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2001年2月 4日

モレルの発明

■著者:アドルフォ・ビオイ=カサーレス著,清水徹,牛島信明訳
■書誌事項:水声社 1990.9.20(1993.6.10二刷) ISBN4-89176-232-2
■紹介
絶海の孤島での亡命者と若い女の奇妙な恋物語のうちに、現実とイマージュ、現実と虚構とを巡る形而上的思考を封印し、『去年、マリエンバートで』の霊感源ともなった現代中南米文学の最高傑作のひとつに数えられる異色の中篇小説。
■感想
<完全にSFだった。SFは苦手だ。何故苦手かというと、単純に私の頭ではついていけないからだ。それは科学的裏付け云々の問題ではなく、物語を読み解くキーワードが隠されたところに多く書かれていること、論理的矛盾をあえて犯しているところに意図があること(SFでない小説にだってあるけど、SFの方が遙かにその傾向は強い)が理由だと思う。幻想文学もまた似たような理由で苦手だ。でも面白くないとは決して思わない。
この小説も、そういうふうに読むと「うーん難しい」なんだけど、単なる冒険SFとして読むことも可能だろうし、途中から一気に謎解きに入っていくので、そういう楽しみ方もある。
「写真を撮られると魂が抜ける」という古い、非常によく知られている、かつてあった迷信をダイナミックにすると、こういうことになる、という点での面白さがある。

ビオイ=カサレスはアルゼンチンの作家。かのボルヘスと仲良しだったことも有名。推理小説も書いてるし、結構エンターテイメント性のある作家だと思う。この本は絶版ではない。紀伊国屋あたりならすぐに買える。
SFは嫌いなわけじゃない。があまり読まないな。それにカルペンティエルの小説など、ちょっとSFが入ると、とたんに古本の値段が高くなるのはいただけないなぁ。