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2017

「高野文子の描く昭和のこども原画展」に行ってきました。

高野文子の描く昭和のこども原画展チラシ昭和のくらし博物館の特別展「高野文子の描く昭和のこども原画展」に行ってきました。昭和の暮らし博物館という会場に合わせ、高野文子先生の作品の中から昭和のこどもを描いた原画を展示する企画です。

会場の昭和のくらし博物館は東急池上線久が原駅から徒歩8分。東急多摩川線の下丸子の駅からも同じくらいだそうです。駅からの道はわかりにくくはないですが、途中には目印がないので、調べておく必要はあります。閑静な住宅街の中にある、昭和に建てられた民家を利用した建物。入口から入ると左手に受付があり、ここで入館料500円をお支払いします。

昭和のくらし博物館入口会場建物の全体の構成は展示室案内にあります。玄関の戸をガラガラとあけて普通のお宅にお邪魔する感覚で自然と「お邪魔します」と声が出ます。そして当然のように靴を脱いであがります。展示室はこのページの「小泉智代記念室」の位置にありますので、お茶の間やお台所、お座敷を眺めて雰囲気を味わいながら進みます。後からゆっくり拝見しようと、気持ちは展示室へはやり、増築部分の2階にあがります。

展示室の中はこんな感じでした(展示風景展示風景)。机の上に単行本が並べられ、原画の番号と一致させたしおりがページに挟まれています。このページの原画がこちらです、という意味で、とても親切です。

原画は22点、カラー8点、モノクロ14点です。内容は以下の通り。
(ネタバレになるので、これから行かれる方はここはスルーしてください。)

No作品名収録単行本
1春ノ波止場デウマレタ鳥ハおともだち13カラー
2春ノ波止場デウマレタ鳥ハおともだち14カラー
3春ノ波止場デウマレタ鳥ハおともだち15カラー
4春ノ波止場デウマレタ鳥ハおともだち17カラー
5絶対安全剃刀絶対安全剃刀表紙カラー
6おともだちおともだち表紙・裏表紙カラー
7しきぶとんさん
かけぶとんさん
まくらさん
しきぶとんさん
かけぶとんさん
まくらさん
表紙カラー
8青い鳥青い鳥表紙カラー
9美しき町棒が一本7モノクロ
10美しき町棒が一本13モノクロ
11奥村さんのお茄子棒が一本147モノクロ
12奥村さんのお茄子棒が一本151モノクロ
13奥村さんのお茄子棒が一本161モノクロ
14奥村さんのお茄子棒が一本193モノクロ
15奥村さんのお茄子棒が一本195モノクロ
16美しき町棒が一本19モノクロ
17美しき町棒が一本21モノクロ
18黄色い本黄色い本33モノクロ
19黄色い本黄色い本43モノクロ
20黄色い本黄色い本45モノクロ
21黄色い本黄色い本31モノクロ
22Tさん(東京在住)は、
この夏、盆踊りが、
おどりたい。
どみとりー
ともきんす
121モノクロ
プレスリリースには26点とあったのであとの4点は何か伺ったら「ガラスケース内の"もんぺ"の絵が3点。キャラ設定アイデア段階の下絵作品群をまとめて1点と数えた」とのことでした。

今回の展示のポスターにも使われた「おともだち」の原画ですが、単行本がほぼ原寸大の大きさで、意外と小さいなという印象。裏表紙の女の子二人も展示されていました。カラー原画、美しくてため息が出ます。モノクロ原画は高野先生の独特のトーンの使い方、やわらかい線を堪能しました。

これら原画の額装のマット、もしくはマットボードと呼ばれる部分の布を高野先生ご自身で選んでつくられたそうです。

ガラスケースの中は新作の構想で途中で止まっているという「にっぽんのズボン」という作品についての展示でした。「日本の労働着―アチック・ミューゼアム・コレクション」(中村たかを著 源流社 1988.7)という本がきっかけで思いついたのだそうです。本の中にあった型紙をもとに実際につくってみたミニチュアのズボンや、登場するキャラクターの一覧などが展示されていました。どんな作品かというと「タイプの違った三人の女の子が登場し、自分の履いているズボンがいかに優れているかを自慢し合うというアクション・ラブコメ(?)」だそうです。

