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バルバラ異界

初出誌:「フラワーズ」2002年9月号〜2005年8月号(「バルバラ異界」公式サイト

第26回(2007年)日本SF大賞受賞

バルバラ異界 第1巻(フラワーズコミックス)

小学館 2003.7.20 505円 ISBN4-09-167041-5

バルバラ異界 第2巻(フラワーズコミックス)

小学館 2004.4.20 505円 ISBN4-09-167042-3

バルバラ異界 第3巻(フラワーズコミックス)

小学館 2005.1.20 505円 ISBN4-09-167043-1

バルバラ異界 第4巻(フラワーズコミックス)

小学館 2005.10.20 505円 ISBN4-09-167044-X
その1 世界の中心であるわたし 2002年9月号
その2 眠り姫は眠る血とバラの中 2002年10月号
その3 公園で剣舞を舞ってはならない 2002年12月号
その4 彼の名は絶望 彼女の名は希望 2003年2月号
その5 エズラはどこへ消えた? 2003年3月号
その6 六本木で会いましょう 2003年5月号
その7 きみに肩車してあげた 2003年6月号
その8 冷蔵庫の中のわたしを食べて 2003年8月号
その9 火星の海で泳いでいた 2003年9月号
その10 お父さんお帰りなさい 2003年11月号
その11 お誕生日は同じ10月1日 2003年12月号
その12 東池袋カササギのパン屋 2004年2月号
その13 長い長い遺伝子の物語 2004年3月号
その14 大人にだってわからない 2004年5月号
その15 遠軽への遠い道 2004年6月号
その16 ひとつになりましょう 2004年8月号
その17 誰もあなたの名前を知らない 2004年9月号
その18 はじめてのことだから 2004年11月号
その19 ずっとあなたを愛していた 2004年12月号
その20 死者からのメッセージ 2005年2月号
その21 バルバラ崩壊 2005年4月号
その22 花小金井ヒコバエ保育園 2005年5月号
その23 ぼくのキリヤをかえしてくれ 2005年7月号
その24 遠い昨日から遠い明日へ 2005年8月号

