タグ「益田ミリ」 の検索結果(1/1)

03/22

2013

すーちゃんの恋/益田ミリ

すーちゃんの恋前作「どうしても嫌いな人」に比べると「すーちゃん」や「結婚しなくていいですか」の頃に戻ったような「すーちゃん」シリーズ第4弾。仕事に前向きなすーちゃんが帰って来たからそう感じるのだろう。本書では、すーちゃんはカフェを辞めて、保育園の給食をつくる仕事をしている。子供たちの喜ぶようにと食事を工夫し、自宅で試作品をつくったりする、そんなすーちゃんが戻って来た。「おおきなかぶ」「どろんこハリー」といった絵本の定番とからめているところもいい。

偏食のある子供は甘やかされているからなどという単純なものではないことに気付く。子供にはそれぞれのこだわりがあるもので、問題のある状況を自分なりに少しずつ調整していくものだ。すーちゃんの仕事柄、子供はお客さんだから、そういったことを理解していくことは重要なことだ。

子供の"それぞれ"を尊重するのなら、何故大人の"それぞれ"を尊重できないのか、と言いたいのかもしれない。「子供を産む人生、産まない人生」と帯にあるが、本の中では「産まない人生」のいつまでたっても「このままでいいのか?」という感じ、「産む人生」の「なんとなく取り残されている」感じ、その両方を描いている。このテーマを描くとなると、産もうが産まなかろうが、それぞれでいいのにという方向へもって行くよりほかないのだが、それぞれに説得力をもたせられているかどうかは、この段階では判断しかねる。

すーちゃんの"恋"の方は、34と37歳の恋愛なんて、プライドもあるし、意外とお互い臆病になりがちなのかもしれない。いろいろと考えながらのメールのやりとりなど、"こんな感じなのかもね"と思えるように出来ている。

幻冬舎 2012年11月10日 ISBN978-4-344-02273-7

03/21

2013

泣き虫チエ子さん/益田ミリ

泣き虫チエ子さん 1泣き虫チエ子さん 2

結婚10年以上を経過した夫婦二人の日常を描いた作品。ブームにのりやすい妻とあえてそれにのってあげる夫、バレンタインのチョコを夫にあげても自分で食べる気満々の妻、子供の頃の話をする二人、物を捨てるのが苦手な夫(or妻)と物を捨てるのに躊躇のない妻(or夫)という組み合わせ、メニューを決められない夫(or妻)と決断力のある妻(or夫)という組み合わせ。「そうそう、あるある」という感じのする二人の日常が繰り広げられている...と思う面もあるが、それは1/3くらいだ。私にとっては残り2/3は違和感ばかり。

こんな書評があった。

【オトナ女子コミック部】誰かと一緒の毎日はこんなにも楽しい『泣き虫チエ子さん』(独女通信)

「誰かと一緒に暮らすことで人生が豊かになる」...(略)...『泣き虫チエ子さん』は、その豊かさを、さらりと気負いなくスケッチした愛の讃歌なのです。

とても良い書評だと思う。けれど作品自体にはすごく違和感を覚えてしまう。"誰かと一緒に暮らす豊かさ"を多くの人に共感してもらえるよう表現しようとしたせいなのかもしれないが、"誰かと一緒に暮らす豊かさ"はもっと面白く楽しいものではないか。それを意図的に"日常のささやかな楽しみ"に求めてしまったが故に、逆に"家庭というものにあるべき何かが欠落していることによって、その欠落感を埋めるためにつくり出した豊かさ"といった作為を感じてしまう。

