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十年目の毬絵

初出誌「BC.オリジナル」1977年3月20日号(16p)

スター・レッド 第2巻(フラワー・コミックス582)

小学館 1980.6 340円

萩尾望都作品集・第二期 第16巻 エッグスタンド

小学館 1985.1 580円 ISBN4-09-178026-9

【登場人物】
島田太一主人公。周囲からは「シマ」あるいは「島さん」と呼ばれている。大学の芸術学部を卒業し、染色工房で図案を描いている。自分では画家としての才能に欠けていると思っているが…
津川毬絵旧姓は久野。シマの大学時代の友人で、今でも彼の心をとらえている女性。
津川克実シマの大学時代の友人。突然大学を中退し、毬絵と結婚。若手の才能ある画家として認められていたが…
工房の社長シマの才能を認め、個展を開くことを勧める。
【内容】
シマは毬絵に告白する夢を見て息苦しくなって目覚める。シマ・津川・毬絵の3人は、大学時代の親友で、いつも共に夢や芸術を語り合う仲間だった。しかし、もう2人からの音信もなく、十年の月日が流れていたが、毬絵への思いは消えてはいなかったのだ。その思いがシマの描く図案の女性像に生命感を吹き込み、人の心を惹き付けるのだが、本人はそれを意識していなかった。2人が去っていったのは、才能のない自分を見限ったからだと思い、うつうつとした感情を引きずっていたシマだが、それに決着を付けようと一念発起し、個展を開く決意をする。まさにその折、突然津川からの電話が…それは思いもよらない知らせだった。
【コメント】
16ページの現代劇。扉絵、毬絵の何とも言いようのない悲愁を漂わせた表情に、惹き付けられる。もっさりとしたいかにも人の良さそうなシマは、少女漫画誌ではとても主人公になりそうもないが(島さん、ごめんなさい!)、この物語の要はこの人でなければ務まらない。才能や人格は、見かけや、本人の認識ではわからないものだ。そして、萩尾作品に幾たびも繰り返される、「3人」の調和と無限の可能性のモチーフ(そういえば昔「ドリカム編成」ってあったよね)。それが、月並みな男女の関係、「結婚」という男と社会にとっては都合の良い制度によって壊されてしまうことの悲痛さに泣かされる。
(2005.8.21 へびいちご)