組。と聞くと哀愁漂ってるんだろうなぁと思われるでしょうが、そういうのもあるけど、ド迫力のナンバーもある。タンゴや20年代のパリっぽいとも言えるが、あまりそういった意識もなく、現代の音だなぁという気がする。
ボーカルがないので、私はボーカリスト至上主義者だから、その点は差し引いたとしても、カッコいいです。raftmusic
■内容


  1. anemone anaemia
  2. Lamb and Mutton
  3. andante,Coquettish"kuroneko"
  4. Sugar Daddy's Daddy
  5. 4 Down
  6. crimson erosion
  7. Mieulou
  8. ao
  9. Granpa in 3a.m.