井上陽水 Disc Review
氷の世界
氷の世界

  1. あかずの踏切り
  2. はじまり
  3. 帰れない二人
  4. チエちゃん
  5. 氷の世界
  6. 白い一日
  7. 自己嫌悪
  8. 心もよう
  9. 待ちぼうけ
  10. 桜三月散歩道
  11. Fun
  12. 小春おばさん
  13. おやすみ
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POLYDOR 1973年12月1日 MR5038(LP)
POLYDOR 1983年9月1日(CDオリジナル)
POLYDOR 1990年9月1日 POCH-1025(再発売)
POLYDOR 1996年6月26日 POCH-1574(再発売)
ユニバーサル 2001年12月19日 UPCH-1126(紙ジャケットシリーズ)
ユニバーサル 2006年10月4日 UPCY-6255

曲、参加アーティスト、ともにすさまじく充実したサード・アルバム。1973年3月、シングル「夢の中へ」が井上陽水初のヒット曲となり、急遽ライブを出したが、オリジナル・アルバムへの期待は高かった。結果、日本のレコード・セールスの記録を塗り替えた金字塔のようなアルバムとなった。

何故、そんなに売れたのだろう。フォークとかニューミュージックとか当時は言われていたらしいが、演歌と歌謡曲しか売れなかった時代だったのに、こういう音楽が大きく受けた理由はなんだったんだろう。それが時代の空気っていうやつだったのか。「心もよう」はアルバム制作中に先行でカットされたシングルだが、この曲のもつ叙情性というか、一歩間違えると演歌の世界になってしまうところがよかったのか。これは「夢の中へ」より更に売れた。

遠くで暮らす事が
二人にとってよくないのはわかっていました
くもりガラスの外は雨
私の気持ちは書けません

期待の大きさを反映してか、当時としてはめずらしく、ロンドン録音が敢行されている(1.あかずの踏切り、4.チエちゃん、5.氷の世界、12.小春おばさん、13.おやすみの5曲がロンドン録音)。また、編曲のニック・ハリスンはThe Rolling Stonesの"Angie"のアレンジャーだった。「おお舶来!」と思うほどの凄さじゃないけど、きっと当時はそう思われていたのだろう。「氷の世界」はアレンジも演奏もものすごいカッコよく出来ていて、それが若い人に受けたのではないかと想像する。「氷の世界」と「心もよう」がこのアルバムの両輪なんだろう。

「氷の世界」は渡英前に出来上がらず、真夏のロンドンのホテル内で作ったそうだが、暑いのによく「毎日吹雪吹雪」なんて詩が書けたものだと、その話を聞いた直後は思った。しかし、「窓の外ではリンゴ売り」なんてむちゃくちゃな詩が出たのは、追いつめられて、あるいは暑くて頭がどうかしちゃってたからなのかな?なんて思ったりもした。

また、このアルバムには楽曲で参加した有名アーティストがいる。忌野清志郎と小椋佳である。「帰れない二人」「まちぼうけ」は1973年6月に行われたRCサクセションとのジョイント・コンサートで披露するために清志郎とのジョイントで作られた曲。1番の詩は陽水が、2番の詩は清志郎が書いたものである。ソロのギター、あれは高中正義だったんだなと、初めて聞いたときはわからなかった。

「白い一日」は同じプロデューサーという縁のあった小椋佳の作詞提供で、二人とも歌い、共作という形をとっている。

真っ白な陶磁器をながめては飽きもせず
かと言って触れもせず、そんなふうに君のまわりで
僕の一日が過ぎてゆく

(やっぱり私も「陶磁器」→「掃除機」と聞き違えてしまったクチです…)

「帰れない二人」「白い一日」は「氷の世界」よりも長い間聞き継がれる名曲だと思う。「氷の世界」「心もよう」がなんと言っても出色の出来だが、やはり時代感覚をもって聞かなくては、その良さがわからないかもしれない曲ではないかという気がするのだ。

「桜三月散歩道」や「チエちゃん」も小品としてはよくできている。でも、実際に一番のお気に入りは「待ちぼうけ」だったりする。これだけ良い楽曲が揃っているとかえって、こういう気が抜けたような明るい曲には本当にホっとさせられる。

  作詞作曲編曲
1あかずの踏切り井上陽水井上陽水星勝
2はじまり井上陽水井上陽水星勝
3帰れない二人井上陽水/忌野清志郎井上陽水/忌野清志郎星勝
4チエちゃん井上陽水井上陽水星勝/ニック・ハリスン
5氷の世界井上陽水井上陽水星勝/ニック・ハリスン
6白い一日小椋佳井上陽水 
7自己嫌悪井上陽水井上陽水星勝
8心もよう井上陽水井上陽水星勝
9待ちぼうけ井上陽水/忌野清志郎井上陽水/忌野清志郎星勝
10桜三月散歩道長谷邦夫井上陽水星勝
11Fun井上陽水井上陽水星勝/ニック・ハリスン
12小春おばさん井上陽水井上陽水星勝
13おやすみ井上陽水井上陽水星勝
1.あかずの踏切り
Electric Guitar : Joe Gammer
Bass : John Gustagson
Drums : Barry De Souga
Piano : Peter Robinson
2.はじまり
Acoustic Guitar : 安田裕美、井上陽水
Electric Guitar : 高中正義
Bass : 山村隆夫
Drums : 村上修一(秀一)
Piano : 深町純
3.帰れない二人
Acoustic Guitar : 安田裕美、井上陽水
Electric Guitar : 高中正義
Bass : 細野晴臣
Drums : 林立夫
Synthesizer, Mellotron Electric Harpsichord : 深町純
4.チエちゃん
Acoustic Guitar : Ray Senwic
Electric Guitar : Mark Warner
Bass : John Gustagson
Drums : Barry De Souga
Piano : Anne Odll
5.氷の世界
Electric Guitar : Mark Warner
Bass : John Gustagson
Drums : Barry De Souga
Piano : Peter Robinson
Synthesizer, Mellotron Electric Harpsichord : Peter Robinson
Chorus : Arrival
Blues Harp : 井上陽水
6.白い一日
Acoustic Guitar : 安田裕美、井上陽水
7.自己嫌悪
Acoustic Guitar : 安田裕美、井上陽水
Bass : 高中正義
Drums : 見砂和照
Piano : 松岡直也
Blues Harp : 井上陽水
Flat Mandolin : 安田裕美
8.心もよう
Acoustic Guitar : 安田裕美、井上陽水
Bass : 細野晴臣
Drums : 林立夫
Synthesizer, Mellotron Electric Harpsichord : 深町純
9.待ちぼうけ
Acoustic Guitar : 安田裕美、井上陽水
Bass : 細野晴臣
Drums : 林立夫
10.桜三月散歩道
Acoustic Guitar : 安田裕美、井上陽水
Bass : 山村隆夫
Drums : 村上修一(秀一)
Piano : 深町純
11.Fun
Acoustic Guitar : 安田裕美、井上陽水
Bass : 高中正義
Drums : 見砂和照
Piano : 松岡直也
Chorus : 星勝
12.小春おばさん
Acoustic Guitar : Ray Senwic
Electric Guitar : Mark Warner
Bass : John Gustagson
Drums : Barry De Souga
Piano : Anne Odll
Chorus : Arrival
Blues Harp : Judd Mcniven
13.おやすみ
Acoustic Guitar : Mark Warner
Electric Guitar : Joe Gammer
Bass : John Gustagson
Drums : Barry De Souga
Piano : Peter Robinson
全体で
Steel Guitar : 大江俊幸
Violin : 谷岡としお

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