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2013年10月 2日

トリステッサ/ジャック・ケルアック

トリステッサ/ジャック・ケルアックケルアックの作品はちまちま読んでいたらいけない。一気に読まなければ。幸いこの本はあまり長くないので、集中すればすぐ読み終わる。あまり考えずに、リズムを楽しまなくてはならない、そう思っている。

ケルアックがメキシコ・シティで出会ったジャンキーな娼婦を聖女のように扱い、ロマンチックにプラトニックにあがめているが「愛している」の一言も言えない。自分の都合で帰国して、なかなか戻って来られないでいて、1年後にもうボロボロになったトリステッサに再会する、というお話。

実際にはプラトニックでも何でもなく、その辺は比較的最初の方に「自分の性欲の深さを云々」という記述がある。何の約束もしてやらない。何の言葉もあげない。ケルアックはどの土地でもいつでも身勝手な男で、同じ女として見ればそこに腹が立つもののが、人として見たら、その自由勝手さが好きだったりするのだ。

意外と印象的なのがこのトリステッサの部屋の乱雑さだ。土間なのか、ベッドの周囲、あるいは上に犬猫ならまだしも、鶏がうろうろしていたりする。ブニュエルの映画「忘れられた人々」に登場したメキシコの貧しい家の様子の影響を受けているのではないかと、解説で指摘されている。

自分はビートジェネレーションの他の作家を読まないのであまり「ビート」として好んでいるわけではないが、無視しているのでもない。ただ、彼の放浪の話を聞きたいだけだ。「どうしてそんなバカなことを?」「でもなんておもしろい」と。

まだ全部調査したわけではないが、ケルアックの作品をできれば再度執筆順に読み直したいと考えている。実際に体験した時期の順でもおもしろいだろうとは思う。

■書誌事項
著者:ジャック・ケルアック著,青山南訳
書誌事項:河出書房新社 2013.8.30 176p ISBN978-4-309-20628-8
原題:Tristessa, 1960 : Jack Kerouac

■目次
第1部 震えつつ、けがれずに
第2部 一年後......
解説(青山南)

河出書房新社「トリステッサ」

作品邦題原題執筆年出版年対象時期
海は我が兄弟The Sea is My Brother19422011 
Orpheus Emerged1944~452002 
そしてカバたちはタンクで茹で死に(バロウズとの共著)And the Hippos Were Boiled in Their Tank19452008 
町と都会The Town and the City1947~4819501935~46
路上On the Road1948~5119571946~51
ピックPic1951~691971
ジェラルドの幻想Visions of Gerard1951~5219631922~26
コーディの幻想Visions of Cody195219591946~52
ドクター・サックスDoctor Sax 195219591930~36
夢の本Book of Dreams1952~6019601952~60
地下街の人びとThe Subterraneans195319581953
マギー・キャシディMaggie Cassidy 195319591938~39
ダーマ書Some of the Dharma1954  
トリステッサTristessa195519601955~56
メキシコ・シティ・ブルース(poetry)Mexico City Blues19551959 
黄金永劫の書(poetry)The Script of the Golden Eternity19561960 
オールド・エンジェル・ミッドナイトOld Angel Midnight1956~591973 
荒涼天使たちDesolation Angels1956~6119651956~57
達磨行者たち/禅ヒッピー/ジェフィ・ライダー物語The Dharma Bums1957?19581955~56
孤独な旅人Lonesome Traveller,short story collection1960  
ランボーRimbaud1960  
ビッグ・サーの夏Big Sur196119621960
パリの悟りSatori in Paris196519661965
ドゥルーズの虚栄Vanity of Duluoz1966~6819681939~46

(確定情報ではありません。調査中)。

2013年9月15日

オン・ザ・ロード

オン・ザ・ロードジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」を初めて読んだのは20代前半だった。この装丁の文庫本の頃だ。その後もずっとケルアックの作品だけは読み続けている。バロウズやギンズバーグは代表的な作品だけしか読んでいないから、ビートに夢中というほど読んでいないが、ケルアックは好きだった。

その「オン・ザ・ロード」をウォーター・サレスが撮ったと聞いたとき、よく映画化出来たなとも思ったし、ウォーター・サレスだから出来たんだろうなとも思った。「モーターサイクルダイアリーズ」もロードショーで行ったし、それ以前に「チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記」を読んでいた。ロード・ムービー好きとしては、これは映画館に観に行かなくてはと思った。

