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2001年1月17日

私が愛したグリンゴ

■著者:カルロス・フエンテス著,安藤哲行訳
■書誌事項:集英社 1990.1.25 ISBN4-08-773109-X
■感想
フェンテスはメキシコの作家である。メキシコ文学はスペイン文学のなかではスペインに次ぐ人気があり、有名な作家も多く排出している。フェンテスは中でもエリートで、父親が外交官であるが故にワシントンで小学校教育を受けている。この後チリなんかも行ってるが、この時、ドノソと同級生だったというエピソードが残っている。
人気があるが故に今一つさけていたため、私がこれまで読んだことがあるのは絶版になってない「遠い家族」「アルテミオ・クルスの死」くらいなもんか。たまたま古本屋で単行本を見つけたので読んでみた。集英社文庫から出ているものは、まだ絶版ではない。
本題は「老いぼれグリンゴ」。グリンゴはアメリカ人を若干侮蔑ぎみに呼んだ言葉で、ラテンアメリカ文学には頻出する言葉で、女性だとグリンガとかグリンギータになる。
主人公は「悪魔の辞典」のアンブローズ・ビアスがモデルになっている。1913年に書く命中メキシコに赴いたところまでしか消息がないのだが、遺っている手紙にメキシコで死ねたら最高!みたいなこと書いていることから、その後をフィクションで作り出した小説である。
フェンテスはメキシコ人のアイデンティティを執拗に追った作品を数多く発表しているが、この作品では「鏡」に何度もこだわっている。革命軍が地主のお屋敷に飛び込んで来てすべてを破壊しつくすが、「鏡」だけは残して行く。彼らは自分たちの姿を見たことがなかったのだ。「鏡」を見たことがメキシコ人のアイデンティティを喚起させた、というわけ。それだけではないけど。
ちなみに、映画にもなっている。設定はロマンチックだからなー。どーせ白人の年寄りと白人の若い(つっても30だけど)女性とメキシコの若い将軍の三角関係とかになってんだろうな。原作は全然違うムードなんだがな。ちなみに、映画データは以下のようになっている。