Anna Seghersアンナ・ゼーガースの文学

はじめに

はじめに

このサイトはドイツの現代作家、アンナ・ゼーガースの著作をまとめたものです。小説の書評、評論、関連書籍、年譜などで構成されています。しかし、研究文献は省いています。
一作品で研究論文が書けるような作家なので、本格的に取り組むとたいへんなことになると思い、簡単にまとめてみました。ですからちゃんとした文学研究のサイトではないし、かと言って絶版ばかりなので、読書案内というわけにもいかないし、少々中途半端かもしれません。簡単な書評でまとめましたが、邦訳のある作品についてはできる限り読みました。
絶版になっていないものは一冊しかありません。ほとんどの本を古書店から購入しました。いくつか実店舗で見つけたものもありますが、多くがネットの古書店です。便利な世の中になったものです。それでも結構大変でした。
少し大きめの図書館には何冊かはおいてあります。どうしても手に入れることができなかったものだけ、図書館で借りて読みました。
一般的に誰が読んでも面白いかと言われるとそうは言えませんが、「第七の十字架」だけは面白い筈です。サスペンスたっぷりで、映画的な画面構成も多く見られ、非常に面白い作品です。
結局、何のために作ったのかというと、新しい作家でもないし、ただ単に好きだから、というよりほかありません。基本的には読書日記のようなもので、要は自己満足な気がします。多くの人に知ってもらいたい、とは思いませんが、もしどこかで見かけたらご参考まで、というスタンスです。

どんな作家なの?

プロレタリア作家、反ナチズムの作家として語られることの多い人ですが、私には「民衆を描いた抵抗の作家」という印象の強い人です。ブレヒトの方がよほどナチズムの恐怖を描いていて、反ナチの作家というと、私にはまずブレヒトが浮かびます。ゼーガースの場合、反ナチの作品でも主役はナチではなく市井の人々で、そのささやかな、あるいは大きな抵抗が描かれるのです。ナチだけではなく、晩年の作品にもハイチ革命が取り上げられていたりもします。
ドイツの作家といっても、東ドイツの作家というべきでしょう。戦前共産党に入党し、戦後は当然のように東独に戻り、ベルリンの壁の崩壊を見ることなくこの世を去ったのです。共産党の色濃い作品も多くあり、正直、古さを感じたり、気色ばむときもなくはないですが、共産主義は当時夢の思想というよりは、民衆のための思想としてはこれ以外に力をもつものがなかったという状況から語られるべきかと思います。
基本的にはリアリズムの作家です。簡素な文体で非常に前向きな、力強い作品を書いていますが、初期や後期の作品には幻想的な作品やSFも少しあったりして、あらためて読んで見ると、意外な面もありました。

出会い

学生のときに1年間この作家だけのゼミを受けたことがゼーガースとの出会いです。もう15年ほど前のことです。このとき取り上げられたのは「聖バルバラ漁民の反乱」という農民蜂起を扱った社会主義リアリズムの作品でした。それほど興味をひかれる、というほどでもなかったのですが、たまたま大学の図書館で借りた「第七の十字架」が非常に面白かったのをよく覚えています。その後、ほかにも2~3の図書館にある本は読んだのですが、「第七の十字架」印象が強く、他の作品はよく覚えていませんでした。
その後、ふと思いついて古書店を探してみたり、他のもののついでに必ず探してみたりしたのですが、あまり熱心に古書店巡りをしているわけでもないので、見つけることができませんでした。
心ある方から「第七の十字架」を譲っていただいたのがきっかけで、この作家の作品を出来る限り読んで見ようと思い立ち、実質的に二ヶ月くらいで作りました。未読の作品も若干ありますし、情報漏れもあるかもしれませんが、主に邦訳作品については情報があれば教えて下さい。