「断絶」と「氷の世界」に挟まれ、少し地味な感もあるが、それでも大ヒットした「東へ西へ」が入っている。「断絶」に比べたら比較的フォークソングに近いのだが、それでも深町純のエレクトリカル・ピアノ(当時シンセサイザーといってなかったようだが)がうまくかみあっていて、当時としてはなかなか秀逸だったのではないだろうかと想像できる。
名曲「つめたい部屋の世界地図」で始まり、「帰郷(危篤電報を受け取って)」で閉じる、やはりアルバムとしてのトータルコンセプトといったものを意識した作りになっている。アルバムはシングルの寄せ集めではないという主張をファーストアルバムから引き続きしているのだろう。
「つめたい部屋の世界地図」の歌詞の中にタイトルは入っていない。これは名曲だと思う。
はるかなはるかな見知らぬ国へ
ひとりでゆく時は船の旅がいい
個人的には「夏まつり」が一番気に入っている。自分はこういう「郷愁もの」に少し弱いらしい。
十年はひと昔 暑い夏
ふるさとはふた昔 夏まつり
しかし、勝手な趣味で言うが、「あどけない君のしぐさ」は四畳半フォークの貧乏くさい歌詞なので、嫌い。自分で洗濯しなさいよ。「白いカーネーション」とか、ひねりがないというか、ちょっと何か毒が裏にあるんじゃないかとか勘ぐってしまいそうな、かわいい曲で、嫌いだ。
「紙飛行機」や「能古島の片想い」もファンの評価としては高いものがある。個人的にはあまり印象が強くないのだが…。
「帰郷」は当時福岡の照和でともにライブをしていた海援隊に提供し、海援隊のデビューアルバム「海援隊がゆく」に「ほととぎす」という曲名で先に世に送り出している。武田鉄矢が当時陽水の曲を「暗い」とか「貧乏くさい」とか「傘がないなら買えば」とか悪口をよく言っていたが、それもこれもあまりにすごい才能で嫉妬していたのだと語っているのを聞いたことがある。
1972年6月、実際に父の危篤を聞き、かけつける夜汽車の中で書いた曲だそうだ。
|