演劇 : アーカイブ

2007年9月16日

エウメニデス

エウメニデス平栗さんが出ているので見に行く。で、平栗さんが相変わらずきれいなので、満足して帰る。要はそれだけなんですが。

エリーニュスたちがオレステスを追い立てる、その図はまさにこの「オレステスの悔恨」という絵があって、今回の芝居はまさにその再現。最初、エリーニュスたちがオレステスを追い立てるシーンは、なんだか懐かしいお芝居の独特の緊張感があって、気に入った。平栗さんの登場も良かった。しかし話が進むにつれ次第だれていってしまって、せっかく75分1幕もの、という素晴らしい短さなのに、何故か長く感じられた。アポロンがちょっとだるい感じを漂わせ、陪審員の選出あたりで集中力がふっつり切れてしまった。

エリーニュスたちのような大地に属する「古い神」vs アポロンやアテナイなどの「新しい神」という対立構造は目新しいものではない。血によって呼び起こされる異形の神たち=エリーニュス(衣装はよかったと思う)の存在は何故か自然と気持ちの中に入ってくる。それはおそらく比較神話やニーチェの「悲劇の誕生」などが私の頭の中に残っているせいだろう。だから、導入はとてもよかった。

何がしっくりいかないかって、やっぱり「愛と対話で復讐を阻止する物語」だからなんだろう。日本にはもっともっと昔から魑魅魍魎がいて、必ず復讐を遂げるものなので、ピンとこない。第一イスラエルの人にそんなこと言われてもな…平和ボケしている我々の方が恥ずかしくなるくらい理想論だ。役者のみなさんはとてもよくやっていたが、アテナの説得は無理があった気がする。

出演者の半数近くが前回のルティ・カネル演出シアターX公演「母アンナ・フィアリングとその子どもたち」の出演者だが、平栗さんは円企画絡みかな?。座席は四方を囲むスタイルだが、やはり近すぎて若干緊張した。陪審員に選ばれなくてよかった…。

シアターX創立15周年記念プロデュース公演
企画・製作:シアターX(第1回 101スピリット in シアターΧ)
会期:2007年9月14日(金)~23日(日)
会場:シアターΧ
原作:アイスキュロス 「オレステース(憎しみの連鎖)3部作」より
構成・演出:ルティ・カネル(イスラエル)
翻訳:谷川渥
音楽:ミカ・ダニ(イスラエル)
衣裳:加納豊美
衣装・振付:シルリ・ガル(イスラエル)
照明:清水義幸
舞台監督:清水義幸
美術制作:江連亜花里
宣伝美術:MALPU DESIGN(佐野佳子)
出演:平栗あつみ(クリュタイメストラの霊、エリーニュス)/谷川清美(エリーニュス)/大野耕治(エリーニュス)/須川弥香(エリーニュス)/生方和代(巫女、エリーニュス)/瑞木健太郎(オレステース)/真那胡敬二(アポロン)/金子あい(アテナ)

2007年8月18日

エレンディラ

エレンディラ内容はざっとこんな感じ。エレンディラはジャングルの奥地にある豪邸で両親が早世し祖母に育てられた。祖母は大きくなったエレンディラを召使いのようにこき使う。エレンディラの火の不始末から、豪邸は全焼してしまう。非情な祖母は、償いを求め、エレンディラに売春を強いる。二人は砂漠の町々をまわり、いつしかそれはキャラバンとなり、人々の噂になる…。

昨年「にしすがも創造舎」(廃校になった旧朝日中学校)の体育館でやる予定が、その空間が演出プランに見合わないことが分かり、新たに劇場を探したそうな。その結果が、いつもの「彩の国さいたま芸術劇場」ですか。あそこは天井も高いし、奥行きもあるし(主舞台18.18m+後舞台18.18m)、芸術監督だし、別にいいんですが、都心から遠いんですよ。巣鴨の方がまだましだなぁ。

蜷川さんは若い男の子を育てるのが好き、というかうまいというか。原作では主役でないのに主役になってしまったというくらいなので、中川晃教という人もなかなかですが、特筆したいのは、娘(って最近言われなくなったのはやっぱ実力ですかね)の映画に出ていた美波です。本当にほぼ「全裸」の大熱演。エレンディラって、イノセントだけど妖艶じゃないとならなくて、それはファム=ファタルっぽい小悪魔かげんとはまったく違う次元のところにあって、エキゾチックとも遠くて、難しい役どころです。祖母の言うことを何の疑問も感じずにきいている頭の空っぽな見た目ももちつつ、実はかなり考えていたり、ウリセスに向かって「あんたは満足に人も殺せないのね」というふてぶてしさももっていないとならないし。前述のクラウディアの印象があったりしますし、あまり期待していなかっただけに、「おお」という感じで感動しました。彼女は素晴らしい。

