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08/22

2014

宝石の国 3/市川春子

宝石の国 3双晶アメシスト(硬度7)のエイティー・フォーとサーティー・スリーと戦いに赴いたフォスだったが、ようやく得た自慢の武器「足」を生かせるチャンスを生かせずに終わる。次にみんなが眠る冬を担当するアンタークチサイト(硬度3)とともに戦うが、これもまた...。

クオーツアゲート(めのう)がくっついたおかげでフォスの足がカラフルになっている。でもその足を生かせないフォス。主人公がどんどん強くなっていくのが少年漫画の王道だとしたら、フォスは仲間を、先生を助けたいのに、全然強くならなくて。仲間が壊れたり、身代わりとなって失ってしまったり、なんだかかわいそうな気になってきた。

アンタークチサイトは別名「南極石」。いろいろな色の宝石が出てきましたが、白って新しい。海に行った「肉」、月に行った「魂」、そして陸にあがった「骨」であるフォスたち。新型の月人はなんだかハードで、先生の出る場面が増えてきた、3巻でした。

宝石の国3

08/04

2013

宝石の国 第1巻/市川春子

宝石の国 第1巻/市川春子デビュー作がかなり話題になり短篇をこつこつとあげていたのに、ここにきて連載開始。デビュー前に作者が自作サイトにアップしていた作品がベースになっているらしい。残念ながら私は未見。以下は感想ではなく、作品を読むための自分用のメモです。

宝石たちが自分たちを宝飾品にしようと企む月からの狩人に抗して戦う物語。

リーダーである金剛先生を含め総勢28名が原則として2人1組となり、それぞれ得意なもので役割を分担している。見張り、戦闘、医務、戦略計画、服飾織物、意匠工芸、武器制作などなど...。
宝石の国1目次


フォス(フォスフォフィライト)薄荷色、薄緑色硬度三半得意分野なし
モルガ(モルガナイト)薄ピンク硬度七~七半見張り及び戦闘
ゴーシェ(ゴシェナイト)無色、シルバー硬度七~七半見張り及び戦闘
ヘリオ(ヘリオドール)黄色、ゴールド硬度七~七半
ルチル(ルチルクォーツ)茶色(金紅石)硬度六~六半医療担当
シンシャ(辰砂)赤色、紅色硬度二~二半夜の見張り
ベニト(ベニト石)青色、紫色硬度六~六半 
ジュード(ジェダイト、翡翠)淡緑色、緑色硬度七 
ダイヤ(ダイヤモンド)虹色硬度十戦闘
ボルツ(ブラックダイヤモンド)硬度十戦闘
ユーク(ユークレース)青色(左)硬度七~七半 

※ボルツは多結晶ダイヤモンド。ダイヤモンドの微細な結晶が緻密に集積した鉱物の変種。
この星は6度流星が訪れ 6度欠けて 6組の月を産み 痩せ衰え 陸がひとつの浜辺しかなくなったとき
すべての生物は海へ逃げ 貧しい浜辺には不毛な環境に適した生物が現れた

月がまだひとつだった頃繁栄した生物のうち逃げ遅れ海に沈んだ者が 海底に棲まう微少な生物に食われ無機物に生まれ変わり 長い時をかけ規則的に配列し結晶となり 再び浜辺に打ち上げられた
それが我々である

宝石たちの中には微生物が内包物として閉じこめられて、光を食べ物としその微生物を生かしているようだ。そのため、宝石が壊れても、その微生物がある程度集まりさえすれば傷をつないで生き返らせることが出来る。溶けてしまえばその部分は使い物にならず削るしかないため、完璧とは言い難いがほぼ不死である。そして、生命維持のための食事が必要ないので、光にあたっていれば良いだけ。生殖もないために性別というものもない。だが、他者を思う感情は強くもっていて、あまり役に立たないフォスを救おうとみんなで力を合わせたり、夜に追いやられているシンシャに対してのフォスの強い思いがあったりと、友情や恋愛感情に近い感情は展開されている。

薄荷色の美しいフォスは硬度も高くなく、得意分野もなく、皆の役に立っていないのに、その美しさ故に月人に狙われることが多い。金剛は"博物誌の編纂"という仕事を命じるが、みんなと同じように戦いたいフォスはさぼり気味。そんな中で知り合ったシンシャが自分同様はぐれ者であることを知り、何かとちょっかいを出すようになるが、シンシャの孤独は深い。