私の友人には夫婦二人暮らしの人が多い。おそらく仕事の出来る、仕事の好きな女性が多いからだろう。仕事をもったまま育児をしている人もいるが、やはり仕事への集中度が高いため、子供がいない方が望ましいと判断した人の方が多い。結婚して10年以上の人たちがほとんどだが、みんなとても仲が良い。もちろん、少しの愚痴は言っているが、むしろそれも笑い話になるような内容。女性に経済力があり、男性に家事力があることが多く、もし仲が悪くなったらあっさり別れることが出来る。だからこそ結婚し続けているということは、仲が良いに決まっている。もちろん意識してそうあろうと努力している面もあるだろうけれど、自然と仲の良いままの人たちが多いのではないかと感じている。


彼等にはたいてい共通の趣味がある。それは結婚前からあるものと、結婚後に調整しながらつくったものとがある。お酒が好きで、二人とも飲んで喋っていれば楽しいという人たち。スキーやテニスやゴルフといった共通のスポーツを好んだり、海外の手間暇のかかるクルマをいじるのが好きな人たち。海外旅行好き、国内旅行好き、映画好き、ゲーム好き。オットはアニメでツマはマンガで二人ともオタク等々。夫婦二人で出来ることはたくさんあるし、楽しんでいることが多い。この作品に登場する夫婦は国内旅行に行ったり、外食したりはあるけれど回数が少ないし、何より二人が淡々と仲良く暮らしているが、すごく楽しそうにしている場面が少ないことに違和感を覚える。

また、少なくとも30代40代の夫婦が「ぬいぐるみに言いつける」とか「ときどき二人でトランプをする」というのはちょっと考えにくい。その年代で待ち合わせて二人スーパーで買い物が出来るほど仕事に余裕のある人もあまりいないし、時間があってもそんな非効率なことをする人はいない。片方で動けば良いのだから。最近ではペット可マンションも多いし、それほど忙しい仕事でないのなら、ペットを買っている人もいるだろう。もっと言うなら、二人っきりで住んでいるのにこんなに頻繁にお互いの名前を呼んだりするものなのか?

自分にとって物語が"リアルである"とはどんなことだろうとよく考える。"現実的"という言葉通りの意味なのだとしたら、SFやファンタジーでは感じられないはずだが、そんなことはない。SFやファンタジーでも充分"リアル"を感じる。ひょっとして登場人物の心理的なものかもしれない。キャラクターの設定かもしれない。煎じ詰めれば総合的な"完成度"なのかもしれない。

この作品があまりにも"リアルではない""無理に仲良くしようとしているように見えて、かえって切ない"と感じてしまうのは、私だけなのか、そう感じる人は他にはいないのだろうか?若い人たち、例えば20代の独身女性向けに"夫婦二人でもこんなふうにほんわかと暮らしていけるんだ、いいかも"と思わせるために作り上げた夫婦像に過ぎないと思うのだが、どうだろうか?そして完成度が低いが故に、上手に共感を呼び起こせる部分と、どうも作為的な部分とに分かれてしまっているように見える。

単に自分は"歯ブラシがくしゃくしゃなのを見て結婚を決意する"みたいな話が嫌いなだけなのかもしれない。"愛人の髪についたラーメンの汁の小さな球を見て別れを決意する"という片岡義男的な「だからどうした」話が昔から嫌いだ。それはリアルかリアルでないかということではなく、そんなミニマムな話に対して共感を強要されても、おしつけがましいだけだと感じるせいだろうと思う。そのおしつけがましさがところどころ顔を出す。計算高いが、計算し尽くされていないからだろう。

集英社
1巻:2011年12月25日 ISBN978-4-782422-3
2巻:2013年2月28日 ISBN978-4-892489-6

09/21

2010

どうしても嫌いな人/益田ミリ

どうしても嫌いな人新刊で出てすぐ買ってすぐ読んで、その後忘れていたのだけど、結構話題になっていたようだ。で、「すーちゃんの出した結論が肩すかし」と言う人が意外といて、それならばと、少しだけ書き残しておこうと思った。ネタバレになります。