【登場人物】
渡会時夫ドイツの21世紀ユング研究所研究員。他人の夢に入り、情報を読み取るという特殊能力をもち、「夢先案内人」という仕事をしている。キリヤの父。
北方キリヤ15歳の少年。渡会時夫と北方明美の息子。幼い頃に両親が離婚し、東京の進学校で独り暮らしをしている。パソコン上に<バルバラ>と名付けた島を創り、自分の安らぎの場所にしていた。
北方明美キリヤの母。20歳のときに時夫と結婚。キリヤを産んで2年後に離婚。伊丹に住み、敬愛する世羅ヨハネの活動に協力している。
十条青羽16歳の少女。9歳の頃に両親が謎の死を遂げてから7年間、遠軽の研究室で眠り続けている。夢の中では9歳の少女の姿で<バルバラ>という島に住んでいる。
十条菜々実青羽の祖母。十条製薬の会長。32歳のときに特別研究員だったエズラと結婚、茶菜を産んだあと離婚し、その後再婚。
十条茶菜青羽の母。青葉のアレルギー体質に悩んでいた。夫・勝一を殺し、自殺したらしい。
十条勝一青羽の父。
エズラ・ストラディ十条製薬で若返りの薬<バルバラ・シリーズ>を研究していた。22歳のときに十条菜々実と結婚するも、離婚。火星に関する預言を最後に行方不明に。
世羅ヨハネ神父。緑の地球をつくる「グリーン・ノア・バーバラ計画」や、身よりのない子供達の施設「グリーンホーム」を運営。
マリエンバード十条菜々実の若返った姿。渡会時夫と関係をもつ。
パリス・グリーン
(パイン)
ヨハネのもつ施設からキリヤのいる学校へ転入してきた。キリヤのことをタカと呼ぶが…。
大黒先生明美の前世療法をしていた。現在は宇宙生命科学の研究もしている。
百田太郎北海道東中原人間科学研究所の研究員。時夫に青葉の調査を依頼。
目白秀吉青葉の母親が通っていた目白サイコ・クリニックの院長。
目白マシロ目白秀吉の息子。
目白マヒロ目白秀吉の娘。
花園蕾香(ライカ)キリヤが通う大学予備校の友人。従兄弟に光介、風仁がいる。
カーラー・シルスバーグ十条製薬と提携しているスイスのベンチャー企業・バルトハウスの医療スタッフ。十条菜々実の身体を使って老化治療の実験を行っている。
渡会清治時夫の父。現在は下呂の奥の山の中でキノコ栽培と陶芸をしている。
波多野桜子時夫の母。清治と別居婚をして、時夫を育てた。今は大阪の総合スクールの校長をしている。
<バルバラの登場人物>
アオバ少女。
タカキリヤとそっくりな少年。ダイヤの息子。
パインダイヤの養子。
ダイヤタカの母親。女優の仕事をしている。
マーちゃんダイヤの姉。パン屋を営んで、タカとパインとアオバの面倒をみている。
千里夢で預言する。
雷ジジ千里の祖父。
ヒナコ人形作家。
シマさんマーちゃんのパン屋の昔なじみ。
【内容】
西暦2052年。他人の夢に入り込むことができる“夢先案内人(ゆめさきガイド)”の渡会時夫は、ある事件から7年間眠り続ける少女・十条青羽(じゅうじょうあおば)の夢をさぐる仕事を引き受けることになった。なぜなら、青羽は寝ているだけなのに、花が降ってきたり、血が滴ったりとポルターガイスト現象が起きているからだ。時夫がもぐった夢の中で青羽は幸せに暮らしていた。その島の名前は<バルバラ>。
時夫は青羽が眠り込むきっかけになった事件を調べ始める。青羽の母親は夫を殺し自殺した。そのとき、青羽は両親の心臓を食べたという話が報道されている。青羽の母の茶菜のカウンセリングをしていた目白クリニックの院長にも茶菜に関する話を聞く。
一方、時夫には2歳のときに別れた息子がいた。息子の名はキリヤ。今は伊勢にいる母親とも別れ、東京で一人暮らしをして大学進学予備校に通っている。彼がパソコンで作った島の形と青羽が眠り続ける<バルバラ>の形が一致している。そしてキリヤが火星の夢を見ると、部屋が砂だらけになるという現象が起きている。ついに青羽がキリヤの前に姿を現した。その青羽は現在の16歳の少女の姿だ。時夫に夢に入り込まないようにと警告をする。
目白クリニックの院長が竜巻に巻き込まれて死んだ。時夫はその竜巻が「青羽の世界を壊せという」院長の言葉に青羽が反応して起こしたポルターガイスト現象なのではないかと疑う。
青羽の祖母、十条菜々実はすでに経営からは引いているが十条製薬の会長だ。現在は会社のためアレルギーテストをボランティアで受けている。実はその実験はアレルギーテストではなく、若返りの薬の研究だった。菜々実は若返り、街に出る。すると偶然時夫に会い、映画のタイトルをもじってマリエンバート名乗り、一夜をともにする。
目白クリニックの院長の告別式に集まったキリヤ、パイン、ライカは息子のマシロに時夫の見た青羽の夢の映像を見せてもらう。時夫が青羽の夢の中に入り込んでいることを知ったキリヤは青羽からの警告を時夫に伝える。一方キリヤと青羽の世界がシンクロしていることに気付いた時夫は、キリヤに気をつけるよう忠告する。


