ドアの中のわたしのむすこ
初出誌「別冊少女コミック」1972年4月号(31p)1972.2
萩尾望都作品集 第13巻 11人いる!
小学館 1978.5 480円 ISBN4-09-178013-X
精霊狩り―傑作短編集
小学館文庫 713 1976.12 290円
- 【内容】
- 精霊のダーナが妊娠した。精霊は人間と違い雷で裂けた木の幹から産まれるもので、子どもを産むなどということは前例がない。仲間の精霊たちは信じないが、その中の一人で透視が出来るブブがダーナの体内を見ると確かに小さな男の子がいた。
- 信じられない仲間たちからボイコットされたダーナは味方になってくれたカチュカと人間のくせに精霊に理解のあるティペント博士のところへ相談に行く。ダーナは博士の助手のイカルスとは電車の中で既に知り合っていた。イカルスにはチャシーという小さな娘がいるが、妻を亡くしていた。イカルスは精霊で、チャシーはテレポート能力のある精霊だった。
- ティペント博士は、ダーナが子どもを産むことは人類が滅びて新人類が現れる時代の前哨戦と言う。仲間たちも納得し、自然界の法則に合った生命体とダーナの子どもを歓迎する。
- ダーナの子どもの父親は過去にダーナと結婚した7人の男性の誰かだが、誰かは不明。産まれてくる子供に父親は必要と言うリッピに、イカルスが父親になってもいいと言う。精霊同士の結婚は100年も200年も続くため退屈するとカチュカは反対する。
- ある日ダーナはバスに乗る直前「のったらダメ」という声がどこからか聞こえ、それに従ってやめると実際にバスは事故を起こしてしまう。お腹の子の予知能力のせいらしい。子どもに支配されているようで産みたくないと、不安になるダーナ。
- イカルスは2歳半に見えるチャシーが実際は6週間たってないとダーナに教える。チャシーが人前で能力を使ってハラハラさせるのを見て、ダーナは更に不安になる。しかし、イカルスは今は精霊にとって良い時代ではないけれど、新しい時代のためにもその子を産まなくてはとダーナを励ます。
- イカルスとチャシーとお腹の子との幸せな家庭を夢見たその時、ダーナは階段から落ちてしまう。気付くとお腹の子がどこかへ行ってしまった。産まれたのではなく、突然いなくなってしまったのだ。
- パニックになりみんなで探すと、子どもはダーナのお腹というドアから出て一人でベッドに寝ていた。茶色の目のトウモロコシのような髪の男の子だった。
- 【コメント】
- 「精霊狩り」の続編です。テーマは「生命はどこから来るのか」。
- 人間と異質な生命としての精霊が人間と同じように子供を産むことから、その出生というか発生の原因が不明のままだった精霊に一つの可能性が見えてきます。
- 精霊も人間と同じように発生し、進化する可能性。しかし、人間だって生命はどこから来るのか。誰も知らないけれど、産まれようとするものを止めることは出来ない。
- 表題の「ドア」はお腹の中を意味していると同時に、生命の起源を表しているのかもしれません。
- ダーナの息子が母親から産まれるのではなく、勝手に出てくるあたりが面白い。通常の出産と違い苦労して「産んでやった」という感じが少なくて、まさにお腹に宿った別個の生命という印象が強く表現されています。
- ともあれ、楽な出産でいいですね。