最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2008年3月

2008年3月31日

めがね

めがねなかなか映画館で映画を見ることが出来ない。仕方がないからDVDを予約して購入するが、届いてもやっぱりなかなか見ることが出来ない。ようやく時間を無理くりつくって観る。その時間はまさに「忙しいけど、無理にでも休息をとらなくては」という「休息時間」なわけだ。だからそれにふさわしい映画でないと。

だから、何か面白いことが起きることなんて、一切期待しない。とにかくゆっくりしたい。

その期待には充分に応えてくれた。

一番最初に海が開けたシーンが現れた瞬間、私の鼻は確かに潮のにおいをかいだ。パブロフの犬のようだ。あるいは梅干しを見たときの口の中。私は与論島は知らないけれど、南の島の海はわりあい知っている。あの臭いだ。それも、あの人気のない海。

南の島へ行って観光なんかしたことがない。泳いで、食べて、寝て。あとは本を読むくらい。本編の中で「こんなとこで本なんか読めないでしょ」とハルナが言ってたが、確かに難しい本は読めない。だから普段は読まないミステリとか、ストーリーの面白そうな小説とか。それも暗いのはダメ。比較的ギラギラした感じのものじゃないと読み進められない。

でも春の海に行ったことはない。所詮夏の海は泳げるから、この映画ほど「たそがれ」なくてもやっていける。

ドイツ語の詩が気になって調べてみたら、やっぱりみんな気になっていたらしく、いろいろ書かれてあった。「何が自由か知っている」という言葉だけは聞き取れたので、映画のサブタイトルと同じだなとは思ったが、てっきり誰か有名な人の詩かと。少なくともシュトルムだのリルケだの、ロマン派っぽくはないな、シラーとか古典派でもまったくなさそうだし…と思っていたら、オリジナルだった。なるほど。
唐突にドイツ語なのだが、タエコがドイツ語の先生というバックエンドがあったらしい。どうりでシュトルムの詩集をもっていたわけだ。確かに、あんなところでシュトルムの詩集は読めないわな。


■2005年 日本 106分
■監督・脚本:荻上直子
■出演:小林聡美,もたいまさこ,光石研,市川実日子,加瀬亮
■公式サイト:http://www.megane-movie.com/

2008年3月25日

Coyote vol.26 柴田元幸

Coyote No.26 特集・柴田元幸―文学を軽やかに遊ぶ3月10日売りの「Coyote」は「特集・柴田元幸―文学を軽やかに遊ぶ」という、なんだかそのものズバリな特集だった。このブログも「柴田元幸」というタグが増えてるなぁ。柴田元幸ブランドだから読む、というほどのファンではないのだが。
私が好きなのはポール・オースターやスチュワート・ダイペックであって、スティーブン・ミルハウザーやバリー・ユアグローではない。でも角度的にはまぁまぁ高い方なのだろう。

大田区の六郷というところは、なんとなく雰囲気がつかめる。柴田氏が子どもだった頃ほど昔ではないけれど、私も7歳まで京浜工業地帯で育ったから。あの辺は駅もないのに唐突に小さな商店街がぽつぽつと出現する。JRの駅までは車で行かないとならなくて、それはホントにちゃんとした「お買い物」という感じで、普段はその小さな商店街で全部済んでしまう。都心なのに、すごく田舎な側面がある。埋め立て地だから基本的に平地で、だら~っとした感じ。下町であまりガラはよくない。勉強が出来ても、別に偉くない。そんなところで育ったからこそ「インテリぶってもしょうがない」→「平易な文章で翻訳」なわけか。なるほど。

「ニューヨークから来た女」の東大でのゼミはそれなりに面白かったが、今の私にこんなものまともに読めるわけがない。たとえば、この小説の語り手が主人公の女性に対しても、夫やその親に対しても、どちらにも肩入れせず、放り投げたような視点から書いてあるのは理解はできる。が、私自身が「この女信じらんない」と思ってしまっては、ちゃんと読める筈がない。仕方がないと自分で苦笑してしまった。

