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2004年7月20日

天国の口、終りの楽園

天国の口、終りの楽園■Y Tu Mama Tambien 106min メキシコ 2001
■スタッフ
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン/カルロス・キュアロン
撮影:エマニュエル・ルベッキ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル/マリベル・ヴェルドゥ/ディエゴ・ルナ
公式サイト:天国の口、終りの楽園
■感想
なかなか切ない映画だと思う。最初はソフトポルノか?脳天気な青春グラフィティか?という感じで見ていたが、単純に「メキシコの今」に興味があって見続けていて、最後にストンと落とされてしまう。ずっとお気楽脳天気・ラテンのノリで満載の映画なので、その暗い落とし方にガクンと来てしまう。これがラテンの光と影なんだな、と。

そもそもは、また「マジカル・ラテン・ミステリー・ツアー」に映画評があったので見てみたのだった。この本は書評はすでに読んだのばかりだったから使えなかったけど、映画はいろいろと見る気になるものがある。それはきっと、ここのところ何年もろくに映画を見ていないせいだろう。

筋書きとしては、高校生の男の子二人が年上の人妻をひっかけて、幻の海岸「天国の口」を探すロード・ムービー。大統領が結婚式に出席するような一族に所属する富裕な高校生と父親は知らないものの、母親がキャリアウーマンでギリギリ中産階級の底にぶらさがっているもう一人の高校生のコンビはGFが二人とも欧州旅行に出かけてしまい、せっかくの夏休みだというのにやることがない。一方人妻の方はスペイン・マドリードから来た美人で夫は成功した作家としてメキシコに凱旋したが、うるさい姑がいるし、夫は浮気ばかりだし…という設定。結婚式で知り合った3人の変てこな旅である。

メキシコ・シティのスーパーは物があふれ、親の車を脳天気に転がす高校生。まるでアメリカのようだ。その一方で、姉は大学で政治学を学び、左翼運動にかぶれ、貧しい人たちに物資を配る活動をしている。旅の途中では農民が警察に銃をつきつけられていたり、死体が転がっていたり。南米のハイウェイというか幹線道路ではカーブに何本も十字架が立っていて事故が多いことがわかるんだそうだ。メキシコもそのようだ。何でも、皆相当乱暴な運転をするらしい。田舎は貧しく素朴で、美しい夕焼け、美しいビーチが残っている。しかし、そこも観光化の波は訪れ、四代も続いた漁師が漁をやめてホテルの清掃員にならざるをえない。5歳からの記憶をもつ100歳の老婆は、親がアメリカに脱出する途中、熱射病で死んだひ孫のぬいぐるみを持っている…

メヒコはやっぱりすごい国だなぁ…気楽に行けるところではないけど。

「もう会うこともない」って、いいコピーだ。親に反抗して麻薬を吸ってへらへらしている高校生には苦すぎる想い出になってしまったわけだ。原題は英語にすると"And your mother too"「おまえのお袋もな」というのは、まぁ実際は冗談じゃすまないわけで。

ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナは元々6歳のときからの友達だそうだ。息が合った演技を見せている…とか言って良いものかどうか(笑)。二人とも2001年のヴェネチア国際映画祭で新人賞をダブル受賞するわ、メヒコでは興行成績ナンバーワンだわ、ずいぶんと話題になったようですな。
監督のアルフォンソ・キュアロンのこの後の作品が「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」…一気にメジャーになったんだなぁ。