グレンスミスの日記
(ポーの一族シリーズ)
初出誌「別冊少女コミック」1972年8月号(24p)1972.6
小学館 1974.6 320円 ISBN4-09-130001-4
小学館 1977.11 480円 ISBN4-09-178006-7
小学館叢書 1988.7 1200円 ISBN4-09-197061-3
小学館文庫 1998.8.10 562円 ISBN4-09-191251-6
小学館 2007.12.1 1680円 ISBN978-4-09-131219-8
- 【登場人物】
| グレンスミス・ロングバード男爵 | |
| エリザベス | グレンスミスの娘 |
| トニー | エリザベスの夫。音楽家 |
| ジュリエッタ | トニーとエリザベス夫妻の長女 |
| ユーリエ | トニーとエリザベス夫妻の次女。早逝する。 |
| アンナ | トニーとエリザベス夫妻の三女 |
| ピエール・ヘッセン | アンナの夫 |
| ピエール・ヘッセン | ピエールとアンナの長男 |
| エレーナ・ヘッセン | ピエールとアンナの長女 |
| ベルタ・ヘッセン | ピエールとアンナの次女。早逝する。 |
| レナ・ヘッセン | ピエールとアンナの三女 |
| マルグリット・ヘッセン | ピエールとアンナの四女 |
| ルイス | レナの息子 |
- 【内容】
- グレンスミス・ロングバード男爵が亡くなった。娘のエリザベスは遺品を整理する中で父の若い頃の日記を見つける。父の青春のはなやいだ日々を追って読みふけっていると、「ポーの村」という不思議な記述に出会う。パンパネラの不死の一族が住む永遠の村の話を最初は父の創作と思ったエリザベスだが、次第に信じて憧れるようになる。
- エリザベスはプロシア人のトニーに出会い、恋に落ちる。親戚に反対されるが、トニーと結婚し、イギリスを離れてドイツに渡る。ベルリンのアパートで3人の娘に恵まれ、幸せな家庭を築いていたが、この頃ヨーロッパはまさに激動の時代に突入していき、エリザベスたちもその波にのまれていった…。
- 【コメント】
- とあるヨーロッパの家族の歴史を24ページの短編にまとめるという荒技を、非常に高い完成度でやってのけた作品です。すごい。
- オープニングは「小鳥の巣」の舞台になった学校でのシーン。コマも多いのですが、次のタイトルページから比較的少なめのコマでお葬式が描かれています。そして主人公の夢見がちな面が知らされ、彼女の一代記が始まる…そんな風にキュっと詰まった場面とゆったりとした場面の繰り返しが、詰め込まれたかのような物語をわかりやすくしてくれます。
- この物語、短いシーンの連続なので、印象的な場面がたくさんあるのですが、私が好きなのは、エリザベスがトニーと出会った頃(8ページ)の下半分です。トニーの台詞だけでプロポーズまで持って行くのが、すごいなと。最初は「それでみんな言ってやった」という世間話から入って、心情を吐露し、エリザベスが入ったところで「結婚してください」のこの6コマ。ため息が出ます。
- エリザベスの娘アンナが結婚し次々と子供が産まれ、5人の孫に恵まれます。しかし、一人病死し「食いぶちが一人へったわ」とアンナがつぶやくシーンも印象的です。あと4人いるからいいやということではないのです。再び暗い時代の幕開けを意味するワンカットです。
- 一つ一つ取り上げていくことは出来ませんが、何しろ一代記ですので。そう言えば先生はこういう一代記が得意だったなと、後々の作品でふと思ったことがありました。
- ところで、「グレンスミスの呪い」という言葉が少女漫画界にあります。今市子さんという漫画家の方の言葉なのですが、すごい量のお話を少ないページに盛り込むことが出来た萩尾先生がかけた呪いだそうです。
「このシリーズの一編に『グレンスミスの日記』という名作がありまして、私はこれは70ページくらいの作品だとずーっと思っていましたが、ある時、かぞえてみたら実は24ページしかなかった。(中略)以来、私は24ページという数が怖くなってしまった。私にはあれだけの内容を24ページで描く事はとてもできないから。周りの人達から“グレンスミスの呪い”と呼ばれてました。(『ネムキ』1999年10月号増刊)
- 凝縮しすぎて詰め込み過ぎて、コストパフォーマンスが悪いというか、貧乏性というか、そんな風に言われています。それもこれも、萩尾先生が物語を見事に作り上げ、短いページの中で表現されたからです。これだけで1本の映画を見ているようです。すごい作品です。
2010.4.19