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2011年3月 4日

ラテンアメリカ十大小説

ラテンアメリカ十大小説こんな良い本を読んでからラテンアメリカ文学に入っていける読者は幸運だ。新書は新しい知識を得ようとするときに必要なもの。その道のプロが何の知識もない人に、ていねいに概略を教えるものだ。知らない人にものを説明するほど、難しいものはない。その道の専門家が平易な文章で素人に向けて書く。とてもレベルの高い仕事だ。私も筒井康隆の新書(多分「本の森の狩人」)でラテンアメリカ文学を知った。新書は新しい読者獲得のための大切な仕事だ。

巻末に主要作品リストが添えられていた。白状すると、コルタサルが半分くらい、その前のボルヘス、カルペンティエル、アストゥリアスは壊滅状態なんである。でも、ガボ以後は全部読んでる。あ、違った。フェンテスの「聖域」と「脱皮」はまだだった。積読のまま忘れていた。

ボルヘスは短編ばかりなので、手を出さなかっただけのこと。基本、自分は長編が好みなので。カルペンティエルとアストゥリアスは長編だから当然手を出して、途中で挫折してしまいました。すみません...。私にはちょっと口調が堅すぎたかなというか難解だったかな...。コルタサルは短編は何とか読んだが、「石蹴り遊び」は第三部でやはり挫折...。

本書を読むと自分が「ブーム」の後からしか手をつけていないのがわかる。自分はリョサが一番好きで、多分次くらいにガボが来るのだろうけど、本当に親しみを感じているのはマヌエル・プイグ。プイグの何が良いって、繊細で優しいところ。腐女子を名乗れるほどにはBLに手を出していないが、女性がゲイを好むのはある意味では当然だ。男性原理から離れた世界を親しく感じるのは不思議ではない。そのわりに自分は女性作家をほとんど読まない。あまりべったりされるのもイヤなんだろう。だからトーベ・ヤンソンとかガードルード・スタインが好きなのかもしれない。今気がついた。

カルロス・フエンテス「我らが大地」だけ邦訳が出ていない。企画としてはあるらしいが、スペイン語がたいへん難しいのだそうな。フェンテスは透明感があるというか、おどろおどろしくないというか、ガボやリョサほどの暑苦しくはないけど、決して読みづらくはない。もう少し読んでみた方が良い気がしている。ところでフエンテスなのかフェンテスなのか、表記が結構別れてるなぁ。ジョサ/リョサほどではないけれど。ドノソも好きだ。どろどろ妄想系とブルジョア系の差が激しくていい。

イサベル・アジェンデが「十大小説」に入っているのが若干疑問だが、「精霊たちの家」だけは確かに面白かった。「エヴァ・ルーナ」も悪くなかったし「パウラ」は別の意味で興味深い。しかし、それ以後が厳しかった。児童文学に走ったのは正解でしょう。やはりポスト・ブームと言えばこの人になってしまうのかな?ボラーニョとか...新書に載るほどの一般性はないのだろうか?

■書誌事項
著者:木村榮一著
書誌事項:岩波書店 2011.2.18 192p ISBN978-4-00-431296-3(岩波新書)

■目次
序──物語と想像力
1 ホルヘ・ルイス・ボルヘス『エル・アレフ』──記憶の人、書物の人
2 アレホ・カルペンティエル『失われた足跡』──魔術的な時間
3 ミゲル・アンヘル・アストゥリアス『大統領閣下』──インディオの神話と独裁者
4 フリオ・コルタサル『石蹴り』──夢と無意識
5 ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』──物語の力
6 カルロス・フエンテス『我らが大地』──断絶した歴史の上に
7 マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』──騎士道物語の継承者
8 ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』──妄想の闇
9 マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』──映画への夢
10 イサベル・アジェンデ『精霊たちの家』──ブームが過ぎた後に

★主な作品リスト
"邦訳のあるもののみ,原著の刊行年順に示す。複数回訳書が刊行きれている作品については、出来るだけ入手しやすいと思われる版を挙げた。"というリストが巻末にあったので参考のためデータ化しておく。出来るだけ入手しやすい版という点を一部修正。上下巻あるものは上巻にだけリンクを貼った。

■ホルヘ・ルイス・ボルヘス
「論議」牛島信明訳,国書刊行会,2000
「永遠の歴史」土岐恒二訳,ちくま学芸文庫,2001
「伝奇集」鼓直訳,岩波文庫,1993
「エル・アレフ」木村榮一訳,平凡社,2005
「続審問」中村健二訳,岩波文庫,2009
「創造者」鼓直訳,岩波文庫,2009
「砂の本」篠田ー士訳,集英社文庫,1995
「ボルヘス,オラル」木村榮一訳,水声社,1987