演出はまぁほどほどな派手さで、良い感じでした。そんなに一生懸命クルマ動かさなくてもいいのに、とか、そんなに一生懸命雨をふらせなきゃいいのに=ふかなくてもいいのに、とか多少思いましたが。衣装がよかったな。エレンディラと祖母の衣装が特に。マイケル=ナイマンの音楽は悪くはないのですが、どうしてもフェリーニっぽい感じがして、ちょっとそれが不満。もう少しベースに太い音があれば南米っぽいのに。でも、まぁ総じて楽しかったです。

で、問題なのは脚本。燐光群の坂手洋二なんて大物に書かせるから…。またこの人もコロンビアまで旅しちゃうし、思い入れたっぷりです。原作を傷つけないよう、それでいてオリジナリティを発揮したいというか、ガボの世界をちゃんと取り入れてますよ的な主張が強いというか。決して悪い脚本ではありませんが、4時間10分です。とにかく長すぎます。長すぎることによる弊害があるので、やはりこれは観客のこと考えてる?と思います。作り手のわがままだなぁと。

まず、上演時間が長すぎると、平日ソワレができないじゃないですか。都心から離れた劇場であるという理由もありますが、非常に難しい。一応週に2回、ソワレがありますが、19:00スタートで23:10終演。終電のない人多いんじゃないでしょうか?(配られたチラシの中に時刻表が入っていましたw)。実際、上演中の終盤終電を気にして早く出る人もいたそうです。芝居でそれは私はイヤですね。ゆったりおしゃべりとかして、全部トータルで観劇です。

それに平日ソワレが少ないのは働いている若いOLとかは来るなというような意味にとれます。明治座じゃないんだから、年寄りばかりでいいんですか?この芝居、若い人に見せたいと私は思います。藤原竜也とかジャニーズ系ほど人を呼べる若い男の子がいるわけじゃないから、若いOLさんを相手にする必要がないってことかな。実際、そういうお値段(12,000円也)でもありますよね。若い人が気軽に行ける値段じゃない。

話を元に戻すと、脚本については本音では不満が多いです。「大きな翼のある、ひどく年取った男」を入れたのはまだしも、「奇跡の行商人、善人のブラカマン」はまったく余計でしたね。原作読んでない人には「あれは何の意味があったの?」と思われるのは必至。また、二人がワユ族の血を引いていた、というところは良いと思いますが、それで押さえられなかったのかな。原作を知っている人間からすると、ウリセスとエレンディラのその後は別に要りません。やっぱりエレンディラが去っていくところで終わって欲しかった。別に「エレンディラ」を伝承にしなくてもいいし、ガルシア=マルケスを出さなくてもいいです。ウリセスを堕天使にしなくてもいいし、エレンディラはその後生きていなくても結構です。

「何年もかけて、孫に売春で贖罪(しょくざい)させるばばあと、それに黙って従う女の子。四の五の言わないで、そういう世界があるんだと。我々の価値判断で推し量らず、それを理解し受け入れられるかどうかが決定的なことだと思う」
出典:「ガルシア・マルケスの世界――「エレンディラ」演出・蜷川幸雄さん」(毎日新聞)

まったく、その通りだと思うんですよ、蜷川さん。マルケス読みは基本的にそうしてます。そうしないと楽しめないのです。それなのに、なぜ今回の脚本は「解釈」が入るんでしょうね。あれも一種の解釈ではないかと思います。もと(原作)が面白いので、そのままやってくれて充分。俳優と演出と音楽と、舞台のすべてが楽しければそれでいいんじゃないかと思いました。

制作:財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ
会期:2007年8月9日(木)~9月2日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場
原作:ガルシア=マルケス・ガブリエル
脚本:坂手洋二
演出:蜷川幸雄
音楽:マイケル・ナイマン
美術:中越 司
照明:原田 保
音響:井上正弘
衣裳:前田文子
ヘアメイク:佐藤裕子
振付:広崎うらん
音楽助手:阿部海太郎
演出助手:井上尊晶・石丸さち子
舞台監督:小林清隆
出演:中川晃教/美波/品川徹/石井愃一/あがた森魚/山本道子/立石凉子/國村隼/瑳川哲朗

