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トーマの心臓

初出誌「週刊少女コミック」

1974年19号(5/5号)〜52号(12/10号)(453p)1974.11

トーマの心臓 第1巻(フラワー・コミックス41)

小学館 1975.2 320円 ISBN4-09-130041-3

トーマの心臓 第2巻(フラワー・コミックス42)

小学館 1975.4 ISBN4-09-130042-1 320円

トーマの心臓 第3巻(フラワー・コミックス43)

小学館 1975.6 320円 ISBN4-09-130043-X

萩尾望都作品集 第11巻 トーマの心臓 1

小学館 1978.3 480円 ISBN4-09-178011-3

萩尾望都作品集 第12巻 トーマの心臓 2

小学館 1978.4 480円 480円 ISBN4-09-178012-1

トーマの心臓 第1巻 転入生

小学館文庫 715 1980.11 380円

トーマの心臓 第2巻 同室者

小学館文庫 716 1980.11 380円

トーマの心臓―Das Herzklopfen des jungen Thomas

小学館叢書 1989.12 1010円 ISBN4-09-197191-1

トーマの心臓

小学館文庫(新版) 1995.9 700円 ISBN4-09-191013-0

萩尾望都パーフェクトセレクション1 トーマの心臓I

小学館 2007.7.31 1470円 ISBN4-09-131129-6

萩尾望都パーフェクトセレクション2 トーマの心臓II

小学館 2007.7.31 1470円 ISBN4-09-131129-6

【登場人物】
ユーリ(ユリスモール・バイハン)シュロッターベッツ・ギムナジウムの生徒。14歳。成績優秀で委員長。
エーリク・フリューリンクシュロッターベッツにやってきた転入生。ユーリと同級。
オスカー・ライザーユーリと同室の生徒。ユーリと同級だが一つ年上の15歳。
トーマ・ヴェルナー自殺してしまった生徒。ユーリと一つ年下の13歳。
アンテ・シューベルトーマの同級生。オスカーを追い回す。
ヘルベルトユーリをライバル視している生徒。
レドヴィ盗癖のある生徒。
ホセ上級生。
バッカス上級生。オスカーの良き相談相手。
サイフリート・ガスト六角眼鏡。シュロッターベッツの退学者。
ミュラーシュロッターベッツの校長
ブッシュシュロッターベッツの教師。国語。
マリエエーリクの母親。
ユーリ・シド・シュヴァルツエーリクの母親の再婚相手。
アルフォンヌ・キンブルグエーリクの弁護士。
グスターフ・ライザーオスカーの父親。回想シーンでのみ登場。
ヘレーナ・ライザーオスカーの母親。回想シーンでのみ登場。
シェリー・バイハンユーリの母親。
エリザベート・バイハンユーリの妹。病気がち。
【内容】
まだ雪の残る早春の朝、トーマ・ヴェルナーが陸橋から線路に落ちて死んだ。金網に裂け目が出来ていたため、足を滑らせたのだろうと、事故として処理された。シュロッターベッツ・ギムナジウムの新学期が始まる、その直前だった。学校にやってきたユーリはみなからそのことを知らせられる。寄宿舎の部屋で待っていたのは同室のオスカーと、トーマからの一通の手紙だった。その手紙を開封したユーリは、トーマが死んだのは事故ではなく、自殺だと知る。
ショックを受けたユーリは、表面上は通常の学校生活を送るが、精神的には自分宛の遺書を残して死んだトーマの気持ちを測りかね、追い詰められていく。ある晩、発作のように呼吸困難を起こしたが、翌朝、オスカーに勧められて学校を休み、トーマの墓へ行って遺書を破る。トーマには支配されないと宣言し、学校生活を取り戻そうとするが、まさにそのとき、トーマにそっくりな転校生エーリクに出会う。
エーリクは学校にセンセーショナルを起こす。トーマに似ているということだけでなく、学校にすら行ったことのない、きかん気の性格がその原因だ。オスカーは苦しむユーリを見守りながら、エーリクを学校になじめるよう、導いていく。
【コメント】
「ポーの一族」と並ぶ、初期萩尾望都の代表作。少年たちの愛と友情をドイツのギムナジウムを舞台に展開した中編。キリスト教の信仰という要素も加わった、詩的で格調高い作品です。非常に多くの解説が出ているので、なるべく短くします。
まず、現在の語彙で言うところの「少年愛」の作品ではありません。男女の愛よりピュアな愛が描けるという点から少年と少年の愛を選んだのが理由だそうです。最初から「少年ありき」の作品ではなく、もっと純粋な人と人との愛を描こうとした作品です。
次に、ドイツのギムナジウムという舞台については、この作品を作るにあたり、インスパイアされたという「寄宿舎―悲しみの天使」という映画に寄るところが大きいと思われますが、これはフランス映画ですので、そのままではありません。おそらく萩尾先生が学生時代に読まれたというヘッセの作品群の影響があると私は予想しています。ギムナジウムは「小鳥の巣」の舞台でもあります。ギムナジウムに制服はありませんので、その点はイギリスのパブリック・スクールや先に出たフランスの高校のイメージで作られたのだと思います。
「トーマの心臓」には「11月のギムナジウム」という先行作品があります。これは「トーマの心臓」の発表より前に発表されたものではありますが、着想としては「トーマの心臓」より後に同じ舞台・登場人物で別の作品を書こうとして作られたものだそうです。
そして、また「訪問者」という「トーマの心臓」より後に発表された作品がありますが、これはオスカー・ライザーがシュロッターベッツにやってくる以前の物語です。
では、最後に有名なトーマの詩を全文引用します。最初に読んだときは文学作品から引っ張ってきたものかと思いました。あまりに格調高いのでそう感じたのだと思います。
ぼくは ほぼ半年のあいだずっと考え続けていた
ぼくの生と死と、それからひとりの友人について。

ぼくは成熟しただけの子どもだ ということはじゅうぶんわかっているし
だから この少年の時としての愛が
性もなく正体もわからないなにか透明なものへ向かって
投げだされるのだということも知っている

これは単純なカケなぞじゃない
それから ぼくが彼を愛したことが問題なのじゃない
彼がぼくを愛さねばならないのだ
どうしても

今 彼は死んでいるも同然だ
そして彼を生かすために
ぼくはぼくのからだが打ちくずれるのなんかなんとも思わない。

人は二度死ぬという まず自己の死 そしてのち 友人に忘れ去られることの死
それなら永遠に
ぼくには二度目の死はないのだ(彼は死んでもぼくを忘れまい)
そうして
ぼくはずっと生きている
彼の目の上に
2010.5.6