光を栄養とする彼らにとって夜は活動が鈍り危険な時間帯。シンシャは自分の中から無尽蔵に出る銀色の毒液で夜のかすかな光を集めることができ、それをもって活動することが可能だ。彼の毒に触れてしまうと、その部分は光が通らなくなり、削り捨てるしかない。そこでシンシャは自ら他の宝石たちから離れている。強い才気と戦闘力をもちながら、何もかもダメにしてしまうシンシャは、月にさらわれたいという願望を持っている。

フォスは月人が残していった巨大カタツムリのような謎の生物に食べられてしまう。仲間の宝石たちが急所を見つけて生物を殻から取り出し潮水につけると小さく縮んでしまうが、殻は空っぽでフォスは見あたらない。殻をもつ生物は、石を食べ殻を修復したり強化したりする習性がある。フォスの身体は殻の薄荷色の部分にある。薄荷色のところを集めて修復することができた。つまり、かたつむりはフォスではない。

では、このかたつむりは何者か、というところで第1巻は終わり。

宝石の美しさと脆さと強さを擬人化し、ドラマ化したSF作品。「鉱物」だけでなく著者お得意の「海洋生物」も両方登場するというお得な作品。本来なら大判で全てとは言わないまでも、できるだけカラーで読みたいところだ。何故著者はこの作品を描こうと思ったのかという問いへの回答がこちら。

仏教系の高校だったのですが、授業で読んだお経に「浄土は道から建物から池から樹木から全てが宝石で厳かに飾られている」というような記述があったんです。極楽だけど宝石は装飾品扱いのままでやるせないなあ、と当時思ったことが元になっています。(『cocohana』2013年1月号)


書誌事項:講談社 2013.7.23 ISBN978-4-06-387906-3 (アフタヌーンKC)
初出:「アフタヌーン」2012年12月号~2013年5月号

10/08

2011

25時のバカンス―市川春子作品集II

25時のバカンス―市川春子作品集II講談社 2011.9.23 ISBN98-4-06-310780-7

私には市川春子を語る言葉がない。「うわ、すごい」「きれいだ」「哀しい」「面白い」「なんだこれ?」という感嘆符ばかりが繰り返される。

だから『ダ・ヴィンチ』2011年11月号に掲載されたインタビューを読んで、自分が気になったことの答を教えてくれているので、そこをまとめてみたいと思う。

1) 人間ではない生き物への愛情:異形のもの好き→これは他人との距離をわかりやすく表現するために非人間的なものを描いている(インタビューより)

2) 兄弟姉妹へのこだわり(「25時のバカンス」は姉と弟、「パンドラ」は兄と妹、「月の葬式」は兄弟(本当ではないが)。→これは「近くて遠い感じが一番出しやすい」から。微妙な距離感を表現するのに使っている(作中「兄弟って近いようで遠いな」と甲太郎に言わせている)。

3) 狂おしいほどの愛→とにかく「愛」ですよね。みんな。「25時のバカンス」の乙女は弟のために研究を続けてついには貝になってしまう。よみちは間を救うために2年間猛勉強して帰って来る。ロロはナナたちを助けた宇宙生物(ナナたち込みで)とともに兄の命令に背いていく。

つまり、他人とは自分と違う生き物で、だからどうしても距離ができる。近いと思っていても遠かったりする。そんな他人を狂おしく愛して、命を投げ出す人間って美しい(orおかしいor興味深い)。

「ハッ」と息をのむようなシーンをかならず作っている。見開きの美しいシーンに息をのむ。「パンドラ」のダンス・シーン、「月の葬式」の月が落ちてくるシーン。「25時のバカンス」は見開きではないが、乙女が海に落ちていくシーン。その一方で「25時のバカンス」「月の葬式」には「ギョッ」とするシーンがある。乙女が顔をあけるシーンと間がセーターを脱ぐシーン。

ちょっとすぐにわからないSFっぽいところが、みんなの言うように萩尾先生っぽいのかなぁ。あまり私はそう思わないんだけど。最初の頃よく言われた高野文子っぽさは、2冊目でかなり払拭されている気がする。天才だなぁと思うのだけど、ちょっと以前より作品発表の頻度があがってきた。嬉しい一方、少し不安も。グラフィックデザイナーの仕事も続けているんだと思うんだけど、どうなんだろう?

