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06/15

2010

冨貴美智子「もじょぶ」

予告通り『Kiss Plus』(隔月刊)2010年7月号から冨貴美智子の連載が始まった。「冨貴美智子」のキーワードで検索すると、GoogleでもYahoo!でもこのページが一番上に出てしまうので、若干責任を感じて、続報をアップしておこうと思う。

6ページの短編が2本。今後も連作は継続するようだ。「もじょぶ」とは「文字JOB」で仏具メーカーの文字係が主人公。文字を書くのが仕事で、仏壇、香典等様々な場所に美しい楷書で文字を書いていく。28歳、独身女子が「漢字萌え」で仕事も私生活も漢字に捧げている様子が普通のOLの日常をベースに描かれている。悪くない。気になるのは、何故「文字JOB」か?ということ。この人は漢字が好きなだけで、平仮名は嫌い。文字じゃなくて「漢字JOB」じゃないか?語呂が悪いんだろうけど。

剽窃なんかしなくても、ちゃんとオリジナルのネタを持っている。「猫飼っていい?」にも主人公が文字を書いている姿がある。こういう仕事をしているか、身近にしている人がいたのだろう。絵もかわいいし、将来性を見込まれているのもわかる。

だが。

こんな滅多に更新しないようなブログで前回わざわざ取り上げたのは、他のブログでボロカス書かれていて、かわいそうだなという同情と、同時にこの剽窃っぷりが「あんまりだ」という怒りがやはりあったのだと思う。

剽窃した本人も悪いけど、佳作をあげて『Kiss』本誌に掲載してしまった編集はどうなのか。読者から盗作盗作言われてうんざりしていると思うが、「るきさん」を知らなかったのか、あるいは伊藤理佐氏の指摘を甘く見ていたのか、いずれにせよ、読者をなめている。受賞と掲載はせずに、この「もじょぶ」でデビューさせればよかっただけじゃないのか?と、この作品を読んで余計に思う。

今後の彼女のキャリアを考えると、剽窃を非難する記事がずっとネットには残ることになる。末次由紀の盗作問題だって、検索すれば一発だ。禊ぎは済んだみたいなことを言う人もいるし、「ちはやふる」の成功で忘れた人もいるかもしれない。でも、覚えている人は覚えてる。トレースの量の問題やそれまでのキャリアなど、冨貴美智子とは比較にならないけれど、「ちはやふる」レベルの作品を書かないとならないということかとも言える。

冨貴美智子も、この後もし大きく人気が出てもデビュー作が単行本に収録できないなどの後はひくだろうと思う。末次由紀の場合はキャリアも長かったため本人の責任は大きいが、見て見ぬふりをしていた編集に対する批判も出ていた。それより、この新人の方が編集の責任は大きいように思う。

私は一応今回だけはわざわざ『Kiss Plus』を購入して書くが、今後まで追いかけていくつもりはさすがにない(だいたい『Kiss』だって「のだめオペラ編」が載ってるときだけだし)。だが、漫画家として頑張って欲しいとは思う。

03/16

2010

冨貴美智子「猫飼っていい?」と高野文子「るきさん」

るきさん(注:こちらにその後を書きました

『Kiss』No.5 2010年2月25日発売号に掲載された冨貴美智子(ふけ・みちこ)「猫飼っていい?」という作品が高野文子の「るきさん」にそっくりな点があることは、読んですぐに気づいた。その日のうちに「冨貴美智子」をGoogleで検索してみたが、『Kiss』の書誌情報以外は1件もひっかからない。その後も気にはなっていたが忘れていて、昨日ふとまた名前で検索したところ、2chととあるブログがひっかかった。やはり、そうだよね。