北海道の東中原研究所で大水が出たと聞き、百田と時夫は東京から札幌に戻る。海水で研究所が半分浸ってしまった。こんな大きなポルターガイストを起こすことが出来るのは青羽だけだ。何が起こったのか探るため、時夫は再び青羽の夢に潜る。
バルバラで、時夫はタカやパインの家に寝泊まりしながら、雷ジジの仕事を手伝うことにする。バルバラの人々はその血から不老不死の薬を作るためにここに閉じこめられていて、死ぬと人体研究局が遺体を引き取り、十条製薬が薬を作るという。ヒナコが死んだのでお通夜が始まる。そこでヒナコの心臓と浮き袋をみんなで食べる。その儀式は永遠の命を手に入れるためのもので、人体研究局が遺体を引き取る前に抜き取ることが許可されているという。時夫は「これは夢の中だ」と言い聞かせ、心臓を食べる。すると、現実の時夫が心停止を起こす。
東京ではキリヤの前に現れた青羽の幻影は、かつて豊かな水をたたえていた<火星の海>について語りはじめる。かつて火星の生命体は一つで全体になり、永遠だった。その火星の記憶をもつのはキリヤだけではないと言う。青羽に思い出して永遠の海にかえろうと告げられる。
一方、蘇生した時夫はバルバラでのタカのことを思い出す。眉毛が太くて小さい頃のキリヤによく似ていると思う。記憶をすり替えようとしている自分に気付き、ぞっとする。夢と現実がすりかわってしまう可能性があるからだ。タカが慕ってくれることもあり、時夫はキリヤの父親のなりたいと願う。
キリヤの学校に、パインが転校してくる。パインはキリヤに「タカ」と呼びかけるが、それではバルバラになってしまう。ところがパインは青羽のことは知らないらしい。パインはニューヨークの里親用児童待機施設グリーンマックスで育った話をする。それは世羅ヨハネの作った施設だった。パインら4人は代理母が出産したが、タカだけ3歳のときにいなくなったと言う。他の二人も亡くなり、6歳まで育って里親の元へ行くことが出来たのはパインだけだった。里親はアカネ、アヤメ、アサギという日系のおばあさんで、マサチューセッツ州ナンタケットに住んでいた。パインはそこで成長したが、里親が寿命だと言って病院に行き、パインは彼女らと別れてグリーンホームに戻った。ところが、そのグリーンホームが閉鎖され、パインは東京の学校に行くよう指示されたという。
時夫は再びバルバラに潜る。バルバラの時代は2150年10月20日で現在からほぼ100年未来だ。マーちゃんは48歳、ダイヤは46歳で二つしか違わないが、ダイヤの方に若返りが出たという。ダイヤは8年前タカを産んで島に戻ってきたが、それはタカが突然変異だったからだという。マーちゃんは20年前に起きた戦争の前は東池袋で屋上が丸い鳥かごになった「カササギのパン屋」を営んでいた。子供も夫も火星との戦争で亡くしたマーちゃんは、戦争は終わるのかどうかわからず不安だ。未来を予言するという千里は時夫を見て、昔の夢を思い出した。それは小さな女の子の夢の中に自分たちがいるというものだ。ダイヤとタカに出会えた時夫は、「スグモドレ」という文字が大量に干渉してきて、現実に戻ってきた。ところが、そのメッセージを送ったものはいない。青羽に追い出されたらしい。
「火星」がキーワードであることに気付いた渡会たちは、かつて青羽が描いたという火星の絵を取りに東京の目白クリニックに向かう。そこで偶然菜々実に会い、青羽に会いたいというマシロやキリヤと一緒に遠軽に向かう。そこでヨハネによく似た老人に会う。
【コメント】
2007年日本SF大賞を受賞した萩尾先生の最新SF傑作。バルバラと現実世界、青羽とキリヤの夢が交錯しながら物語はすすみ、どうやら火星やアフリカを巻き込みながら、日本の遠軽そして東京へと収束していきます。
「星の未来の記憶」未来では何もかもが一つだった、というのは「マージナル」でキラがとけ込んで行った未来や「スターレッド」で再生する星を思い起こさせます。不老不死や老化といったテーマを扱いながら、正面から「人類の記憶」と向き合った実にパワフルな作品です。SF読みでないと難解でもありますが、じっくり読めばそのおもしろさがわかると思います。
相変わらず無神経な母親を描かせたら萩尾先生は天下一品なのですが、今回は息子を理解したくて、取り戻したくて必死な父親という人物が登場しました。親の方から子供を見ているのは珍しいケースです。また一つ別のステージへ行かれてしまったような気がしました。
2010.8.27