09/10

2010

ゆるふわSF特集

『FRaU』2010年9月号の本とマンガ特集に「女子もハマれるネオSFマンガ」という門倉紫麻さんの選んだマンガのページがありました。この最初のものが「山へ行く」(萩尾望都)だったことや、ちらちらと知っているものもあったので、全部読んでみようかと、思って読んでみました。

山へ行く 萩尾望都

「山へ行く」萩尾望都 小学館

ハードなSFのイメージの強い萩尾先生ですが、こちらは短編集ですし、日常の中のなんとなく違うなという感じの作品群なので、とっつきやすいです。家族の話が多かったりもします。名作「柳の木」収録。鳥肌が立ちます。『flowers』で連載中。

小煌女 海野つなみ

「小煌女」1~2巻 海野つなみ 講談社

当初はクラシックな感じのSF学園ものだったのが、突然の大逆転が起こってあれよあれよという間に話が拡大していきます。絵は好きではないのですが、意外におもしろいです。『KISS』で連載中。

世界の合言葉は水 安堂維子里

「世界の合言葉は水」安堂維子里 徳間書店

『コミックリュウ』に発表された短篇を集めたもので、私は初見でした。水がテーマなので海や雨が多く出てきます。ゆったり、ほんわりとした優しさに包まれた不思議なSFです。どれも良いのですが、特に「ぎゅう」が気に入りました。こういう感覚って、言葉で説明できないのですが「なんとなく本当はこうだったらおもしろい」と思えるツボなのです。これはオススメです。

テルマエ・ロマエ ヤマザキマリ

「テルマエ・ロマエ」1巻~ ヤマザキマリ エンターブレイン
昨年大ブームを起こした作品です。「マンガ大賞2010大賞」「手塚治虫文化賞短篇賞」を受賞。以前イタリア家族漫画を読んだことがありましたが、最初はあれを書いた人と同一人物とは思いませんでした。古代ローマに現代日本のお風呂を導入していく話なのですが、これを「上から目線」という人の考え方はよくわかりません。ルシウスが「平たい顔族の風呂はここがすごい!」と思うところでこちらも再発見があり、そして様々な機器類を勘違いしながらもその効果をきちんと読み取り、自分なりに作り直していくところがおもしろい。比較文化論とかいうおおげさなものではありませんが、ルシウスの柔らかい頭に学ぶところは多いです。『コミックビーム』連載中で、まもなく2巻が発売されます。

虫と歌 市川春子

「虫と歌」市川春子 講談社

すごい人が出てきたなと、最初は言葉が出ませんでした。初期の作品こそ高野文子を思いっきり意識した作風でしたが、徐々に離れて行って、今は完全に独自のスタイルを作っています。ネットの中でがっちり論評が出ているので、そちらを読んだ方だ良いです(ひとりで勝手にマンガ夜話webDICE マンガ漂流者(ドリフター))。『ユリイカ』2010年2月号に小特集が載っています。

『アフタヌーン』に1年に1作ずつ描いていったもので、もうデビューして5年です。この単行本の後はスピードアップしたのか、今年に入って2本すでに発表されています。シンプルで細い線、白と黒とグレーのシンプルな組み合わせ。本当にマンガってこれだけシンプルなものなのだなということが実感できる絵です。お話はとても不思議なSFなのに、徹底した家族愛。特に兄弟が繰り返し出てきます。最新作「25時のバカンス」では姉と弟になっていますが、兄と弟、兄と妹だったり、いずれも微妙な人間関係で、だからこそエロティック。それにしても「虫と歌」っていうのは、なかなか手に取りにくいタイトルだなと思ったりします。私、虫がダメなので。

ともだち100人できるかな

「友達100人できるかな」1~3巻 とよ田みのる 講談社
ごくたまに連載を読んでました。肩に力の入っていないものを読みたいときに、ちょうどいい感じのSF作品。子供時代に戻っているせいか、こちらものびのびとした気持ちになれるのが不思議です。『アフタヌーン』で連載中。

第七女子会彷徨

「第七女子会彷徨」1~2巻 つばな 徳間書店

初見。そもそもイマドキの普通の女子高生がこんなに天然でかわいいのかどうか、それすらわからない私に、これが日常生活の中での異世界なのかどうかもわかりません。しかし、どんな不思議なことが起きても、女子高生はきっとたくましく対応していくのだろうなと思えます。二人とも恋に無縁なため余計な雑音が入ってこなくて、純粋に不思議な世界を楽しめるところもポイントでした。尾崎翠の「第七官界彷徨」からタイトルはとられているようです。『コミックリュウ』で連載中。

初見の作品もありましたが、興味深い作品ばかりでした。やはり『コミックリュウ』や『コミックビーム』『アフタヌーン』といった普段少女マンガとは縁のないところでがんばっている人たちです。その中で王道少女マンガとして『flowers』『KISS』も健闘しているというところでしょうか。門倉さん、おもしろい作品を教えてくださって、ありがとうございました。