在宅で仕事をしている女性ののんびりとした日常を描いているという設定が「るき」さんと同じだけではない。絵や話の流れもかなり似ている。

まずは扉絵。お店の前で主人公が歩いている図はほぼ「るきさん」の表紙絵と同じである。

第一話、瞳子さんが自宅で仕事をしているところ、仕事以外のことをしているところ、そして月末にお給料をもらいにいくところまで、流れはほぼ一致している。

第二話、おともだちのてんちゃんの登場したポーズ、「るきさん」のお友達のえっちゃんが登場したときのポーズと一緒。えっちゃんとめがねの丸い顔はほぼ同じキャラクター。

というように、明らかな模倣が見られる。

この作品、第20回Kissマンガ大賞(ショート部門)佳作だそうで、そのときの受賞の言葉が2chに転載されていたので、そのまま引用する。

第20回 kissマンガ大賞結果発表
ショート部門 佳作 賞金50万円
『猫 飼っていい?』(4px5本 6px1本)
萩野ふみこ 新潟県 25歳

審査員コメント:伊藤理佐氏

デビューおめでとうございます。パチパチパチ。
瞳子さんの小さいけど、地味だけど、きちんとした暮らし、楽しいです。
4コマにぴったりな素敵な主役だと思います。
読んでいてホッとします。
すこーしだけ、ほんと少しだけ残念なのは萩野さんが好きな(目指している?)
漫画家さんがわかってしまうこと、かな。
でも他の漫画家さんも、もちろんわたしも誰かの子供!
色んな漫画家さんのミックスの子供なのです。
これから大事なのはとにかくいっぱい描くことだと思います。
頑張ってください!

Kiss 2009年12/10号(23号)より

このように伊藤理佐氏が受賞時に指摘しているので、編集が知らないわけはない。そして名前が受賞時の「萩野ふみこ」から掲載時には「冨貴美智子」に変えられているのだ。編集側はもちろん気づいていて、掲載している。そして『Kissプラス』で7月号から連載が決まっているのだそうだ。

さて、ここで高野文子先生についてだが、私はかなりライトな高野ファンである。高野先生が萩尾先生をとてもリスペクトしているので、という理由で読み始め、一応全作品(といっても寡作な方なので、少なめだが)拝読した。

すごい。画力、構成力、物語も、その奥深さも、すべてが圧倒的にすごい。これだけ高い水準の作品を描いていればそりゃ寡作にもなる。どれほど高く評価されている作家かは、様々な文献でもわかった。絵の力は「おともだち」で、物語としては「ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事」で、「奥村さんのお茄子」なんか、もう難しくて頭が白くなってしまった。まさに孤高の天才だと思う。

そんな中で、例えば「東京コロボックル」や「るきさん」は比較的誰にでも受け入れられる作品だろうし、「黄色い本」なんかは、ちょっと文学部出身の友人になんかに勧めたら必ず飛びついてくれる作品だ。

だが、「るきさん」について高野先生本人があまり気に入っていないという話がある。本当なら、こんなにいい作品なのになと残念に思う一方、ちょっと毛色が違うからなぁと納得もする。バブル期の「Hanako」にこんな作品が載っていたとは、ものすごく浮いていたと思う。でも、そんなことが出来てしまうのも、高野文子だからと言えるだろう。

あらためて言うが、「るきさん」は在宅で医療事務をしながら、ゆったりマイペースで暮らす若い女性のお話だ。えっちゃんという友達もちゃんといるし、結構いろいろなところに出かけて楽しく過ごしている。私はすごく好きな作品だ。読んでいて、心からほっとする。

冨貴美智子の「猫飼っていい?」を読んだとき、「盗作か!?」という怒りより前に「この続きを読みたい」と思ったのは事実だ。今この時代に「るきさん」のような人の話が読みたい。きっとどんな立場の人でも、その物事にとらわれてなさかげんに「そうか、なんでもいいじゃん」というリラックスした気になるのではないかと思う。「週末、森で」も自宅で仕事をしながらのんびり生きる人の話だった。少々説教くさいのが玉に瑕だが、これがウケたのだから、「猫飼ってもいい?」もいいんじゃないかと、編集者は考えたのかもしれない。

「猫飼っていい?」は、高野作品に対し、あまりにもリスペクトが強くて、盗作と言われても仕方がないことになってしまっているのだろう。きちんと別の設定も考えてあるようだし、もったいない。オリジナリティを強め、模倣している部分を弱めて、続きを描いてくれないかなと思う。正直「模倣」というにはひどすぎる。アマチュアならともかく、プロとしてはこのままではやっていけないだろう。方向性は悪くないが、やり方が最悪だった。だからプロの漫画家としての力量がどうなのか、まだこちらには見えてこない。

尚、魚喃キリコの「ハルチン」も「るきさん」をリスペクトして産まれた作品だそうだ。色遣いや雰囲気、女性二人が出てくるあたりは近いが、内容は違う。リスペクトするのなら、これくらいのクオリティがないと世に出てはいけないと思う。

これから、この人はどうなるんだろうな。批判も多いと思うし。でもいいものも持ってると思うので、注目していこうと思う。