かたっぽのふるぐつ
初出誌「なかよし」1971年4月号増刊(32p)1970.12
小学館 1977.4 480円 ISBN4-09-178002-4
小学館文庫 719 1984.12 380円
- 【内容】
- 石油コンビナートの町Y市の小学校5年B組では、さよなら会に出す出し物「ふるぐつホテル」という劇の練習を始めている。物語は旅人に捨てられたぼろぼろのふるぐつがアリたちに励まされ、希望を失わずヒバリの一家の巣になるまでを描いたもの。ふるぐつに扮するのは吉田志郎と渡辺悠、監督は安部ヨーコ。しっかり者にヨーコにいつもどやされる志郎と悠だが、少しずつ劇は仕上がっていく。
- Y市は石油コンビナートの出す排塵やガスで汚染されていて、学校にも異臭のするガスが流れて来るため、生徒にうがいや乾布摩擦を勧めている。社会科で公害についてディスカッションをした志郎は、家に帰り父親の会社は公害を出しているのか父親に問いかける。公害防止機械を購入して公害は出していないという答えに安心する志郎。
- しかし、ヨーコはそんな機械はまだ出来上がっておらず、父親たちの会社が公害を出しているのは事実だと言う。自分たちの教育費や食費は親から出ていて、それは親がその公害を出す会社から給料をもらっているためであり、町の発展には石油コンビナートは欠かせない。公害はイヤだが必要悪と割り切っている。
- 悠が喘息の発作をおこし学校を休んでいたため、志郎は下校途中悠の家に寄る。悠は夢で見たという第三次世界大戦の様子を語り始める。それはまさに公害に汚染された世界の結末のようであった。
- 【コメント】
- 非常に珍しいことに、直接的に社会問題を扱った作品です。他にはないでしょう。確かに時代としては、こういった公害問題が取りざたされていた頃です。
- しかし、社会派の作品らしい「くささ」はなく、リアリティをもちながらも物語としての面白さも備えています。直接子供の心に訴えかける強さがあります。
- それでもやはり、悠の夢の中に作者らしさがにじみ出ています。
- 作者の故郷・大牟田市は石炭の町で、父親が炭坑会社につとめるホワイト・カラーであり、この作品はその影響が大きく出たものと思われます。