公式サイト

追補:やはり上演時間が問題になったようで。上演時間についてというのが8/21にアップされました。

2007年2月 5日

メアリー ・ステュアート

メアリー ・ステュアート実に2年ぶりの観劇。結構脚色がされていたようだが、大枠ではシラーの原作をストレートにやっている。この規模の劇場でこの期間で、と考えると2時間45分は意外だった。古典劇はあまり見ない方だが、これは学生の頃、相良守峯訳の古い岩波文庫で読んではあった。シラーは「群盗」「ヴィルヘルム・テル」などから、もっと動きのある芝居の人かと思っていたら、ものすごい密室劇で、地味な会話ばかり。両女王の対決場面でのイヤミの応酬が面白かったという記憶がある。

このくらいの台詞の量だと、結構なスピードになってしまうのだが、これまで私が見た芝居は、こんな感じでみんな押していた。この圧倒的な台詞の量の中で、どれだけちゃんと演じられるのかが問題で、じっくり‥というタイプは少なかったのだ。が、なんだろう‥今回ミスが多くてみんなとちりまくってて興ざめ。稽古の時間が足りないのか、それとも今の流行ではないのかな?

平栗さんが元気そうでよかった。彼女だけはミスがない。「つか」で鍛えたら、このレベルなら全然余裕でしょう。この人は若い頃から(90%は良い意味で言っているのだが)ホント変わってないなぁ‥と思った。ゴスロリな衣裳ですが、細くて頭が小さいから似合うんだなぁ、これが。え?もう44歳ですか?びっくり。

二人が同時代に生きて、対照的な生き方をしていたのは事実。だが、実際は会ったことはないらしい。イギリスの歴史を多少かじっている人なら誰でも知っている女性二人の歴史劇をドイツ人が書いている。英国人には書けないでしょう。


制作:社団法人日本劇団協議会
会期:2007年2月1日(木)~2月4日(日)
会場:新国立劇場・小劇場
作:フリードリッヒ・シラー
脚色:ピーター・オズワルド
翻訳:阿部のぞみ/古城十忍
演出:古城十忍
美術:伊藤雅子
照明:黒尾芳昭
音響:青木タクヘイ
衣裳:宮本尚子/豊田まゆみ
舞台監督:尾崎裕
舞台監督助手:端場久美子
演出助手:佐藤万里子
演出部:増田和/村田麗香/吉澤緑
宣伝美術:古川タク[イラスト]/西英一[デザイン]
制作担当:岸本匡史
出演:平栗あつみ(メアリー・スティアート)/田島令子(エリザベス1世)/奥村洋治(バーリー卿)/小宮孝泰(アミス・ボウレット)/鈴木弘秋(レスター伯)/河内喜一朗(シュリューズベリー伯)/有希九美(ハンナ・ケネディー)/永田耕一(ベリエーブル卿・ディヴィソン)/重藤良紹(オーブスビン大使・メルヴィル・護衛)/小森創介(モーティマー)/高久慶太郎(ダンンリー他)/溝渕康弘(ドゥルーリー・護衛隊長)/石井秀樹(護衛)
詳細

2005年2月 7日

幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門

幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門」は休憩が20分入りますが、3時間コースでした。予想通り。
早めに行って食事でもと思ったので、ちょうどマチネが終わった頃行ったのですが、蜷川さんご本人がジャージ姿で出ていらして、ソワレに行ったときには、いつものタートルネックセーターに着替えられていました。

蜷川さんが芸術監督をつとめておられるシアターコクーンは2005年はNINAGAWAイヤーだそうで、すでに3本入っています。「メディア」の再演なんかあったりして。しかしこの数年、蜷川演出の芝居は本当に本数が多い。パンフレットを読んでいて思ったのですが、主役級5人の全員が蜷川演出作品に出演済みですが、「今度は蜷川さん、思い入れのある作品らしく、たくさん話してくれました」とか「前回は来ない日もあって放っておかれましたが、今回はいじられました」とかいうコメントが相次いでいます。つまり、蜷川演出って蜷川監修であって、実際は本当にどれだけ演出しているのかわからないということですね。でも、この作品はかなり思い入れをもって演出してくれたということなんでしょうね。

木村佳乃のハイヒール、見ていてハラハラしてしまい、集中できないので、やめて欲しかったです。階段降りてくるところなんか特に。段田さんより背が高くなっちゃうし、あの棒立ちスタイルが演技としてよかったのはわかるんですけどね。それから、上からふって来る石が中嶋朋子にあたらないようにと、これもハラハラしてしまいました。変なところで集中力を欠いてしまいました。

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