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2015年8月17日

アメリカ大陸のナチ文学/ロベルト・ボラーニョ

アメリカ大陸のナチ文学ナチ時代から現代・少し先の未来に活躍した南米の右翼作家の人名事典という体裁の短編集。パロディと言っても良いかもしれない。私は事典・辞書の編集作業をしたことがあるが、事典には文体というものがある。主観をできるだけ排し、文字数に厳しい制限があるためシンプルで短い文章になる。この作品も文体は事典風にはなっているが、やはり文章の力が強くて、どう見ても短編集だ。
架空の作家ばかりだが、完全に架空ではなくて、アルゼンチンのこの地域にドイツ人の村があったかもしれないなどと思わせる信憑性もある。ボカ・サポーターにこんなバーバ・ブラバのリーダーがいたら、本当に伝説だろうな、などと想像することができる。
最後に突然一人称になって、事典風から短編小説に文体も変わる。内容も殺人鬼を追う探偵小説のようだ。

■目次
メンディルセ家の人々
エデルミラ・トンプソン・デ・メンディルセ
フアン・メンディルセ=トンプソン
ルス・メンディルセ=トンプソン

移動するヒーローたちあるいは鏡の割れやすさ
イグナシオ・スビエタ
ヘスス・フェルナンデス=ゴメス

先駆者たちと反啓蒙主義者たち
マテオ・アギーレ=ベンゴエチェア
シルビオ・サルバティコ
ルイス・フォンテーヌ・ダ・ソウザ
エルネスト・ペレス=マソン

呪われた詩人たち
ペドロ・ゴンサレス=カレーラ
<小姓>ことアンドレス・セペーダ=セペーダ

旅する女性作家たち
イルマ・カラスコ
ダニエラ・デ・モンテクリスト

世界の果ての二人のドイツ人
フランツ・ツビカウ
ウィリー・シュルホルツ

幻視、SF
J・M・S・ヒル
ザック・ソーデンスターン
グスタボ・ボルダ

魔術師、傭兵、哀れな者たち
セグンド・ホセ・エレディア
アマード・コウト
カルロス・エビア
ハリー・シベリウス

マックス・ミルバレーの千の顔
マックス・ミルバレー、またの名をマックス・カシミール、マックス・フォン・ハウプトマン、マックス・ル・グール、ジャック・アルティボニート

北米の詩人たち
ジム・オバノン
ローリー・ロング

アーリア同盟
<テキサス人>ことトマス・R・マーチソン
ジョン・リー・ブルック

素晴らしきスキアッフィーノ兄弟
イタロ・スキアッフィーノ
<デブ>ことアルヘンティーノ・スキアッフィーノ

忌まわしきラミレス=ホフマン
カルロス・ラミレス=ホフマン

モンスターたちのためのエピローグ
1.人物 2.出版社、雑誌、場所 3.書籍


■原綴:La Litteratura Nazi En América, 2007 Robert Bola˜no
■書誌事項:野谷文昭訳 白水社 2015.6.1 250p ISBN978-4-560-09265-1(ボラーニョ・コレクション)