■書誌事項: 2008.3.10 ISBN4-88418-213-8/ISBN978-4-88418-213-7


ところで、柴田元幸責任編集の「モンキービジネス」という文芸誌がヴィレッジブックスから4月19日に創刊されるらしい。季刊誌のようだが、今時文芸誌なんて、えらすぎる。以下、それに関するメモ。

http://www.villagebooks.co.jp/villagestyle/monkey/index.html
4/11 「モンキービジネス」特設サイトオープン

■雑誌掲載
「ダ・ヴィンチ」4/6発売号 NEWSCLIPコーナー
「Frau」4/12発売号 柴田元幸×岸本佐知子対談
「BRUTUS」4/15発売号 柴田元幸×鈴木成一対談

■イベント
5/3(土) 10:00~ABC(青山ブックセンター)
http://www.junkudo.co.jp/newevent/evtalk.html#20080508ikebukuro

2008年3月20日

ユリイカ 2008年3月号 特集・新しい世界文学

ユリイカ 2008年3月号 特集・新しい世界文学「ユリイカ」の海外文学全般特集。最近海外文学を取り上げる頻度が低いので、年2~3回くらいのペースでやってもらいたい。今回の特集で特に注目したのが、ドイツ文学とラテンアメリカ文学。ドイツ文学の解説は瀬川裕司。瀬川裕司と言えばドイツ映画の人...と思っていたのだけど、考えてみたら、そんな狭い範囲のわけがないか。ベストセラーで話題のダニエル・ケールマン「世界の測量―ガウスとフンボルトの物語」(三修社 瀬川)2008年春刊だそうだ。楽しみ~。あとは、モーニカ・マローン「かなしい生きもの」とウーヴェ・ティム「カレーソーセージをめぐるレーナの物語」あたりを読んでみようか。

収録作品の中で気になったのが以下。

イグナシオ・パディージャ(メキシコ)「動物小寓話」Ignacio Padilla, "Bestiario Mínimo", 2001 久野量一訳
エドムンド・パス=ソルダン(Edmundo Paz Soldán, ボリビア)「夕暮れの儀式」"Ritual del atardecer", 1998 安藤哲行訳
セサル・アイラ(César Aira, アルゼンチン)「悪魔の日記」"Diarion de un demonio"収録 久野量一訳
※セサル・アイラは映画『ある日、突然』の原作として知られる。
ロベルト・ボラーニョ(Roberto Bolaño チリ)「ジム~我慢ならないガウチョor鼻もちならないガウチョより」"Jim:El gaucho insufrible,2003"久野量一訳

ラテンアメリカ文学は「ブーム」以後の作家がなかなか日本に入ってこない。ガルシア=マルケスやバルガス=リョサの新作も良いが、そろそろいいかげん新人のを読みたい。別に私は「マジックリアリズム」に限って好き、というわけではないし、南米の人ならなんでもいいというわけでも、もちろんない。ただ、ちっさい話(身近な、卑近な話)があまり好きじゃないというだけだから。

以下は今後なんらかの形でひっかかってくるかもしれないので、キーワードとしてメモをしておく。下で読んだことがあったのはホルヘ・フランコだけだ。というか、それしか翻訳されていないのだから仕方がない。


「ウォークマンと短篇を」
アルベルト・フゲー/セルヒオ・ゴメス(チリ)

「マッコンド」
ロドリーゴ・フレサン/ファン・フォルン/マルティン・レットマン(アルゼンチン)
サンティアゴ・ガンボア(コロンビア)
エドムンド・パス=ソルダン(ボリビア)
ホセ・アンヘル・マニャス/マルティン・カサリエゴ/ライ・ロリガ(スペイン)
ホルディ・ソレール/ナイエフ・イェヤ(メキシコ)


「クラック宣言」
ペドロ・アンヘル・パロウ/エロイ・ウロス/イグナシオ・パディージャ/リカルド・チャベス・カスタニェダ/ホルヘ・ボルピ(メキシコ)

ほか、まとめて。
ロベルト・ボラーニョ(チリ)
フェルナンド・イワサキ/イバン・タイス(ペルー)
ホルヘ・フランコ/マリオ・メンドーサ/(コロンビア)
クリスティーナ・リベラ=ガルサ(メキシコ)
ゴンサロ・ガルセス(アルゼンチン)