■アレホ・カルペンティエル
「エクエ・ヤンパ・オー」平田渡訳,関西大学出版部,2002
「この世の王国」木村榮一・平田渡訳,水声社 1992(元ではサンリオ文庫だが入手しやすいのはこちら)
「失われた足跡」牛島信明訳,集英社文庫,1994
「時との戦い」鼓直訳,国書刊行会,1977
「光の世紀」杉浦勉訳,書肆風の薔薇,1990
「春の祭典」柳原孝敦訳,国書刊行会,2001
「ハープと影」牛島信明訳,新潮社,1984

■ミゲル・アンヘル・アストゥリアス
「グアテマラ伝説集」牛島信明訳,岩波文庫,2009
「大統領閣下」内田吉彦訳,集英社,1990

■フリオ・コルタサル
「遊戯の終り」木村榮一訳,国書刊行会,1990
「秘密の武器」世界幻想文学大系30,木村榮一訳,国書刊行会,1981
「石蹴り遊び」上・下,土岐恒二訳,集英社文庫,1995
「すべての火は火」木村榮一訳,水声社,1993
「愛しのグレンダ」野谷文昭訳,岩波書店,2008
「通りすがりの男」木村榮一ほか訳,現代企画室,1992
「コルタサル短篇集 悪魔の誕・追い求める男 他八篇」木村榮一訳,岩波文庫,1992

■ガブリエル・ガルシア=マルケス
「百年の孤独」鼓直訳,新潮社,2006
「族長の秋」鼓直訳,新潮社,2007
「予告された殺人の記録」野谷文昭訳,新潮社,2008
「コレラの時代の愛」木村祭一訳,新潮社,2006
「迷宮の将軍」木村榮一訳,新潮社,2007
「生きて,語り伝える」旦敬介訳,新潮社,2009
「エレンデイラ」鼓直・木村榮一訳,ちくま文庫,1988

■カルロス・フエンテス
「フェンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇」木村榮一訳,岩波文庫,1995
「アルテミオ・クルスの死」木村榮一訳,新潮社,1985
「聖域」木村榮一訳,国書刊行会,1978
「脱皮」内田吉彦訳,集英社,1984
「遠い家族」堀内研二訳,現代企画室,1992
「老いぼれグリンゴ」世界文学金集II-08,安藤哲行訳,河出書房新社,2009
「セルバンテスまたは読みの批判」牛島信明訳,水戸社,1991
「埋められた鏡」古賀林幸訳,中央公論社,1996

■マリオ・バルガス=リョサ
「都会と犬ども」杉山晃訳,新潮社,2010(1987修正)
「緑の家」上・下,木村榮一訳,岩波文庫,2010
「ラ・カテドラルでの対話」桑名一博・野谷文昭訳,集英社,1984
「フリアとシナリオライター」野谷文昭訳,国書刊行会,2004
「世界終末戦争」旦敬介訳,新潮社,2010(1988修正)
「誰がパロミノ・モレーロを殺したか」鼓直訳,現代企画室,1992
「密林の語り部」西村英一郎訳,新潮社,1994
「官能の夢――ドン・リゴベルトの手帖」西村英一郎訳,マガジンハウス,1999
「チボの狂宴」八重樫克彦・由貴子訳,作品社,2010
「楽園への道」世界文学全集I-02,田村さと子訳,河出書房新社,2008
「果てしなき饗宴――フロベールと「ボヴァリ一夫人」」工藤庸子訳,筑摩書房,1988
「嘘から出たまこと」寺尾隆吉訳,現代企画室,2010
「若い小説家に宛てた手紙」木村築ー訳,新潮社,2000

■ホセ・ドノソ
「この日曜日」筑摩世界文学大系83,内田吉彦訳,筑摩書房,1976
「夜のみだらな鳥」鼓直訳,集英社,1984
「三つのブルジョワ物語」木村榮一訳,集英社,1994
「隣りの庭」野谷文昭・野谷良子訳,現代企画室,1996
「ラテンアメリカ文学のブーム」内田吉彦訳,東海大学出版会,1983

■マヌエル・プイグ
「リタ・ヘイワースの背信」内田吉彦訳,国書刊行会,1990(1980修正)
「赤い唇」野谷文昭訳,集英社文庫,1994
「ブエノスアイレス事件」鼓直訳,白水Uブックス,1984
「蜘妹女のキス」野谷文昭訳,集英社文庫,1988
「天使の恥部」安藤哲行訳,国書刊行会,1989
「このページを読む者に永遠の呪いあれ」木村榮一訳,現代企画室,1990
「南国に日は落ちて」野谷文昭訳,集英社,1996

