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シュールな愛のリアルな死

(メッシュシリーズ 11)

初出誌「プチフラワー」1984年5月号・6月号(100p)

シュールな愛のリアルな死 メッシュ7

小学館 1984.8 780円 ISBN4-09-178058-X

萩尾望都作品集・第二期 第14巻 メッシュ 4

小学館 1986.1 580円 ISBN4-09-178034-2

メッシュ 第3巻

白泉社文庫 1994.12 560円 ISBN4-592-88304-7

萩尾望都パーフェクトセレクション 5 メッシュ II

小学館 2007.10.31 1680円 ISBN978-4-09-131218-1

【登場人物】
メッシュ両脇だけ白銀という二色(メッシュ)の髪をもつ金髪の少年。
ミロンメッシュの面倒をみている贋作画家
カティミロンの恋人
マルセリーナ(マルシェ)メッシュの母親
ルビエマルシェの再婚相手
ルイードルビエの息子
アランじいさんマルシェの父親、ミロンの祖父
パジャンルイードの旧友
エーメメッシュの義母
ホルヘスメッシュの父親
【舞台】
現代のパリ(冬),サンジェルマン,カフェ・リヴォリ,クリヨン・ホテル,駅,聖モーゼル
【内容】
カーニバルでのファッションショーの写真が本に小さく載った。その時のメッシュの写真を見たという男がアパートに電話をかけてきた。男は「フランソワーズ」というメッシュの本名を知っていて、「マルセリーナ」というメッシュの母親の名も知っている。しかもマルセリーナの「娘」とメッシュを呼ぶ。
不審に思ったメッシュは女装して男の呼び出しに応じる。男はルイードと名乗り、マルセリーナの義理の息子だと言う。母親は死んだと聞かされていたメッシュは驚く。母親に会いに行かないかと誘われたが、混乱したメッシュは断る。
ところが、アパートに帰り、ミロンとエーメが時々会っていたこと、ミロンがエーメからお金をもらっていたことがわかってミロンと大喧嘩になり、アパートを飛び出してルイードの誘いにのってしまう。
列車はロレーヌ地方の聖モーゼルという田舎に着く。そこで再会した母親は、夢の国の住人だった‥。
【コメント】
メッシュ・シリーズ最終回。シリーズの最初の2回でいったん終わった、メッシュとホルヘスの父子関係に再度メスを入れます。そのきっかけがついに登場したメッシュの母親です。そして、メッシュの複雑な過程に関わる全ての人が登場し、ねじ曲がってしまった父子関係にほんの一筋の光‥というか、ようやくメッシュにホルヘスを理解できる理由が発覚します。
●夢見るマルシェ
マルシェという夢の世界の住人も父親のホルヘス氏に負けず劣らず強烈なエゴイストでした。この夫婦、うまくいくわけがなかった。男の子であるメッシュが何故「フランソワーズ」などという女名をもつのか、この強烈なおっかさんのおかげです。
それにしてもマルシェというのは複雑な人物です。うまくいかなくて離婚した筈なのに、ホルヘス氏の迎えを待っている。父親を独占する弟のアベルを憎んで死を望む。家の役に立つならばとホルヘス氏と結婚したくせに、結局離婚してしまう。
「おまえがいつか父親を殺すことがわかっていた」とは誰のことなんでしょうか?何故マルシェはメッシュが父親を殺すと思ったのでしょうか?アベルと父親の関係か?それとも自分がアベルを殺したいと願ったことか?わかりません。
戦前は城までもって羽振りの良かったマルシェの実家ですが、父親がナチに組みしたため、没落。ローザンヌ地方らしいお話です。
●メッシュとミロン
ミロンに出会ってからあまり暴力にはあわず(とは言え、ジェルダンやルシアンはいましたが)、まぁ、明るく過ごして来たメッシュですが、ミロンと大喧嘩した途端、また大きな暴力に出会ってしまう。「斧でコナゴナに切り刻まれる」メッシュは後のジェルミのように痛々しいです。
「おまえが死ねばよかったのだ」と罵られた少年時代のミロンと母親から否定されたメッシュ。二人が結びついたのは偶然のようで、そうでないようで。
「自分とは関係のない存在」だと思ったり、自分には何の関係もないのに、その人物から生まれたというだけで、あれこれと考えなければならないことで悩む。それでもメッシュは母親の望みをかなえてやりたいと何故思うのでしょうか。
あなたがそうと望むなら 花にも 鳥にも 娘にも この姿を変えたのに たとえば千の死体にも
それは「それは愛ではないにしろ」と続くわけです。ううむ‥。
意外と喧嘩も強いミロン。やっぱり暴力に対抗出来る体力をつけなきゃ、だめだよ、メッシュ。
●カティ
さて、私にとってとても気になるのがカティの存在。いつもメッシュを庇うミロンですけど、カティの前じゃあただのマザコン(笑)。迫力あって、大きくて、マザコンのミロンにはお似合いです。この新しいパートナーの導きで、ミロンもまた新しい世界へと旅だって行くことになります。
●美し過ぎるラストシーン
美しいラストシーンです。萩尾作品の中でも一、二を争う美しさです。右と左に去っていく電車が映画のようです。メッシュはこの後どうなってしまうのでしょう。初めて読んだ時は
  1. 絶対にミロンが引き返して来る。
  2. そうでなくても次の電車に乗ってミロンを追いかけてヴァロリスへ行く。
  3. さもなくばアパートに帰ってミロンの帰りを待つ。
なんてことをしつこーく考えていましたが、その時もわかってはいたのです。メッシュはもうミロンの元へは戻りません。そして父親のところにも帰りません。一人で生きていくのです。
しかし、ねぇ、かっぱらいしかやったことがないメッシュに何が出来るんだろう?ほかにあるとしたらモデルくらいなもんじゃないですか。でも、まぁ、これで食べて行けるかもしれませんけどね。本に載るくらいだから‥。またチンピラに逆戻りかしらん。いやいや、それはないでしょう。喧嘩弱いし。生活力ないなぁ。学校に入り直すとは思えないし‥ともんもんとしておりました(笑)。
でも、やっぱり、これはメッシュの旅立ちなのです。だから美しいラストシーンなのです。