当時の旅の風景が見られればいいくらいの気持ちで行ったが、その点については満足した。1950年代のアメリカの風景を現在のアメリカだけで撮影するのはやはり無理なのか、メキシコやカナダはともかくアルゼンチンやチリにまで撮影に行ったようだ。それとも「モーターサイクル・ダイアリーズ」で使ったところがよかったのかもしれない。

自分でも意外だったのが、ケルアックやニール・キャサディのイメージが頭の中で結構出来上がっていたこと。特にニール・キャサディはもっとワイルドでガタイがいい筈だ、と思って違和感が強かった。もっとすごい勢いで喋っていたし、放射する熱がすごいのだと思っていたから。考えてみたら、そもそも私がケルアックに向かったのは、ヒッピー・カルチャーから遡ってのことだから、ニール・キャサディのことはケン・キージーとメリー・プランクターズの珍道中を描いたトム・ウルフの「クール・クールLSD交感テスト」から入ることになる。もう少し年齢を重ねたニール・キャサディだが、本当に恐ろしいような運転をする、ひどくエネルギッシュな人物だったことがよくわかる本だ。だから2回出てきた踊るシーンはニール・キャサディのすさまじさが伝わってきて良かった。必要なシーンだったと思う。

アレン・ギンズバーグだけは実物より美少年で、ゲイっぽくてよかった。何と言ってもビゴ・モーテンセンのバロウズが私のイメージのバロウズにピッタリ過ぎるのがキャストについては一番納得した。キャロリン・キャサディはもう少しインテリで上品なイメージだが、メリールウは非常にセクシーかつコケティッシュでよかった。下のキャストの部分、実物の写真にリンクを貼った。肝心のケルアックについては、内向的な雰囲気が出ていたように思う。スティーブン・ブシェミがゲイのおじさんで少しだけ出ていたことに驚いた。

映画化にあたり、そもそも「何を撮ればこの作品が伝わるか」という点から厳選されたシーンばかりだったように思う。父親のお葬式から始めたのは初稿原稿からすると正しい。ニール・キャサディの父親を捜すシーンや二人で父親の話をするシーンはまずは「父からの脱却」というテーマを押さえる上で前提条件。母親とケベック・フランス語で話すシーン、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて―スワン家の方へ」を側においておく。ジャズのライブを入れたり、前述のダンス・シーンやマリファナのスタイル(当時は割って出すやり方だった)や煙草の吸い方や酒の瓶まで、一つ一つていねいに演出されているように見えた。

特に、ケルアックが四六時中メモをしているところや、有名な"タイプライターの用紙をつなげてジャズの演奏をしているように休まず打った"のシーンは特に重要だったと思う。旅のシーンだけでも充分満足したのに、


ケルアックというと、確かに旅には出るけど、帰るところはいつもお母さんのところなんだよね、自立してないね、と思うと若い頃はなんだか興ざめだったが、年齢を経るとなんだかそれも納得できる気がしてくるから不思議だ。ケルアックの作品は好きだが、作品からにじみ出るマザコン/マッチョのセットを思うと、評伝はちょっと読む気になれなかった。でも、ルーアン・ヘンダーソンの評伝「ガールズ・オン・ザ・ビート」やキャロリン・キャサディの「ハートビート」あたりは時間があれば読んでもいい気がしてきた。


公式サイト:http://www.ontheroad-movie.jp/
監督:ウォルター・サレス
製作:レベッカ・イェルダム/ロマン・コッポラ/ナタナエル・カルミッツ/シャルル・ジリベール
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ/ジェリー・レイダー/テッサ・ロス/アーパッド・ブッソン
原作:ジャック・ケルアック
出演:
サム・ライリー(サル・パラダイス→ジャック・ケルアック
ギャレット・ヘドランド(ディーン・モリアーティ/ニール・キャサディ
トム・スターリッジ(カーロ・マルクス/アレン・ギンズバーグ
ビゴ・モーテンセン(オールド・ブル・リー/ウィリアム・バロウズ
クリステン・スチュワート(メリールウ/ルアンヌ・ヘンダーソン
キルスティン・ダンスト(カミール/キャロリン・キャサディ
エイミー・アダムス(ジェーン/ジョーン・ヴォルマー
ダニー・モーガン(エド・ダンケル/アル・ヒンクル)
エリザベス・モス(ギャラテア・ダンケル/ヘレン・ヒンクル)
アリシー・ブラガ(テリー/ベア・フランコ

路上クール・クールLSD交感テスト