■イサベル・アジェンデ
「精霊たちの家」世界文学全集II-07,木村榮一訳,河出書房新社,2009
「エパ・ルーナ」木村榮一,新谷美紀子訳,国書刊行会,1994
「エバ・ルーナのお話」木村榮一・窪田典子訳,国書刊行会,1995
「天使の運命」上・下,木村裕美訳,PHP研究所,2004
「パウラ,水泡なすもろき命」管啓次郎訳,国書刊行会,2002

■その他の作家たち
ファン・ルルフォ「燃える平原」杉山晃訳,書肆風の薔薇,1990
「ペドロ・パラモ」杉山晃・増田義郎訳,岩波文庫,1992
ロドリゴ・レイローサ「その時は殺され......」杉山晃訳,現代企画室,2000
ロベルト・ボラーニョ「通話」松本健二訳,白水社エクス・リブリス,2009
「野生の探偵たち」上・下,柳原孝敦・松本健二訳,白水社エクス・リブリス,2010
オラシオ・カステジャーノス・モヤ「崩壊」寺尾隆吉訳,現代企画室,2009

■本書で言及した文献
ウラジミル・ウェイドレ「芸術の運命アリスタイオスの蜜蜂たち」前田敬作・飛鷹節訳,新潮社,1975
小川洋子「博士の愛した数式」新潮文庫,2005
開高健「オーパ!」集英社文庫,1981
開高健「才覚の人 西鶴」「開高健全集」第20巻,新潮社,1993
ミラン・クンデラ「小説の精神」金井裕・浅野敏夫訳,法政大学出版局,1990
司馬遼太郎「街道をゆく 愛蘭土紀行」I・II,朝日文庫,1993
バァナァド・ショウ「思想の達し得る限り」相良徳三訳,岩波文庫,1931
ジョナサン・スウィフト「ガリヴァ旅行記」中野好夫訳,新潮文庫,1951
ジョージ・スタイナー「脱領域の知性――文学言語革命論集」由良君美ほか訳,河出書房新社,1972
種村季弘「魔術的リアリズム――メランコリーの芸術」ちくま学芸文庫,2010
新倉俊一「ヨーロッパ中世人の世界」ちくま学芸文庫,1998
バーナード・バーゴンジー「現代小説の世界」鈴木幸夫・紺野耕一訳,研究社,1975
フロイト「夢判断」上・下,高橋義孝訳,新潮文庫,1969
メダルト・ボス「夢」三好郁男ほか訳,みすず書房,1970
ホメロス「オデュッセイア」上・下,松平千秋訳,岩波文庫,1994
ハンス・マイヤーホフ「現代文学と時間」志賀謙・行吉邦輔訳,研究社,1974
クロード・エドモンド・マニー「アメリカ小説時代」三輪秀彦訳,フィルムアート社,1983

2004年7月10日

天使の運命

天使の運命 上天使の運命 上■原題:Huja de la Fortuna ; Isabel Allende ,1999
■著者:イサベル・アジェンデ著,木村勝美訳
■書誌事項:PHP研究所 2004.3.2 ISBN4-5696-2826-5,4-5696-3262-9
■感想
23ヶ国で400万部を売ったそうだ。イサベル・アジェンデが愛娘パウラを亡くした後、数年のブランクを経て出したフィクション。Amazon.co.jpでスペイン文学に分類されておらず、刊行に気づかなかった。ジュンク堂書店で見つけたのだ。なになに?「世界23カ国で大ベストセラーとなった恋愛大河小説」??むむむ…。元々文学くさいところは少ない人だし、いわゆるノベルズ扱いされている作家だからなぁ…どうしよう。読もうかなぁ。メロドラマは大丈夫だと思うけど、ハーレクインとか1ページ目で挫折しちゃうタイプだもんな…。これまでずっと国書刊行会だったのが、PHPに移ってるってことは、そういうことなんだろうなぁ。

実際、上巻の1/3まで読み進めたところでげんなりしてイヤになってしまった。もう少し頑張ろうと思って読み進めて、でも2/3で挫折。そこからブランクを経て、何とか上巻を読み終えたら、後は早かったなぁ。ローズの恋愛話が最初の1/3ね。で、エリサとホアキンの恋愛話が2/3ね。あのー。ハーレクインですよね、やっぱり。無意味な官能の世界は…。うんざり、げっそり。でも中国へ話が飛ぶと、なかなかなんである。

