A Son of the Circus,

「サーカスの息子」

岸本佐知子訳 新潮社
カナダで整形外科医として成功しているダルワラは、ボンベイ生まれのインド人。数年に一度故郷に戻り、サーカスの小人の血を集めている。彼のもうひとつの顔は、人気アクション映画『ダー警部』シリーズの覆面脚本家。演じるのは息子同然のジョン・Dだが、憎々しげな役柄と同一視されボンベイ中の憎悪を集めている。しかも、売春街では娼婦を殺して腹に象の絵を残すという、映画を真似た殺人事件まで起きる始末。ふたりは犯人探しに乗り出すのだが。/連続娼婦殺人犯は、とうとうダルワラとダーの間近にまで迫ってきた!犯人はいったい何者で、狙いは何なのか。事の真相は、二十年前のゴア海岸に遡る。ダルワラは、張形とともに旅していたヒッピー娘を助けるが、彼女こそ犯人のゼナナ―女装の売春夫を唯一目撃していたのだ。ダルワラやダー、そして担当刑事の記憶の糸を繋ぎあわせていくうちに、意外な人物が浮かび上がってくる。犯人逮捕は出来るのか…。そんな折り、ダーと生き別れとなった双子の片割れがアメリカからやってくる。神父見習いの生真面目な宣教師マーティンが、とんでもない騒動を次々に起こして。
上下 1999.10.30 上:2,400円;下:2,500円 上:ISBN4-10-519106-3;下:ISBN4-10-519107-1(ジョン・アーヴィング・コレクション)

推理小説仕立てなようで、それでいてコミカルで、楽しめる作品だ。異邦人の気持ちをアーヴィング自身がカナダで味わったであろうことは想像できるが、そこから生まれる哀しみを克服できるラストが美しい。