お裁縫がとてもお上手な高野先生ですが、お母様が和裁をされていたそうで、子どもの頃からお手伝いされていたのでしょう。

このペーパークラフトは展示室の下の談話室にあります。この談話室にはフェリシモから出ていた赤木かん子さんの絵本「火打ち箱」が紙芝居になっておかれていました。この紙芝居の中のペーパークラフトは高野先生がつくられたものです。

1階のお部屋に「昭和の暮らし」が再現されています。お台所やお茶の間をじっくり見た後、別の階段から2階のお部屋にあがります。ここでは企画展「楽しき哀しき昭和の子ども」が開催され、こちらの「山口さんちの子どもの部屋」も高野先生がつくられたものだそうです。

高野先生は現在大田区にお住まいだそうで、この「昭和の暮らし博物館」のお近くのようです。昨年もこの博物館でワークショップを開かれました。今回も期間中にワークショップが2回、トークショーが1回開催されます。

高野文子てぬぐい帰りがけに受付の中はショップになっているので立ち寄って手ぬぐいを購入しました。蔵だったような風情の建物でした。

会期:2017年10月6日(金)~12月24日(日)10:00~17:00 ※開館日は金・土・日・祝日のみ
会場:昭和のくらし博物館 東京都大田区南久が原2-26-19
入館料:大人500円/小学生~高校生300円

イベント(すべて受付終了)
◆トークイベント
10月21日(土)13:00~15:00「50年前 わたしのこども時代」高野文子さん×里村洋子さん(昭和のくらし博物館研究会員・新潟県在住)会場:鵜の木特別出張所/定員:100名/参加費: 1,000円(入館料込み)
◆ワークショップ―高野さんと昭和の手仕事をしよう!
10月29日(日)13:00~17:00「キモノ解きのつどい」
12月2日(土)10:30-14:30「障子張りと障子の切り紙づくり」

昭和のくらし博物館 サイトTwitterfacebookページ

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2010

冨貴美智子「猫飼っていい?」と高野文子「るきさん」

るきさん(注:こちらにその後を書きました

『Kiss』No.5 2010年2月25日発売号に掲載された冨貴美智子(ふけ・みちこ)「猫飼っていい?」という作品が高野文子の「るきさん」にそっくりな点があることは、読んですぐに気づいた。その日のうちに「冨貴美智子」をGoogleで検索してみたが、『Kiss』の書誌情報以外は1件もひっかからない。その後も気にはなっていたが忘れていて、昨日ふとまた名前で検索したところ、2chととあるブログがひっかかった。やはり、そうだよね。

在宅で仕事をしている女性ののんびりとした日常を描いているという設定が「るき」さんと同じだけではない。絵や話の流れもかなり似ている。

まずは扉絵。お店の前で主人公が歩いている図はほぼ「るきさん」の表紙絵と同じである。

第一話、瞳子さんが自宅で仕事をしているところ、仕事以外のことをしているところ、そして月末にお給料をもらいにいくところまで、流れはほぼ一致している。

第二話、おともだちのてんちゃんの登場したポーズ、「るきさん」のお友達のえっちゃんが登場したときのポーズと一緒。えっちゃんとめがねの丸い顔はほぼ同じキャラクター。

というように、明らかな模倣が見られる。

この作品、第20回Kissマンガ大賞(ショート部門)佳作だそうで、そのときの受賞の言葉が2chに転載されていたので、そのまま引用する。

第20回 kissマンガ大賞結果発表
ショート部門 佳作 賞金50万円
『猫 飼っていい?』(4px5本 6px1本)
萩野ふみこ 新潟県 25歳

審査員コメント:伊藤理佐氏

デビューおめでとうございます。パチパチパチ。
瞳子さんの小さいけど、地味だけど、きちんとした暮らし、楽しいです。
4コマにぴったりな素敵な主役だと思います。
読んでいてホッとします。
すこーしだけ、ほんと少しだけ残念なのは萩野さんが好きな(目指している?)
漫画家さんがわかってしまうこと、かな。
でも他の漫画家さんも、もちろんわたしも誰かの子供!
色んな漫画家さんのミックスの子供なのです。
これから大事なのはとにかくいっぱい描くことだと思います。
頑張ってください!

