6月の声
初出誌「別冊少女コミック」1972年6月号(31p)1972.4
ポーの一族 第3巻(フラワー・コミックス3) ※これだけ「六月の声」になっている
小学館 1974.8 320円 ISBN4-09-130003-0
萩尾望都作品集 第14巻 東の地平・西の永遠
小学館 1978.6 480円 ISBN4-09-178014-8。
11人いる!―SFロマン傑作選
小学館文庫 712 1976.7 290円
小学館叢書 1995.9 1200円 ISBN4-09-197195-4
小学館文庫 2003.9.10 562円 ISBN4-09-191385-7
- 【内容】
- ルセルは10歳の時、宇宙関係の仕事をしていた両親が事故で亡くなり、おじ・おばの家に引き取られた。いとこのエディリーヌはルセルより6つ年上だった。20歳になったエディリーヌ太陽圏外惑星移民国のロケットに乗って、最初の2万人の中の一人として宇宙に旅立つと決めた。冬眠をしながら何十年何百年とかけて新しい星を探す旅である。
- エディリーヌには婚約者がいた。ロケットの第一設計士のロード・ラグである。二人はエディリーヌが17の時に知り合い、以来の交際である。しかし、ロードは移民団のメンバーには入っていない。5年前から決められていたメンバーのうち4人が海難事故で亡くなったため、急に追加メンバーが必要となってエディリーヌは行くことにしたのだ。
- エディリーヌが何故一人で行くのかを疑問に思ったルセルを彼女はピクニックに誘う。自分が行く季節は6月だから、自分にとっての地球は一番美しいこの季節のままだと語るエディリーヌ。
- ロードに彼女を止めてもらうように頼んだルセルはようやく理由を知る。エディリーヌは3ヶ月前に知り合ったアロウ・パスと恋におちたが、彼は移民団のメンバーだった。ロードは彼が行ってしまった後の7月に結婚が予定されていため、エディリーヌの恋は6月には終わると踏んでいた。しかし海難事故によりアロウは死んでしまい、彼女はアロウの代わりにアロウの見るはずだった宇宙を見に行くことにしたのだった。
- 6月にロケットは永遠に帰らぬ旅に出発した。
- 【コメント】
- 初期SFの名作の一つです。
- 3年付き合った婚約者を捨てて3ヶ月付き合っただけで死んでしまった男の代わりに帰らぬ旅に出る、というロマンチックなお話です。男が3ヶ月で死ななかったらば彼女は婚約者と結婚し、幸せに暮らしたのかもしれませんし、いつまでも男の行った宇宙の果てを見つめていたのかもしれません。いずれにせよ、彼女は地上にとどまらざるを得なかったのです。
- 死んでしまったからこそ旅立つ決意が出来た=恋しい人を亡くした傷心を一種の使命感で埋め合わせたと思わせる部分もありますが(ロマンチックじゃないなあ)、そこはまあ、大いなる勘違いこそが恋ですから。
- 地球は美しいのに何故あの暗い宇宙へ出かけるのか?と問う少年の目に映った地球と宇宙の対比。これが普通です。しかし彼女の目には宇宙はそうは見えなかった。ある意味宇宙へ行けば愛しい男に会えるというようなロマンを抱いている。「ウは宇宙船のウ」の「宇宙乗組員」で登場するスペースマンのロマンと恋ゆえのエディリーヌのロマンに似通ったものを感じます。
- この作品は「何故(危険と隣り合わせだし、暗いし、)それでも人は宇宙に向かうのか?」という古典的なSFロマンを美しく繊細に描き出していると思いました。
- 「外庭の芝刈り機」という言葉が最初に出てきます。何のことやら?と思っていると中庭とは太陽系のことで、外庭=太陽系の外に行く宇宙移民団を指す言葉とわかります。うまいネーミングです。