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酔夢

書き下ろし 1980.8(21p)

金銀砂岸(イラスト集)

新書館 1980.8 1500円

萩尾望都作品集・第二期 第9巻 半神

小学館 1985.3 580円 ISBN4-09-178029-6

半神

小学館文庫(新版) 1996.9 580円 ISBN4-09-191017-3

金銀砂岸(増補改訂版)

ブッキング 2006.8.31 2415円 ISBN4-8354-4242-3

【登場人物】
 少女
未来ではレム・パルミーノイオ研究所員。表現形は男性で、染色体はXX(女性)
古代ではパリオ姫王との意に添わぬ結婚を控えている
 青年
未来ではガデン・サファーシュ新任のイオ研究所員
古代では王子王の末弟で、反乱を起こしたため捕らえられ処刑を待つ身。
 その他
未来ではイオ研究所の所長・所員
古代では王,パリオ姫の召使い
【舞台】
未来:木星衛星イオの研究所
古代:西アジアのどこかの王国
【内容】
少女(パリオ姫)が占い師に尋ねる「いつも夢に見続けているあの人は誰だろうか?いつか会えるのだろうか?」。占い師はその人―長い黒髪の男性―の足下で少女が死ぬこと、そしてそれはいつもそうなのだと答える。
そんな夢を見ていたイオ研究所レム博士は所長に起こされる。新しい研究所員ガデン博士を迎えるためだ。初めて会った時、レムも長い黒髪のガデンも、互いに夢の中で見ていた相手だと気づく。ガデンも少女が自分の足下で死んでいるという類型の夢を見ていたのだ。そしてガデンはレムに、類型の夢というのは過去の記憶で、二人は生まれ変わって同じ出来事を繰り返しているのだと語る。
ガデンは夢の中で時代をさかのぼり、同じことが繰り返される原因となった「出来事」を突き止めかけるが…
【コメント】
この作品と同年に連載開始される長編「銀の三角」でも使われる、「ある出来事の原因となった、過去の出来事を修正しようとする」というモティーフが使われています。
「類型の夢」は一コマずつ、背景をいろいろな時代・国に変えて、いくつも描かれます。コマからコマへ時空から時空へ夢から夢へと、酔うようにさまよう作品です。
ガデンは、繰り返しが少しずれてレムの表現形が女性でなかったためでしょうか、幾度も見た夢の中で、つまり幾度生まれ変わっても、知ることのできなかったその瞳の色を初めて知り、レムの髪に触れ、口づけします。口づける姿の背景には宇宙の闇と赤黒い木星が描かれます。この場面は数行のせりふと五つのコマで描かれていますが、とても永い時間と大きな空間が描かれているようです。
私はこの場面で、その永い時間と大きな空間に自分がつながっていくように感じ、心がしんと静まります。これは、SF作品に限らず他の作品でも、また、たった一コマでも感じることがあり、私にとって萩尾望都作品の大きな魅力の一つになっています。
文:まいが