Kiss 2009年12/10号(23号)より

このように伊藤理佐氏が受賞時に指摘しているので、編集が知らないわけはない。そして名前が受賞時の「萩野ふみこ」から掲載時には「冨貴美智子」に変えられているのだ。編集側はもちろん気づいていて、掲載している。そして『Kissプラス』で7月号から連載が決まっているのだそうだ。

さて、ここで高野文子先生についてだが、私はかなりライトな高野ファンである。高野先生が萩尾先生をとてもリスペクトしているので、という理由で読み始め、一応全作品(といっても寡作な方なので、少なめだが)拝読した。

すごい。画力、構成力、物語も、その奥深さも、すべてが圧倒的にすごい。これだけ高い水準の作品を描いていればそりゃ寡作にもなる。どれほど高く評価されている作家かは、様々な文献でもわかった。絵の力は「おともだち」で、物語としては「ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事」で、「奥村さんのお茄子」なんか、もう難しくて頭が白くなってしまった。まさに孤高の天才だと思う。

そんな中で、例えば「東京コロボックル」や「るきさん」は比較的誰にでも受け入れられる作品だろうし、「黄色い本」なんかは、ちょっと文学部出身の友人になんかに勧めたら必ず飛びついてくれる作品だ。

だが、「るきさん」について高野先生本人があまり気に入っていないという話がある。本当なら、こんなにいい作品なのになと残念に思う一方、ちょっと毛色が違うからなぁと納得もする。バブル期の「Hanako」にこんな作品が載っていたとは、ものすごく浮いていたと思う。でも、そんなことが出来てしまうのも、高野文子だからと言えるだろう。

あらためて言うが、「るきさん」は在宅で医療事務をしながら、ゆったりマイペースで暮らす若い女性のお話だ。えっちゃんという友達もちゃんといるし、結構いろいろなところに出かけて楽しく過ごしている。私はすごく好きな作品だ。読んでいて、心からほっとする。

冨貴美智子の「猫飼っていい?」を読んだとき、「盗作か!?」という怒りより前に「この続きを読みたい」と思ったのは事実だ。今この時代に「るきさん」のような人の話が読みたい。きっとどんな立場の人でも、その物事にとらわれてなさかげんに「そうか、なんでもいいじゃん」というリラックスした気になるのではないかと思う。「週末、森で」も自宅で仕事をしながらのんびり生きる人の話だった。少々説教くさいのが玉に瑕だが、これがウケたのだから、「猫飼ってもいい?」もいいんじゃないかと、編集者は考えたのかもしれない。

「猫飼っていい?」は、高野作品に対し、あまりにもリスペクトが強くて、盗作と言われても仕方がないことになってしまっているのだろう。きちんと別の設定も考えてあるようだし、もったいない。オリジナリティを強め、模倣している部分を弱めて、続きを描いてくれないかなと思う。正直「模倣」というにはひどすぎる。アマチュアならともかく、プロとしてはこのままではやっていけないだろう。方向性は悪くないが、やり方が最悪だった。だからプロの漫画家としての力量がどうなのか、まだこちらには見えてこない。

尚、魚喃キリコの「ハルチン」も「るきさん」をリスペクトして産まれた作品だそうだ。色遣いや雰囲気、女性二人が出てくるあたりは近いが、内容は違う。リスペクトするのなら、これくらいのクオリティがないと世に出てはいけないと思う。

これから、この人はどうなるんだろうな。批判も多いと思うし。でもいいものも持ってると思うので、注目していこうと思う。