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2004年2月18日

13歳のハローワーク

13歳のハローワーク■著者:村上龍
■書誌事項:幻冬舎 2003.11.30 2,600円 ISBN4-344-00429-9
■感想
B5、ハードカバー、425ページの大著である。1ページ目から最後のページまで、すべての項目とエッセイを姿勢を正して読んだ。こつこつと少しずつだったので、ものすごく時間がかかった。何故そんなことをわざわざ‥と思われるかもしれないが、それを話し出すと長くなる。
村上龍が私のハートを唐突に鷲掴みしたのはこれが2度目だ。1度目は「69(シックスティナイン)」だった。佐世保の高校生時代の自分の話を元にした自伝的な小説が単純に面白かった、というのもあるのだけど、あとがきの「笑い続けるために戦い続ける」という言葉が「楽しく生きる努力をしないということは罪悪だ」というように受け止められ、私には一種の座右の銘みたいなものになった。中学生の頃「限りなく透明に近いブルー」「コインロッカー・ベイビーズ」なんて読んじゃったものだから、いくらなんでも少々早すぎたらしく、その影響もあって小説はどうも読む気にならないし、サッカーなんかのエッセイもそれほど面白いとは思わないんだけどね。
じゃあ今回のこの「13歳のハローワーク」が何故?ということなんだけど、小学校に上がった頃まで話はさかのぼる。社会科とかで「消防士さんの仕事場」とか「パン工場で働く」とか、そういうのをやっていた頃、普段家にいないとき、父親は仕事をしていると母親は言うんだけど、じゃあその「仕事」ってどんなところでどんなことをしているんだろうと思った。で、父親に頼んで仕事場に連れて行ってもらった。さすがに日曜日だったと思うんだけど、ものすごく広い場所にたくさん机があって、少しだけ休日出勤している人がいて‥というような光景をぼんやり覚えている。「職業」というものを初めて意識したのが、その時だったと思う。
小学校高学年、中学、高校へと進んで行くにつれ、当然将来何になるんだろうと考える。まぁ、いろんなものになってみたかった。小学校のときは栗本薫とかのせいかなぁ。芸能プロダクションの敏腕マネージャーになってみたかったが、非常に体力が要るようなのであきらめた。高校に入ってからは音響関係に行きたかったが、まずはローダーみたいなのは体力がないので絶対無理、それからスタジオ・ミキサーみたいのは、物理の音響学ができなくて、全然ダメというようにあっさり挫折している(笑)。>
女なので、良い大学に行って良い会社に入って‥というようなプレッシャーはまったくなかったが、後で少し触れるが、「女だからと言ってきちんと自立できるだけの仕事をもたないとダメ」というような圧力は小さい頃からずっと母親から受けていた。けれど、どうしたらいいのかは本当はよくわかっていなかったように思う。
高校へ行って「大学は就職するための切符を手に入れるためのものではなく、学問をおさめに行くところだ」「同様に高校は大学の予備校ではない」という思想が蔓延しているようなところだったので、進学と就職は一致しなかった。が、よく考えてみると、ほとんどの人が就職するのに、「就職」=「仕事とは?」を教えられる機会がまったくないのはおかしいとも思っていた。
だから大学へ行くとみんなアルバイトをした。もちろん単なる生活手段やお小遣い稼ぎの人も多かったが、将来を考えてアルバイト先を探すような抜け目ない先輩なんかももちろんいた。
幸いにも私は大学4年のときに偶然、少し変わってはいるものの「自分でも出来るかも」「結構好きかも」「向いてるかも」と思えるようなことに出会った。実際苦労はしたものの、仕事内容そのものは向いていたのでラッキーだったなと思う。そんな中で社会人になってずいぶん経ってから教師に「転職」した先輩が同じ会社にいた。「ああ、こういう人が先生にいたらな」とつくづく思った。中学や高校の教師は最低3年他の職業に就いてからじゃないとなれない、とかあった方が良いと思う。
教師は世間のことを知らない。親は自分の業界しか知らない。OB、OGも同様。たまたまOGやOBがいればまだ良いが、まったく知らない世界などは就職活動中に面接官に実際の話を聞くしかない。そんな状況の中でどうやって自分に向いているものを探せというのか?という疑問がずっと残っていた。ずいぶんとそれから年月が経つが、こういうことを書こうと思う人がいた、それも結構有名な作家だった。「入社」ではなく「職」につくのが「就職」だということは、少しまともに社会人をすればわかることなのだが、当時はわからない学生が多かった。「中学1年生が職業について知りたいと思ったとき」「好きなことを職業にするためには」という本著の視点の置き方に大きく共感するところがあるだろうと思ったから読んだのだ。実際すばらしい出来だと私は思う。だからこそ、売れるのは何故だろうという気もするが、非常に当たり前に需要があったから、ということなのだろう。特に最後の方のSpecial Chapter以降は大人が読むべき内容だと思う。、あたNPOについては、以前から思うところあったのだが、それはまた別の機会に入門書を読んでからにしたいと思う。
今は「就職」という考え方が「不況」のせいではなく、過去と決定的に違うので、若い人たちは苦労は多いだろうと思うが、非常に真面目に仕事というものに取り組んでいると思う。本当に真面目な子が多いし、仕事に対して真摯なので驚かされる。が、よく考えてみると本来はあたり前のことなんだろうな、とも思う。
それにつけても「インターネット概観」が未だにJoiなのはどうなのよ。嫌いなわけではないけど、他に語る人いても良さそうなものなんだけどね(笑)。