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あぶな坂HOTEL(単行本で「あぶな坂HOTELの人々」に改名)

初出誌:「YOU」2006年第2号(2005年12月28日発売)41p

あぶな坂HOTEL(クイーンズコミックス)

集英社 2008.3.24 400円 ISBN978-4-09-865463-8

【登場人物】
藤ノ木由良(ふじきの・ゆら)あぶな坂HOTELのオーナー。
働一二三(はたらき・ひふみ)リフォーム屋の社長。トモヲに金を奪われる。
トモヲ(ミツル)19歳。金髪の若僧。働のカバンをオートバイでひったくり、直後自分も事故に遭う。
柳原春子49歳。主婦。ガンで入院中。
鈴鹿リンチャペックプリンスバンドのリーダー。天才故の苦しみか、自殺を試みる。
丸山美保あぶな坂HOTELのメイド。3年前沖縄でスキューバダイビングをしていて、おぼれて死亡。未だに遺体が発見されていない。
甘粕あぶな坂ホテルの従業員
金森カツ世あぶな坂HOTELのメイド。料理を担当。
カツ世の父親大分の農家だったが、火事を出す。
【内容】
霧の中を歩く働とトモヲが辿り着いたのはあぶな坂ホテル。客を迎えた女主人や従業員はなにやら謎めいている。その後、春子がやってきて、食事が始まる。トモヲは吊り橋から落ちかけた働を助けてここに来た筈だったが、トモヲが自分の鞄を持っているのを見て、働はトモヲが自分の金をとってバイクで逃げたことを思い出す。トモヲの乗ったバイクが転倒したことをトモヲ自身も思い出す。そこへまた新しいお客がやって来て…
【コメント】
「あぶな坂」と聞くと、萩尾先生の「あぶない丘の家」を思い出すのですが、中島みゆき1976年のデビュー作「私の声が聞こえますか」のオープニングの曲のタイトルです。萩尾先生が中島みゆきを聞くっていうのがちょっと意外な気もしました。

あぶな坂を越えたところに
あたしは 住んでいる
坂を越えてくる人たちは
みんな けがをしてくる
橋をこわした おまえのせいと
口をそろえて なじるけど
遠いふるさとで 傷ついた言いわけに
坂を落ちてくるのが ここからは見える
トモヲは怪我をしているので、この歌詞の筋と近いですね。
生と死の境にいて、迷っている人たちが一息つくのがこのホテルという設定ですが、生に対して未練のある人ない人、自ら死を選んだ人、いろいろな人のいろいろなストーリーが錯綜している物語をこれだけ短い中で処理できるのは、いつもながら凄いです。萩尾先生の短篇は久しぶりですが、やっぱり凄い。
これだけ、個性豊かな登場人物が出ているのにシリーズ化しないのは変じゃないでしょうか。
ともあれ、「介護鬱」なんて言葉が出てくるところが、時代ですねぇ。