下巻に入ると、実際のところ恋愛物語は全然関係なくなってしまう。サンフランシスコおよびカリフォルニアの建設の歴史というか、ゴールドラッシュを描いて行くのである。これは面白かった。登場人物が増えるし多彩になる。著者はチリ出身だが、サンフランシスコ在住のため、なんだこれが書きたかったんだね、と。白人とヒスパニック、中国人らのそれぞれの姿をそれなりには書けてるような気がするなぁ。それなり、だけど。
恋愛小説のわりに問題となった主人公の恋愛には最後にあっさりした、というか冷たい「恋に恋してただけだよね」という結論をつけてしまう。これはハーレクインを要求する人を裏切ってないか?まぁ、あのまままた出会いと別れを繰り返し…なんてやってたら、もう全然歯が立たず読み進めることが出来なかったんだが。

安手のラブロマンスのふりをして、実際そういうところもあったりする。が、ちゃんと裏切ってもいる。実に中途半端な作品だ。まともな教養小説になりそうな気配を感じさせながら、これも中途半端。従来のイサベル・アジェンデのラインまで戻ってくれないかな。とにかく必然性のない、無意味なめくるめく官能の世界だけは勘弁して下さい。
でもって、三部作の第一作だそうだ。続きが刊行されたらどうしよう…。

2002年8月21日

パウラ、水泡なすもろき命

パウラ■著者:イサベル・アジェンデ著,管啓次郎訳
■書誌事項:国書刊行会 2002.7.25 ISBN4-336-03963-1
■感想
イサベル・アジェンデは野心的な試みのある作家、というにはほど遠いが、素直に言って、小説家としては抜群に面白い。これはエッセイなのだが、やっぱりとても面白い。元々デビュー作の「精霊の家」が自分の家系を元に祖母を主人公にした物語なのだが、自伝的要素も入っている。この作品は実際に限りなく自伝に近いので、より一層ストレートに面白いのだろうと思う。
しかし、実の娘が長期の昏睡状態に陥り、病院であるいは家でそばにいる時間に気持ちを落ち着けるために書いた、というだけあって、非常につらい場面も多々ある。看病日記なのである。そこからまたふらと過去に戻って行く。
自伝はピノチェトが選挙に負けたところまで、となっている。1992年頃のことである。その後、逮捕され、2002年7月の時点で終身議員を引退し、本当に政界の表舞台から去るのだが。現在が近くなると同時に、パウラの死が近づいているのがわかる。娘の死を受け入れるイサベルの筆が痛々しい。
基本的に、エネルギッシュな女性だなぁ、と思う。外交官の娘として各国を転々とし、21歳で娘を産んでなお編集者、テレビ番組のインタビュアーとして働き、クーデターが起きると人々を助け、自ら亡命し、小説家となり、離婚し、再婚し…。暗い話も多いけど、全体的には激動の自伝なので、面白く読めてしまう。ついつい夢中になって電車を3度も乗り過ごした。普段から電車の中では本を読むことが多いが、滅多に乗り過ごしたりはしない。しかも1冊で3度というのは異常だ。つい声を出して笑いそうになったりもする。おすすめだ。

2001年6月21日

エバ・ルーナ

■原題:Eva Luna,1987, Isabel Allende
■著者:イサベル・アジェンデ著,木村榮一,新谷美紀子訳
■書誌事項:国書刊行会 1994.6.20 ISBN4-336-03595-4(文学の冒険)

2001年6月21日

エバ・ルーナのお話

■原題:Cuentos de Eva Luna,1990, Isabel Allende
■著者:イサベル・アジェンデ著,木村榮一,窪田典子訳
■書誌事項:国書刊行会 1995.7.15 ISBN4-336-03596-2(文学の冒険)
■感想
チリの故アジェンデ大統領の姪で、「精霊たちの家」でベストセラー作家になったイザベル・アジェンデの作品。多数著作はあるようだが、この3作品しか日本語に翻訳されていない。
文学作品としての評価は低いようだが、小説としては抜群に面白い。読みやすいし、ほどよくファンタスティックでリアルな感じが、心地よい。ラテンアメリカ文学は悲惨な話が多いので、どんなふうに主人公が身を持ち崩すかと思って読んでいくと、さりげなくハッピーになったりするから、やっぱり女性向きなのか。
エバ・ルーナという名の主人公の物語で長編、下はそのエバが作ったお話という設定の短編集。舞台はチリではなく、ベネズエラらしい。おとぎ話の中に政治動向も盛り込まれた、不思議な作品。結構一気に読めます。