そもそも「すーちゃん」シリーズは「バリキャリではないけど、仕事を頑張っている人がいるよ」というのがメッセージなんだと思う。すーちゃんはほんわかして好きだけど、個人的にはむしろ毎回出てくるサブキャラの結婚への迷走と落とし前の付け方がおもしろいなと感じている。

今回、「どうしても嫌いな人」ですーちゃんが出した結論が話題になっているのだが、あれは「キツければ無理せず逃げ出した方がいいこともあるんだよ」という暖かいメッセージだと思う。このお話は最後のお母さんの台詞が決め手なのだけど「一番大切なものはあなた自身です」という方向へ視点を動かしてみなよという思いが込められていて、やさしい物語なのだ。最近不況で仕事がないせいもあり、人間関係に苦しんでも無理をして頑張って心を病んでしまう人が多いので、作者のメッセージは実は正しいと思う。

ただ、自分としてはこうはならないだろうなと思うので、その理由を。

私にとっては仕事場で「どうしても嫌いな人」は「仕事が出来ない人」だけ。だから多分この話の根本的なところがわからないんだろうと思う。そもそも「人の悪口ばっかり言ってるから嫌い」なんて言われてもまったく共感がもてない。仕事のやり方が汚いとか、そういうのならまだわかるのだが...。「嫌いな人の良いところを探してもダメだ」とかいう台詞もあるが、なにがダメなんだろう?どうして「嫌いにならないようにしよう」っていうマインドコントロール出来ないんだろうな。

で、この話、例の嫌いな人が仕事が出来る人かどうかの観点が抜けている。仕事が出来る人だったらもうその段階で私にとっては「嫌いな人」ではない。仕事場で嫌いなのは「仕事が出来ない人」であって「仕事が出来ないけどいい人」なんていうのは意味がない。どんなイヤな奴でも戦力になればそれでいいし、どんな意地悪な人でも自分より仕事が出来るのなら自分より上に立ってその部署なり会社を引っ張って行って欲しい。そういうものではないかなと思う。

すーちゃんの嫌いな部下の彼女は最初からすーちゃんのポジションを狙っているのだが、最初そうは見せていない。単に悪口ばかり言っているイヤな子、くらいな感じで出ている。アルバイトの子を浸食していくことで次第に本心が明らかになる。単純なポジション争いだし、小さな権力闘争だ。すーちゃんは「社長の親戚」というポイントを持つ相手に、単に負けただけ。

私だったら最初から相手が上を狙っているかどうかを見極め、早い段階で彼女を推挙して自分を降格させてもらうだろうなと思う。異動は簡単にはできないだろうけれど、コストがかからず、社長の親戚を立てることが出来るのだから、上は文句は言うまい。

相手が仕事が出来る人ならとっとともっと上にあがってもらって今後自分をよしなにしてもらえるし、仕事が出来ない人だったら明確かつ大きな失敗をしてもらってとっとと失脚してもらえる、あるいは自分でその職場がイヤになって逃げ出してもらえる。

もちろん一種の賭けではあるが、相手の狙いを見極め、うまく動かしたら自分に最終的にリターンしてくるメリットは大きいと思う。当然相手にとってもメリットがあるように最初は見せないとダメなんだけど。もちろんデメリットの方が大きくて、結局は会社を去らなければならない可能性もある。だから賭けなんだけれど。とにかく、自分が嫌いになれば相手も嫌いになるということを頭におけば、力のある人に嫌われたくはないから、こちらから簡単に嫌いにはならない、というかなれない。怖くて。

私の言うことは同意してくれる人はあまりいないだろうが、仕事場の人間関係なんていうのはこれくらドライでないとと思ってしまうかな。単純に感情を持ち込まないようにすればいいのだけどね。なので私の場合相手が会社を辞めて、あるいは自分が辞めて初めて「あー私はあの人がこんなにも嫌いだったんだ」と気付くことが多い。

というわけで、全然共感は出来ないのだが、「共感出来ない」ってtwitterで流したら、結構つっこまれたので、ああ、いろいろな人のいろいろな感情を動かす本なんだなぁと思った。その点でこの作品はすごくうまいと思うし、成功だと思う。益田ミリっていう人は、本当に頭のいい人だな。絶対友達になりたくないけど。

11/04

2009

週末、森で/益田ミリ

週末、森で益田ミリももう40歳か。この人も立派なアラフォーの星になってる。たぶん私はこの人の漫画作品の方は全部読んでると思う。エッセイも半分くらいは読んでる気がする。確かに「すーちゃん」2冊は衝撃的だった。だからこれも読んでみたんだけど...

