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2009年5月18日

バルセロナ・ストーリーズ

バルセロナ・ストーリーズキム・ムンゾーの名前を木村榮一先生があげられていたので、読んでみた。売れっ子作家というわけか。バルセロナという街の様子を知るための文学的な切り口、といった目的で編まれたアンソロジーだそうだ。


キム・ムンゾー
なんだか都会的でスマートな幻想小説といった風情。
シトロエン・メアーリの女
…「背中まで45分」幻想小説風、といった趣の作品。ベッドでサカナになるのとはわけが違う。密林の鸚鵡とは、さすがの井上陽水も思いつかないだろう。

庭つきの家
…今度はいきなりメタルブルーのフィアット・ウノだ。日本では35年ローンなどが一般的なので、7年間で払い終えるというのはそれは富裕な人だけか?ともあれ、住宅事情がまるで違うので、ローンを払い終わった途端に別の家に見えてしまう、などという話は作れない。

……時六十分
…遅刻魔と早く来すぎる人との不毛な争い。ラテンの国でこんな話が成り立つとは、少し笑える。スペイン人全員が時間が守れないわけでもあるまいに…。

ムンセラ・ロッチ
若人の歌
…モンセラット・ローチ、あるいはモンセラー・ローチという表記も見られるが、小説の翻訳はない。「発禁カタルーニャ現代史」という書籍が現代企画室から出ている。

セルジ・パミアス
ヌー
現金自動支払機
…星新一風?筒井康隆風?といった印象だが、私のSFの知識はとにかく古すぎる。ショートショートを思い起こさせる。バルセロナが都会だから、都会の中で起きた不思議な出来事の顛末、といった印象。特に「現金自動支払機」の方はそのまま東京でも使えそう。決して好きなタイプの短篇ではないけれど、変な動物がバーに入り込んでいるのはいいが、それが「ヌー」というのは、ちょっといい。

マヌエル・デ・ペドロロ
善良なる市民
…発端は同じでも違うシチュエーションになってしまったお話。裏表ということか。

アンリック・ラレウラ
チップ
…気持ちはよくわかる。こんなのはチップに慣れていない日本人だけかと思った。

ペーラ・カルデース
巧妙な侵略
マルサスに零点
…二作とも「日本人」がポイント。作者は日本嫌いか。

ジュアン・パルーチョ
ポトツキ伯爵とポデゴネス通りの怪物
ジェラール・ド・ネルヴァルと怪物Zmb
三人のアイルランド人(ベルナルド・ワード、ウィリアム・ボウルズ、リカルド・ウォール)と、クリメン師のバルセロナの不思議な関係
…歴史上の人物の史実に基づいて、幻想的な小説に仕上げているので、うっかりすると信じ込みそうなリアルさが怖い。

解説:田澤耕
カタルーニャ文学の歴史と現在

■著者:田沢耕訳
■書誌事項:水声社 1992.6.30 181p ISBN4-89176-271-3/ISBN978-4-89176-271-1
■原題:Mardid Amor.1986, Rosario Ferrë
Noia del Mehari ,Quim Monzo
Quatre quarts ,Quim Monzo
Casa amb jardi ,Quim Monzo
El cant de la joventut ,Montserrat Roig
El nyu ,Sergi Pamies
Caixa oberta ,Sergi Pamies
El bon ciutada ,Manuel de Pedrolo
La propina ,Enric Karreula
Invasio subtil ,Pere Calders
Zero a Malthus ,Pere Calders
El comte Potocki i el monstre de Bodegones ,Joan Perucho
Gerard de Nerval i el monstre ZMB ,Joan Perucho
Misterioses relacions de tres irlandesos amb la Barcelona del bisbe Climent ,Joan Perucho