スロー・ダウン
初出誌「プチフラワー」1985年1月号(16p)
小学館 1985.3 580円 ISBN4-09-178029-6
小学館叢書 1995.9 1200円 ISBN4-09-197195-4
小学館文庫(新版) 1996.9 580円 ISBN4-09-191017-3
- 【登場人物】
- ルイ・ネル:15〜18歳くらいと想定される。ある実験の被験者。
- 所長・所長の妻:ある心理学研究所の主宰者。ある実験に携わる
- ルイのガールフレンド
- 【内容】
- 微妙にSF的なシチュエーションの短編。ルイは、ボランティアかアルバイトとして、「実験」に参加。視覚、聴覚、触覚を遮断された状態で、地下室に隔離され、一人で過ごさなければならない。(しかも、外からは研究者たちが、ルイを完全にモニタリングしている)時間が過ぎるにつれ、ルイの意識は次第に不確かなものとなり、精神的な混乱に陥っていく。そこに、食事を受け取るボックスから、誰かの手が一瞬垣間見え、思わず強くその手をつかんでしまうというアクシデントが…
- 【コメント】
- 初めに読んだとき、あ、これは「心理学」の教科書に出てくる「感覚剥奪実験」だあ。萩尾先生は面白くてユニークな題材をそういう学問の世界から漫画の世界にフィットさせるのが素晴らしくうまいなあと思った。でも最近、あるきっかけがあって読み直したら、ものすごい不安感に襲われた。学問上(あるは私たちの常識)では、「世界」という揺るがないたった一つの現実がデフォルトとしてあり、「人間」はそこから隔離されることで簡単にはっきりした「自己」が解体してしまう、ととらえられている。(実際過去に行われた実験ではほとんどの人が1日でギブ。3日もったのが最長記録らしい)この見方で行くと、変則的で、もろいのが「意識」とか「精神」ということになる。極端にいえば、「世界」が「実」で、「精神」は「虚」なのだ。しかし後半一転して 、むしろ「世界」の方が怪しくあやふやに・・・ならば、「真実」は一体どこに?と考えさせられる作品だ。
(2004.8.26:へびいちごさん)