自然の様々な様相を語った言葉から人生を導く...。それってなんだかとってもオヤジくさくないか?。何でも人生を語ってしまうのは、一種の教条主義というか、理屈抜きで嫌い。だからそこはやはりどうしても、説教くさいなとかうざったいなと感じてしまう。作者の「どうよ、この台詞、ちょっとよくなくない?」みたいなのが押しつけがましい。

それよりもっと気になるのが、マユミちゃんとせっちゃんという35歳独身OLが悩んでいる仕事の人間関係。35歳にもなって、こんなことで悩んでいるのは、ちょっとどうかと思う。経理の人が締め切り間際に駆け込んできた伝票に文句言うなんて、10年以上経理一筋でやって来て、普通はもう諦めてる頃なんじゃないのかな?この人、結局ずっとヒラなのって、やっぱり仕事できないんじゃないの?あるいは大きな会社でいい待遇だから、そういう立場から抜けられないんじゃないの?とかつっこみどころ満載。でかい声の先輩にうるさいって言えないなんて、25歳まででしょ、そんなこと言ってられるの。いい人だろうが何だろうが、イヤミの一つ二つ言えなくて、どうするよ?

20代の子がこれを読んだらがっかりすると思う。10年経っても同じことで悩んでいるのかぁ...イタイなぁって思うでしょう。どうだろう?みんながみんな、そんなことないんじゃないのかな。いろいろ悩んではいるけど、こんなくだらない人間関係じゃなくて、もっと仕事の中身とかで悩んでると思うけどな。仕事のできる人なら、別のステージに行ってるはず。それとも普通のOLさんは35歳になっても、やっぱりこんなもんなのかな。だから「すーちゃん」なんかに比べると、「リアル」のレベルが低すぎる。少なくとも「すーちゃん」は店長さんだった。若い子の指導もうまかった。

そこがこの物語のコアな部分になっているのに変な話なんだが、実はそれ以外は楽しく読めた。

畑なんか面倒だから自分で作ったりしない。森の近くではなくて駅の近くに住む。翻訳の仕事に拘泥せず、自分ができることを何でもやる。そういう早川さんはいいと思う。早川さんみたいな友達がいたら、絶対引っ越さないで、と私も言う。カヤックもいいなと思うし。

それと、友達二人が宿泊代がわりに持ってくる手土産がいい。高くはないけれど、ちょっと気が利いている。

「つばめグリル」の「ハンバーグ弁当」
「サイゴン」「揚げ春巻き」
「千疋屋」の「フルーツサンド」
「小川軒」の「レイズン・ウィッチ」
「デメル」「バンブー」
「ちもと」の「八雲もち」
日本橋「日山」のすきやき用和牛肉
「うさぎや」「どらやき」

すごい銘菓・名品揃いというわけではないが、いいとこついてる。半分くらいはお取り寄せできないから、本当に手土産で持って行かないと食べられない。私はデメルはバンブーよりオレンジピールだな、とか、私の大好きな八雲もちを知ってるなんて、さすがだなとか。そんなところがツボだった。

「35歳で独身で」よりはリアルの点では少しマシ?そう言えば、「何にでも人生を語るな!おまえはオヤジか?」と言ったのは秋月りすだったっけ。リアルでないなら、あれくらいファンタジックにしちゃった方がかえっていいかもしれない。